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春秋花壇

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消えゆく花火

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消えゆく花火

夏の終わり、空には満天の星が瞬き、遠くからかすかに花火の音が聞こえていた。由美は、高校生活最後の夏を、親友たちと過ごしていた。彼女の心の中には、ある大きな決断が静かに渦巻いていた。

「今日が終わったら、すべてが変わってしまうんだろうな…」由美は自分に言い聞かせるように、心の中でつぶやいた。薄暗くなり始めた海岸線を歩きながら、彼女は夏祭りのために着た浴衣の帯をそっと直した。

その先で彼女を待っていたのは、幼馴染の亮だった。彼は子供の頃からいつもそばにいて、どんな時でも彼女を支えてくれた。笑顔を絶やさない亮を見つけた瞬間、由美の胸は高鳴った。

「亮、待たせてごめんね。」彼女は少し緊張しながら言った。

「いや、大丈夫さ。」亮はにこりと笑い、手に持っていた線香花火を差し出した。「これ、最後の花火、由美と一緒にやりたいと思って。」

二人は無言で線香花火に火をつけ、静かに眺めた。花火はゆっくりと燃え尽き、やがてその光は小さな火の玉となり、最後には消えてしまった。

由美は、消えゆく花火の残り火を見つめながら、心の中の不安と期待が入り交じるのを感じた。彼女は決心して、亮に向き直った。

「亮、わたし…、今日が最後の夏の思い出にしたいの。」彼女の声は震えていたが、その目には真剣な光が宿っていた。

「え?何を言ってるんだよ、由美。」亮は驚いて彼女を見つめた。

「わたしのこと、ずっと好きでいてくれたでしょ?」由美は目を逸らさずに続けた。「わたし、今日までずっと考えてたの。…亮に、わたしの一番大切なものをあげたいって。」

亮は言葉を失い、由美の目を見つめ返した。その瞳には涙が浮かんでいたが、彼女の決意は揺るぎなかった。

「わたしの処女をもらってください、亮。」由美は震える声で告げた。

その言葉が彼の耳に届いた瞬間、時間が止まったかのように感じられた。亮は驚きと混乱を隠せなかったが、すぐに由美の手をそっと握り締めた。

「由美、そんなこと言うなよ。」亮の声は優しく、彼女を包み込むようだった。「お前の気持ちは嬉しいけど、そんなに急ぐことじゃない。俺は、お前が本当に望んでることを一緒に考えたいんだ。」

由美はその言葉を聞いて、涙があふれ出した。亮の言葉が、彼女の心を温かく包んでくれるのを感じた。彼女は、彼がただ欲望で動いているのではなく、彼女を本当に大切に思ってくれていることを理解した。

「亮…」彼女は彼の胸に顔を埋め、泣きながら言った。「ありがとう。わたし、どうすればいいのかわからなかったんだ。でも、亮がいてくれて本当に良かった。」

亮は彼女をしっかりと抱きしめ、そっと頭を撫でた。「俺はいつでもお前のそばにいるよ、由美。だから、無理しなくていいんだ。」

夏の夜風が二人の間を通り過ぎ、花火の音が遠くで鳴り響いた。その瞬間、二人は何も言わずにただ互いの存在を感じていた。

「これでいいんだ。」由美は心の中でそう思い、亮の胸の中で安らぎを感じた。

花火が消えた後も、由美と亮の心には新たな灯火がともっていた。それは、二人が共に歩む未来のための、強く揺るぎない絆だった。

夏の終わりは、新たな始まりを告げる瞬間でもあった。由美と亮は、お互いを尊重し合いながら、これからの未来を共に築いていく決意を胸に抱いていた。







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