いとなみ

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
1,111 / 1,529

恋のフラグ

しおりを挟む
恋のフラグ

涼介(りょうすけ)は、大学のキャンパスでのんびりと過ごしていた。友達とのランチを楽しみ、サークルの活動に参加し、時折図書館で勉強する。そんな日常の中で、一番の楽しみは、友達の美咲(みさき)と会うことだった。彼女とは、大学に入ってからの親友で、何でも話せる関係だった。

ある日の午後、キャンパスのカフェテリアで美咲とランチをしていると、彼女が突然こんなことを言った。「ねえ、涼介。私、告白されちゃったんだ。」

涼介は一瞬、言葉を失った。美咲はいつも明るく、誰からも好かれる存在だったが、彼女が告白されるという事実に、涼介は少し驚いた。「そうなんだ。で、どうするの?」涼介は平静を装って聞いたが、内心では胸がざわついていた。

「実は、その人とお付き合いしようかなって考えてるんだ。まだ決めてないけど。」美咲は少し不安そうな顔をしながら話す。

涼介は言葉に詰まりながらも、心の中では冷静に状況を受け止めようとしていた。「それが君にとっていいことなら、僕は応援するよ。」

しかし、その言葉の裏には、涼介自身の気持ちが隠れていた。実は、涼介は美咲に対して特別な感情を抱いていたのだ。友達以上の感情を持ちながらも、それを言葉にする勇気がなかった。美咲との関係が変わることを恐れていたのだ。

日が経つにつれて、美咲とその告白相手との関係が進展する一方で、涼介は彼女との距離を置くことに決めた。友達としての関係を維持しながらも、自分の感情を隠すことが、彼にとって最善の選択だと考えたからだ。

それでも、涼介は美咲と会うたびに、彼女の笑顔が自分の心に痛みを与えることに気づいた。美咲が他の人と楽しそうにしているのを見ると、涼介の心は傷ついた。友達として振る舞うことが難しくなり、涼介は次第に美咲との時間を避けるようになった。

ある晩、涼介はひとりでキャンパス内のベンチに座り、星空を見上げながら考え込んでいた。美咲に対する感情を抑え続けることが、自分自身を苦しめていることに気づいた。彼女との関係が変わることを恐れていたが、その結果として、彼自身が孤独を感じるようになっていた。

その時、突然美咲がそのベンチに近づいてきた。「涼介、何してるの?」彼女の声にはいつもの優しさがあった。

涼介は苦しそうに微笑んだ。「ただ、考え事をしていただけだよ。」

美咲はベンチに座り、涼介の隣に寄り添った。「最近、君とあまり会えてない気がするんだ。どうしたの?」

涼介は一瞬ためらったが、やがて心の内を打ち明ける決心をした。「実は、君に対する感情を整理できなくて、君と会うのが辛くなってしまったんだ。君のことを友達として応援したいのに、その気持ちがどうしても消えなくて。」

美咲は驚きとともに、涼介の話を静かに聞いていた。彼女の目には、心の奥底での痛みと理解が浮かんでいた。「涼介、私も君のことを大切に思ってる。だから、君の気持ちに対してどうしたらいいのか、私も迷っていたの。」

涼介は美咲の言葉に胸を打たれた。彼女の気持ちを知りながらも、自分の感情を伝えたことで、少しだけ心が軽くなった。美咲が彼の気持ちを受け入れ、理解してくれることに、涼介は安堵を感じた。

美咲は涼介に微笑みかけ、手を優しく握った。「これからも、私たちの関係を大切にしよう。恋愛がどうであれ、君との友情は変わらないよ。」

涼介はその言葉に励まされ、彼女との新たな関係を築く覚悟を決めた。恋のフラグは立ってしまったが、二人の間には依然として友情が存在し、それを大切にしながら進んでいくことを誓った。

星空の下、涼介と美咲は、過去の感情と向き合いながら、新しい一歩を踏み出す決意をした。その夜、彼らの心には、これからの未来に対する希望と信頼が灯り続けた。








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

妻と愛人と家族

春秋花壇
現代文学
4 愛は辛抱強く,親切です。愛は嫉妬しません。愛は自慢せず,思い上がらず, 5 下品な振る舞いをせず,自分のことばかり考えず,いら立ちません。愛は傷つけられても根に持ちません。 6 愛は不正を喜ばないで,真実を喜びます。 7 愛は全てのことに耐え,全てのことを信じ,全てのことを希望し,全てのことを忍耐します。 8 愛は決して絶えません。 コリント第一13章4~8節

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

春秋花壇
現代文学
注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

陽だまりの家

春秋花壇
現代文学
幸せな母子家庭、女ばかりの日常

処理中です...