いとなみ

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
1,199 / 1,561

君の美しい手が大好きです

しおりを挟む
「君の美しい手が大好きです」

「君の手って、ほんとに綺麗だよね。」

ふとした瞬間、君の手を見て、そう呟いてしまった。クラスの中で特に目立つ存在ではない僕が、こんなことを言うのは少し勇気が要ったけれど、その時、どうしても言いたかったんだ。君の手が、あまりにも美しかったから。

君は驚いたように目を丸くして、少し照れたように笑った。「そんなこと言われたの初めて。ありがとう」と言いながら、手をぎこちなく隠すようにした。

その時、僕は気づいたんだ。君は自分の手の美しさに全然気づいていないんだ、と。

僕が君の手に惹かれるようになったのは、ほんの些細なことがきっかけだった。ある日、君がノートに書き込んでいる様子を何気なく見ていた。指先の動きが、信じられないほど繊細で優雅だった。その瞬間、僕は不思議な感覚に包まれた。

君は、いつも自然体で、特に派手なメイクやアクセサリーで自分を飾ることはしなかった。だけど、そのシンプルさが、君の本当の美しさを際立たせていた。君の指が紙に触れ、文字を描くその姿が、何とも言えないほど魅力的だった。

君の手は、まるでアートのようだった。

僕はずっと、その美しい手が好きだったけれど、どうやって伝えたらいいのか分からなかった。ただ、君と過ごす毎日の中で、その手がどれだけ大切な存在なのか、僕の心の中で少しずつ育っていった。

君の誕生日が近づくにつれ、僕は何をプレゼントしようか悩んだ。毎年クラスメイトが君に渡すギフトは、可愛い小物やアクセサリーだったけれど、僕は違うものを贈りたかった。

そんなある日、ふらりと立ち寄ったデパートで「ロクシタン」のハンドクリームセットを見つけた。フランス発のこのブランドは、優雅で洗練されたデザインと、肌に優しい使い心地が特徴だという。鮮やかなパッケージに包まれたハンドクリームは、君の手をさらに美しく保つのにぴったりだと思った。

「これだ…」僕は直感的にそう感じた。

君の手がもっと輝くように、そして何より、君自身がその手の美しさに気づいてくれるように、このハンドクリームを贈りたいと思ったんだ。

誕生日当日、僕はクラスの誰もいないタイミングを見計らって、君にプレゼントを手渡した。

「これ、君に似合うと思って選んだんだ。使ってみてくれる?」

僕が差し出した小さな箱に、君は驚いた顔をしていたけれど、すぐに笑顔を浮かべた。「ありがとう!どんなものだろう?」と、君は箱をそっと開けた。

中から現れたのは、ロクシタンのハンドクリームセット。香り豊かで、手触りも滑らかなクリームが、パステルカラーの美しいチューブに詰められていた。

君はそのクリームを手に取り、少し不安そうに僕を見た。

「これ…私の手に合うかな?」

僕は少し微笑んで、「絶対に合うよ。君の手が、もっと素敵になるはずだから」と答えた。

その後、君が実際にそのハンドクリームを使うようになってから、君の手はさらに美しくなったように見えた。君は授業の合間にそっとクリームを手に伸ばし、その香りを楽しむように手をかざす。その仕草が、僕にはとても愛おしかった。

君はまだ、自分の手の美しさを完全には理解していないのかもしれない。でも、それでいいと思った。僕が君の手を見続けることで、その美しさを感じられるのだから。

そして、いつの日か、君自身もその手の美しさに気づく時が来るだろう。その時、僕はこの小さなプレゼントが少しでも役に立てたのなら、それだけで十分だと思う。

僕が君の手に贈ったハンドクリーム。それはただの化粧品ではなく、君の手に対する僕の気持ちを込めた贈り物だ。君の手がもっと輝くように、そして何より、君がその美しさを自覚してほしいという願いが詰まっている。

君の手は、これからもずっと僕の心の中で輝き続けるだろう。そして、その手がどんな未来を描いていくのか、僕は楽しみにしている。君がその手で描く未来を、そばで見守りたい。

君の美しい手が大好きです。それは、僕が君に伝えたかった言葉であり、君に贈ったハンドクリームに込めた想いだ。

これからも、その手でたくさんの幸せを掴んでいってほしい。僕は、ずっと君のそばで、その手の美しさを見つめ続けるだろう。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...