いとなみ

友情・努力・勝利

友情・努力・勝利

高校二年生の夏、杏奈はある決意を固めた。幼馴染の蓮に恋心を抱いていることに気づいたのだ。蓮はサッカー部のエースで、学校中で人気があった。いつも明るくて、まっすぐな性格の彼は、男女問わず誰からも愛される存在だった。

杏奈と蓮は幼い頃からずっと一緒に育ってきた。家も隣同士で、兄弟のように育った二人にとって、距離は近くて遠いものだった。杏奈にとって蓮は大切な友人だったが、ある日突然その感情が変わったのだ。サッカーの試合でゴールを決めた蓮の姿に胸が高鳴り、自分が彼を「男」として意識していることをはっきりと感じた。

しかし、杏奈は告白する勇気がなかった。幼馴染としての関係を壊すのが怖かったし、蓮の周りにはいつも明るくて可愛い女子たちがいて、彼が誰かを好きになってもおかしくない状況だった。自分には勝ち目がないと感じた杏奈は、諦めかけていた。

そんなある日、杏奈は蓮と同じクラスの友人、美咲に話しかけられた。美咲は蓮が好きなことを公言していて、いつもサッカー部の練習を見に行っている。「杏奈、どうせ幼馴染なんだから、蓮に私のことを聞いてくれない？」と、美咲は楽しそうに頼んできた。

心の中で複雑な気持ちを抱えながらも、杏奈は笑顔で「うん、いいよ」と答えた。友情を大切にしたい気持ちと、自分の本音を抑え込む思いが混ざり合っていた。

その夜、杏奈は眠れなかった。美咲の頼みを断ればよかったのか、それともこれでよかったのか。彼女は枕に顔を埋めてため息をついた。「やっぱり、何もしないのは後悔するよね…」

次の日から、杏奈は毎朝早く起きてジョギングを始めた。彼女が決意したのは、自分自身を変えることだった。蓮の隣に立つには、自分ももっと魅力的な人間にならなければならないと感じたのだ。体力をつけるためのジョギング、そして毎晩遅くまで勉強し、学校の成績も上げるように努力した。

ある日、サッカー部の試合の日がやってきた。美咲は杏奈に「蓮が好きだ」と伝えるように再度頼んできたが、杏奈は「ごめん、私はできない」と断った。自分の気持ちを偽ることはできなかったし、友達に嘘をつくのも辛かった。

試合当日、スタジアムには多くの生徒たちが応援に来ていた。杏奈もその中の一人だった。蓮のプレーを見ながら、彼の一生懸命な姿に心を打たれた。「やっぱり、好きだ」と改めて思った。試合は緊迫した展開のまま進み、残り時間が少なくなったところで、蓮が決定的なシュートを放った。

ゴール！　スタジアムが歓声に包まれた。杏奈も思わず立ち上がって拍手を送った。蓮のチームは勝利し、彼はチームメイトと喜びを分かち合っていた。

試合後、杏奈は勇気を出して蓮に近づいた。「おめでとう、蓮。すごかったね！」

蓮は汗だくの顔で振り返り、照れくさそうに笑った。「ありがとう、杏奈。応援、ちゃんと聞こえてたよ」

その瞬間、杏奈の心は決まった。ここで引き下がっては、自分の気持ちに嘘をつくことになる。

「蓮、少し話があるんだけど、いいかな？」と杏奈は切り出した。

「うん、もちろん」と蓮は応じた。二人は少し離れたベンチに座った。

「実は…私、蓮のことがずっと好きだったんだ」と杏奈は言った。その言葉を口にするのには、かなりの勇気が必要だった。

蓮は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに優しい笑みを浮かべた。「杏奈、実は俺もずっと君のことが気になってた。でも、幼馴染としての関係を壊したくなかったから、なかなか言えなかったんだ」

杏奈の心は一気に晴れやかになった。彼女の努力が実を結んだ瞬間だった。自分を信じて変わろうとした結果、彼との距離を縮めることができたのだ。

それからの二人は、さらにお互いの存在を大切にしながら日々を過ごしていった。友情を大事にし、努力を重ね、そして勝利を手にする。そんな「友情・努力・勝利」の物語は、これからも続いていく。