いとなみ

胸元に「お中元」の熨斗紙を張って彼にお届け

胸元に「お中元」の熨斗紙を張って彼にお届け

東京の夏は、空が広く青くて、気温が高くても風が涼やかだった。七月の初め、私は駅前の広場で彼を待っていた。今日はお中元の日で、普段はお世話になっている人たちに感謝の気持ちを込めて贈り物をするのが習慣だ。けれど、私が今日贈りたいのは、特別な「お中元」。

彼の名前は俊樹。大学の同級生で、私にとっては初恋の相手。私たちは付き合って半年になるが、まだ彼に私の本当の気持ちを伝えていなかった。だからこそ、この特別な日に、少しでもその気持ちを表現できたらと思った。

駅の改札を通る彼の姿が見えると、私は一瞬息を呑んだ。俊樹はいつものように、さりげない格好で現れた。白いシャツにジーンズ、足元にはスニーカー。少し乱れた髪が夏の陽射しを受けて、より一層輝いて見える。

私は彼が近づくのを待ちながら、胸元に熨斗紙を張った箱を手にしていた。この熨斗紙には、縁起の良い「お中元」と書かれている。箱の中には、ささやかながらも心を込めたプレゼントが入っている。

「俊樹、お待たせ！」と、私が明るく声をかけると、彼は微笑みながら近づいてきた。

「こんにちは、花音。何かいいことあったの？」と彼が訊ねる。

「ええ、実はちょっとしたサプライズを用意したの」と私は言いながら、胸元の熨斗紙を見せた。「これ、あなたに贈りたいんです。」

彼は驚いた顔をしながらも、興味津々で箱を受け取った。熨斗紙を見た瞬間、少し戸惑ったようだが、その後すぐに優しい笑顔を浮かべた。

「ありがとう、花音。これは本当にありがたい」と彼が言いながら箱を開けると、中からは手作りのクッキーが出てきた。

「実は、これ、私が心を込めて作ったクッキーなの。お中元として贈るのは、ちょっと変かもしれないけれど、どうしてもあなたに食べてほしくて」と私は説明した。

俊樹はクッキーを一つ取り、慎重に味わってみた。「美味しい。これ、すごくいい味だね」と彼が感動しながら言った。

「ありがとう、俊樹。実は、私がこのクッキーを作った理由は、お中元の日に何か特別な意味を込めたかったからなの。あなたに対する感謝の気持ちと、もっと深い気持ちを伝えたかったの」と私は心からの言葉を告げた。

彼は静かに私を見つめ、その後、優しく私の手を取った。「花音、ありがとう。僕も君に言いたいことがある。実は、僕も君にずっと伝えたかったんだ。君と過ごす時間が、僕にとってとても大切なんだよ」

その言葉を聞いて、私は胸がいっぱいになった。少し照れくさいけれど、確かに彼の気持ちは私に届いていた。お中元の熨斗紙は、私たちの心を結びつける一つの象徴だった。

そして、私たちはそのまま駅前のカフェで、甘いクッキーと一緒に心温まるひとときを過ごした。夏の暑さも忘れさせてくれる、そんな特別な一日になった。