いとなみ

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
932 / 1,137

ログインした恋

しおりを挟む
ログインした恋

オンラインゲームの世界は、現実とは違うもう一つの現実だ。そこには冒険があり、戦いがあり、そして仲間がいる。彩香もまた、その世界に心を奪われた一人だった。彼女は毎晩、パソコンの画面の前に座り、ファンタジーの世界に飛び込んでいた。現実では味わえない自由と、そこにいる人々とのつながりが、何よりも彼女の心を満たしていた。

ゲームの中で彩香が一番大切にしていたのは、レオンという名のプレイヤーだった。レオンはゲーム内のトッププレイヤーであり、常に冷静で頼れる存在だった。彼と一緒にダンジョンに挑んだり、イベントに参加したりするのが彩香の楽しみであり、いつしか彼女の心はレオンに傾いていた。

ある日のことだった。レオンから突然、直接会おうというメッセージが届いた。彩香は戸惑った。ゲームの中で何度も話してきたが、現実の彼はどんな人か全く知らない。それでも彼女は胸の奥で小さな期待を抱いた。彼に会えば、もっと特別な関係になれるかもしれない。そう思うと断る理由などなかった。

約束の場所は、都内のカフェだった。彩香はいつも通りのパーカーにジーンズというカジュアルな格好で向かったが、待ち合わせの時間が近づくにつれて緊張が高まっていった。カフェに着くと、そこには一人の青年が座っていた。スーツ姿で端正な顔立ちの彼が、レオンだった。

「彩香さん?」

声をかけられた瞬間、彩香の心臓は一気に高鳴った。彼はまさにレオンそのものだった。落ち着いた口調、知的な雰囲気、それでいてどこか親しみやすさを感じさせる笑顔。ゲームの中の彼とは少しも変わらなかった。

カフェでの会話はスムーズに進んだ。ゲームの話、現実の仕事の話、そしてお互いの夢や未来について。彩香は、まるで長年の友人と話しているような感覚に陥った。時間が経つのも忘れ、気がつけば何時間も経っていた。

別れ際、レオンは静かに言った。

「彩香、現実でも君ともっと一緒にいたい。オンラインゲームだけじゃなくて、リアルでも僕のそばにいてほしいんだ。」

その言葉に、彩香の心は震えた。ずっとゲームの中だけでいいと思っていた。そこが二人の世界で、特別な場所だと思っていたから。だが、レオンの真剣な眼差しに、彩香は自然と頷いていた。

それからの日々は、ゲームの中でだけでなく、現実でもレオンと一緒に過ごす時間が増えていった。二人はよく一緒にランチに出かけたり、仕事終わりにカフェで会ったりしていた。彩香にとって、それは夢のような日々だった。しかし、その一方で少しずつ不安も募っていった。現実のレオンは忙しいビジネスマンで、ゲーム内の時間が減り始めたのだ。

ある晩、彩香は久しぶりにゲームにログインしていた。レオンもいたが、どこか距離を感じた。会話も以前のように盛り上がらず、何かが変わってしまったようだった。そんな時、彼からのメッセージが届いた。

「彩香、ごめん。僕はもう、このゲームを続けられないんだ。」

一瞬、時間が止まったように感じた。彩香はすぐにメッセージを返した。

「どういうこと?現実の仕事が忙しいのはわかるけど、ゲームは続けられるよね?」

レオンの返事は簡潔だった。

「君と一緒にいると、ゲームの中での自分が嘘みたいに感じるんだ。現実の僕はそんなに強くない。だから、もうゲームの中のレオンには戻れないんだ。」

彩香はその言葉に涙がこぼれた。彼が言いたいことはわかっていた。現実のレオンは完璧ではなく、ゲームの中のように強くも頼りになる存在でもなかった。それでも彩香は、彼が好きだった。現実も、ゲームの中も、すべてのレオンが愛しかった。

最後のメッセージを送る時、彩香は決意した。

「大丈夫だよ、レオン。現実でも、ゲームの中でも、あなたはあなた。どんなレオンでも、私は愛しているから。」

それから、二人はゲームの中ではなく現実の中での時間を大切にしていくことにした。彩香にとって、それは新たな冒険の始まりだった。ゲームの中で育んだ愛は、現実の世界でも生き続けたのだ。

彩香はパソコンの画面を閉じ、スマホに映るレオンの連絡先を眺めながら微笑んだ。どんな世界でも、二人が一緒ならそれでいい。それが、彼女の出した答えだった。

ゲームの中で愛する人と出会い、現実でもその愛を紡いでいく彩香とレオン。彼らの物語は、どちらの世界でも変わらずに続いていく。仮想と現実の狭間で、二人の愛は確かに息づいていた。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

生意気な女の子久しぶりのお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
久しくお仕置きを受けていなかった女の子彩花はすっかり調子に乗っていた。そんな彩花はある事から久しぶりに厳しいお仕置きを受けてしまう。

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

処理中です...