いとなみ

変化の先に

変化の先に

彼とは大学のキャンパスで初めて出会った。私たちは同じ講義を受けていて、授業が終わった後、偶然にも図書館で隣に座ったのがきっかけだった。彼は静かで控えめな人だったが、その瞳にはどこか深い思索が垣間見えた。最初はただの友人関係だったが、次第に私たちは互いの存在が特別なものになっていった。

彼はよくこう言っていた。「不変なものは存在しない。どんなものでもいつかは変化する。それを受け入れなきゃ前には進めない。」当時の私は、その言葉の意味が完全には理解できなかった。私は変化が怖かった。安定した日々が続くことに安心感を覚えていたからだ。

大学を卒業すると、私たちはそれぞれの道を歩み始めた。彼は遠くの町で働き始め、私は地元でのキャリアを選んだ。距離が離れるにつれて、私たちの関係も次第に薄れていった。電話やメッセージのやりとりは次第に少なくなり、やがて互いに忙しさにかまけて、ほとんど連絡を取らなくなっていった。

私が新しい職場での生活に慣れてきた頃、彼から突然連絡があった。「会いたい」とだけ書かれたメッセージだった。私は驚きつつも、彼との再会を喜んで受け入れた。会うことにしたのは、あの時彼の言葉が頭の片隅にずっと残っていたからだった。

久しぶりに会った彼は、以前と変わらないように見えたが、その瞳には何か決意が込められているようだった。彼は笑顔を見せ、昔と同じように優しく私を見つめていた。「元気そうだね」と彼は言い、私も「あなたも」と答えた。

私たちは昔のように気軽に話し始めたが、どこかぎこちなさが残っていた。お互いに何か言いたいことがあるのに、言い出せないでいるような雰囲気が漂っていた。やがて彼は口を開き、私に真剣な眼差しを向けた。

「君に伝えたいことがあるんだ」と彼は言った。「ずっと前に話したことを覚えてる？不変なものは存在しないって話。あれは、自分自身にも言い聞かせていたんだ。自分が変わることに対する恐れ、未来がどうなるか分からないことへの不安を。だけど、今はそれを受け入れることができる。変わることを恐れずに前に進むしかないんだって。」

私は彼の言葉を聞いて、かつての私が持っていた不安や恐れを思い出した。彼は続けた。「君と一緒にいることで、僕は変わることができた。君となら、一緒に生きていけると思ったんだ。どんな変化があっても、君となら乗り越えられるって。」

彼の言葉は私の心に深く響いた。彼が私にとって特別な存在であり続けた理由が、ようやく明確になったような気がした。私たちはお互いに成長し、変わりながらも、再び出会えたことに感謝しなければならないと感じた。

「私も、同じ気持ちだよ」と私は答えた。「あなたと一緒なら、どんな未来が来ても大丈夫だと思う。変わることが怖くなくなったのは、あなたのおかげだよ。」

彼は安堵の笑みを浮かべ、私の手を握った。私たちはその日、再び手を取り合って、新しい一歩を踏み出すことを決めた。

変化は避けられないものだが、それを恐れずに受け入れることで、新たな可能性が広がる。彼と私はそのことを学び、これからも共に歩んでいくことを誓った。未来がどうなるか分からないが、私たちには変わらない絆がある。それがあれば、どんな困難にも立ち向かえると信じている。

そして私たちは、静かに手を繋いで歩き出した。新しい季節の風が二人を包み込み、これからの未来を祝福してくれているかのように感じられた。どんな変化が訪れようとも、私たちは一緒に乗り越えていく。それが、私たちの選んだ道だった。