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春秋花壇

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ファインダー越しの君がいとしくて 夏至

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ファインダー越しの君がいとしくて 夏至

1. 初めての出会い

夏至の陽射しが降り注ぐ街角、偶然通りかかった古道具屋で、私は古いカメラと出会いました。埃まみれのそのカメラは、まるで長い眠りから覚めたかのようでした。私はそのカメラに不思議な惹かれを感じ、迷わず購入しました。

帰宅後、カメラを手に取ると、奇妙な感覚に襲われました。ファインダー越しに見る世界は、まるで夢のような美しさに包まれていたのです。色彩が鮮やかに、光が柔らかく、全てがキラキラと輝いていました。

そのファインダー越しに、初めてあなたの姿を見ました。あなたは街角のカフェで、読書に夢中になっていました。長い髪を風に揺らし、読書に集中するあなたの横顔は、まるで天使のようでした。

私は思わずカメラを構え、シャッターを切りました。ファインダー越しに見るあなたは、さらに美しく輝いていました。

2. ファインダー越しの距離

それからというもの、私は毎日のようにカメラを持ち歩き、ファインダー越しにあなたを探しました。あなたはいつもどこかで、読書や散歩、友人との会話など、様々な表情を見せてくれました。

ファインダー越しにしかあなたを見ることができないという奇妙な状況でしたが、私はそのことに不思議と満足していました。むしろ、ファインダー越しの方が、あなたの本当の姿が見えているような気がしました。

3. 想いを伝えられずに

次第に、私はあなたに惹かれていくようになりました。しかし、私はあなたに声を掛けることができませんでした。ファインダー越しにしかあなたを見ることができない私は、あなたに近づくことが怖かったのです。

ある日、私は勇気を出してあなたに声を掛ける決心をしました。しかし、いざ目の前に立つと、言葉が詰まってしまいました。結局、何も言えずにその場を立ち去りました。

4. 夏至の夜

夏至の夜、私は一人で公園のベンチに座っていました。空を見上げると、満点の星空が広がっていました。星たちは、まるで私の気持ちを映し出すように、静かに輝いていました。

ふと、ポケットからカメラを取り出しました。そして、ファインダーを星空に向けました。ファインダー越しに見る星空は、地上で見るよりもずっと美しいものでした。

その瞬間、私は悟りました。私は、ファインダー越しにしかあなたを見ることができないということに、囚われていたのです。大切なのは、ファインダー越しではなく、自分の目であなたを見ることでした。

5. 勇気の一歩

私はカメラを下ろし、公園を後にしました。そして、あなたの家へ向かいました。

あなたの家の前で立ち止まり、深呼吸をしました。そして、勇気を出してドアベルを鳴らしました。

ドアが開くと、そこにはあなたが立っていました。あなたは驚いた様子でしたが、すぐに笑顔になりました。

私は、今まで抱えていた想いを全て伝えました。ファインダー越しにしかあなたを見ることができなかったこと、それでもあなたに惹かれていたこと、そして、これからもあなたを見続けたいということ。

あなたは、私の話を静かに聞いてくれました。そして、一言こう言いました。

「私もあなたと同じよ。」

6. ファインダー越しの世界

それからというもの、私たちは付き合うようになりました。

私たちはいつも一緒にいました。街を歩き、カフェで語り、公園でベンチに座って話をしました。

そして、私はいつもカメラを持ち歩き、ファインダー越しにあなたを見つめました。

ファインダー越しに見るあなたは、相変わらず美しく輝いていました。しかし、今では、ファインダー越しではなく、自分の目であなたを見ることができていました。

ファインダー越しの世界は、もう私には必要ありませんでした。

7. 永遠の夏至

ある日、私たちは公園のベンチに座っていました。空を見上げると、満点の星空が広がっていました。星たちは、まるで私たちの幸せを祝福するかのように、キラキラと輝いていました。

その瞬間、私は気づきました。

ファインダー越しにしかあなたを見ることができなかったあの日、私は夏至の陽射しに導かれて、あなたとの出会いという運命を手に入れたのです。

そして、今、私たちは永遠の夏至の中にいるのです。

あとがき
2000文字という制限の中で、ストーリーを完結させることはできませんでした。しかし、主人公とヒロインの出会いや、ファインダー越しにしか相手を見ることができないという奇妙な状況、そして、夏至の夜に訪れる奇跡的な展開などを描くことができました。

この物語が、読者の皆様にとって、夏の訪れを感じさせてくれるような、心温まる作品になれば幸いです。

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