いとなみ

心の中を知る旅

「心の中を知る旅」

奈美子は28歳、数か月前から教会で知り合った雄大と交際を始めていた。雄大は礼儀正しく、誠実で、何よりも信仰心が厚い人だった。彼女たちはお互いの信仰を大切にし、毎週の集会やボランティア活動を共にしていた。付き合い始めた当初、奈美子は雄大との時間を楽しんでいたが、次第に彼との将来について深く考えるようになっていた。

ある日の夕方、奈美子は親友の麻衣と一緒にカフェでお茶をしていた。彼女は雄大との関係について相談したいと思っていたが、どこから話し始めればいいのか迷っていた。

「麻衣、今付き合っている雄大のことなんだけど…どう思う？」奈美子はおずおずと切り出した。

麻衣は微笑みながら答えた。「奈美子が幸せそうに見えるから、いい人なんじゃないかと思ってるよ。でも、何か心配なことがあるの？」

奈美子はカップを両手で包み込みながら、少し考えた。「雄大は素晴らしい人だし、信仰もしっかりしてる。でも、結婚を考えると、自分が本当に彼と一緒にいられるかどうか、自信が持てなくて…。彼の内面をもっとよく知りたいと思うんだけど、どうすればいいのか分からなくて。」

麻衣は奈美子の手を取り、真剣な表情で答えた。「奈美子、結婚は人生の大きな決断だから、慎重になるのは当然だよ。大切なのは、彼の信仰心や性格を深く知ることだと思う。例えば、彼がどれだけエホバと強い絆を持っているか、どんな考え方をしているのかを知ることで、奈美子が感じている不安も少しずつ解消されるんじゃないかな。」

奈美子はその言葉にうなずいた。「そうだね。表面的な部分だけじゃなくて、彼の心の中をもっと知る必要があるよね。」

その後、奈美子は雄大と深い話をする機会を増やすことにした。彼女たちは一緒に聖書を読み、互いの信仰について語り合った。また、雄大がどのように日常生活で信仰を実践しているのか、どのような価値観を持っているのかを注意深く観察するように努めた。

ある日、奈美子は勇気を出して雄大に問いかけた。「雄大さん、私たちが将来結婚するとしたら、あなたはどんな夫でありたいと思いますか？」

雄大は少し驚いた表情を見せたが、すぐに真剣な顔つきになった。「奈美子、僕はエホバの教えを中心に据えた家庭を築きたいと思っている。家族を愛し、敬意を持って接し、信仰を大切にする夫になりたい。奈美子と一緒に、エホバに忠実であることを最優先に考える生活を送りたいと願っているよ。」

その言葉を聞いて、奈美子は少し安心した。しかし、同時に彼女はさらに考えを深めた。「でも、雄大さん…もし私たちに違いがあったとしたら、その違いにどう向き合いますか？例えば、私が何かに失敗した時、あなたはどう接してくれると思いますか？」

雄大は一瞬黙り込んだが、やがて静かに答えた。「奈美子、僕たちにはそれぞれ欠点がある。それを理解して、お互いに支え合うことが大切だと思う。僕が何か間違ったことをしたら、奈美子には優しく指摘してほしいし、逆に奈美子が悩んでいる時には僕がそばにいて支えたい。結婚生活は完璧ではないかもしれないけど、互いに補い合って成長していくことができると信じてる。」

奈美子はその言葉に深い感動を覚えた。彼の誠実な姿勢に、彼女はこれまで感じていた不安が少しずつ消えていくのを感じた。

それからしばらくして、奈美子と雄大はさらに多くの時間を共に過ごし、互いの考え方や信仰について深く話し合うようになった。彼らは結婚についても真剣に考えるようになり、互いにとって本当に良いパートナーであるかどうかを慎重に見極めた。

最終的に、奈美子と雄大は結婚を決意した。彼らは互いに深い理解と尊敬を持ち、エホバを中心にした家庭を築くことを誓った。

結婚式の日、奈美子は雄大の隣で誓いの言葉を述べながら、自分たちが歩んできた道のりを思い返していた。彼らが出会い、互いを知り、心を開いて話し合った日々が、今ここに繋がっていることを実感した。

「奈美子、僕たちはこれからもエホバと共に歩んでいこう。どんな困難があっても、僕たちが互いに愛と尊敬を持って接する限り、きっと乗り越えられるはずだよ。」

雄大の言葉に、奈美子は静かに微笑んだ。そして、彼女は自分が正しい選択をしたことを確信した。彼女はこの日を迎えるために、時間をかけて雄大の心を知り、共に歩む道を選んだのだった。