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春秋花壇

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煙草の吸いがら

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煙草の吸いがら
新宿の小さなアパート。陽の光が差し込む窓辺に、古びたソファとテーブルが置かれた部屋には、たった一人の女性がいた。名は美紀、かつては若さと魅力で周囲を魅了していたが、今はひとり寂しく、心に傷を抱えている。

テーブルの上には一箱の煙草が置かれ、吸いがらが溜まっている。美紀はそこに座りながら、吸いがらを指でつまみ取った。その煙草の吸いがらを見つめながら、彼女の思い出がよみがえってきた。

数ヶ月前、美紀は恋人である和也と別れたばかりだった。和也は彼女にとって、初めての本気の恋人であり、彼との関係はそれまでの全てを超えるものだった。彼の存在は美紀にとって、全てだった。しかし、和也の浮気が発覚し、彼女の世界は一瞬にして崩れ去った。

「どうしてこんなことに…」美紀は自分に問いかけながら、煙草の吸いがらをじっと見つめる。彼がいつも吸っていた煙草、その吸いがらから彼の嘘が透けて見えるような気がしてならなかった。彼が言っていた愛の言葉は、結局は空虚なものでしかなかったのだろうか。

その夜、美紀は和也と過ごした最後の夜を思い出していた。和也は何度も口にした言葉で彼女を安心させたが、結局は彼女の心を裏切る結果になった。その夜、和也がどこかに出かけるとき、彼が最後に捨てた煙草の吸いがらが、彼の不誠実さを物語っていたように感じられた。彼はその煙草で隠された嘘を、まるで証拠のように残していたのだ。

その後、美紀は和也との生活を断ち切り、一人で新しい生活を始めた。しかし、彼との過去が彼女をいつまでも苦しめた。新しい出会いもあったが、和也との傷が深すぎて、彼女は心を開くことができなかった。

「誰かいい女ができたのね…」美紀は煙草の吸いがらに向かって呟いた。和也が新しい恋人を見つけたという噂が耳に入るたびに、彼女の心はさらに傷ついていた。自分が不幸であることを、彼の幸福と対比させてしまう自分が情けなく、また悲しかった。

美紀は立ち上がり、吸いがらをゴミ箱に捨てると、そのまま外に出た。冷たい夜風が彼女の頬に触れ、彼女の思考をクリアにしていくようだった。彼女は以前のように外に出て、人と会うことができなかったが、今はその束縛から解放される気がした。

「新しい始まりが必要だわ…」美紀は心の中でつぶやきながら、街を歩いた。夜の新宿は賑やかで、様々な人々が行き交っていた。美紀はその中で、自分もまた新たな一歩を踏み出さなければならないと感じた。

彼女は、これまでの傷を乗り越え、自分を取り戻すために前に進む決意を固めた。和也との思い出は消えることはないだろうが、それが彼女を引きずり込む足かせになってはならない。彼の嘘や裏切りを乗り越え、自分自身の幸せを見つけることが大切だと気づいた。

美紀は歩きながら、夜の新宿の街の光を見つめた。これからどんな未来が待っているのかは分からないが、彼女は自分を信じ、前を向いて進むことに決めた。彼女が見上げた空には、星々が輝いていた。新しい未来に向けて、一歩を踏み出すために。









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