いとなみ

春秋花壇

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ボロアパートのシンデレラ

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ボロアパートのシンデレラ

薄暗いボロアパートの階段を上り、自分の部屋へ。鍵を開け、部屋に入ると、そこには見慣れた光景が広がっていた。少し傾いた本棚、シワシワになった布団、そして、窓から差し込む薄暗い光。

そんな私の前に、見慣れない人物が立っていた。

「あの…すみませーん」

上品な声に振り向くと、そこには見覚えのない美少女が立っていた。

「え、どなたですか?」

「ちょっと、お宅にお邪魔してもよろしいでしょうか?」

彼女はそう言うと、戸惑う私を尻目に、部屋の中を見回した。

「わぁ、素敵なお部屋ですね」

そう言いながら、彼女は私の部屋を褒めた。しかし、その言葉はどこか皮肉に聞こえた。

「ご、ご自由に…」

私は戸惑いながらも、そう答えた。

美少女は、私の部屋の隅々まで興味津々そうに見て回る。まるで、動物園の動物を見るような目で。

「あなたは、一人暮らしなの?」

「はい、そうです」

「すごいね。こんなところに一人暮らしなんて」

彼女は、そう言うと、ため息をついた。

「ところで、あなたのお名前は?」

「田中です」

「ふーん、田中くんね。私は、鈴木美咲です」

鈴木美咲。その名前を聞いたとき、私は度肝を抜かれた。

鈴木美咲といえば、この街の名門・鈴木家の令嬢。容姿端麗で成績優秀、まさに完璧な女の子として有名だった。

「あの、鈴木さんですよね?まさか、こんなところで会うなんて…」

「え?田中くん、私のこと知ってるの?」

美咲は、驚いたように目を丸くした。

「もちろんです。学校一美人で、名家のご令嬢だって噂ですよ」

「ふふ、そんなことないですよ」

美咲は、そう言いながらも、どこか得意げな様子だった。

「ところで、田中くんは、どうしてこんなところに住んでいるの?」

美咲の質問に、私は少しだけためらった。

「実家が遠くて、一人暮らしの方が便利だから…」

「そうなんだ」

美咲は、私の答えを聞いて、何かを悟ったような表情を見せた。

「実は、私、ちょっと困っていることがあって…」

美咲は、そう言うと、私に近寄ってきた。

「何ですか?」

「実は、私、家出をしてきたの。両親に反対されている人と結婚したいんだけど…」

美咲は、そう言うと、顔を赤らめた。

「え、家出ですか?」

私は、美咲の言葉に驚いた。

「うん。だから、しばらくの間、ここに匿ってくれない?」

美咲は、そう言うと、私の手を握りしめた。

私は、戸惑いつつも、美咲の頼みを聞き入れることにした。

それから、美咲は私の部屋に居候することになった。

最初は、美咲との共同生活に戸惑っていたが、だんだんと慣れてきた。

美咲は、思った以上に気さくで面白い女の子だった。

一緒にご飯を食べたり、テレビを見たり、時には本を読んだり。

そんな日々を送るうちに、私はいつしか、美咲に惹かれていった。

ある夜、私は勇気を振り絞って、美咲に告白した。

「美咲、僕は、君のことが好きです」

美咲は、私の告白に驚き、しばらくの間、何も言えなかった。

そして、ゆっくりと目を閉じると、私にキスをしてきた。

「私も、田中くんのことが好きです」

美咲の言葉に、私は幸せを感じた。

ボロアパートでの、二人の共同生活は、予想外の形で始まった。

しかし、それは同時に、二人の新しい物語の始まりでもあった。







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