いとなみ

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
558 / 1,573

しょんがえ節

しおりを挟む
しょんがえ節

風がそよぎ、春の陽光が降り注ぐ。小川のせせらぎと鳥のさえずりが響き渡る中、一人の少女、さくらが桜並木を歩いていた。

「梅は咲いたか 桜はまだかいな」

口ずさむのは、江戸時代の俗曲「しょんがえ節」。歌詞の通り、梅の花はすでに散り、桜はまだ蕾のままである。

さくらは、桜の蕾を見つめながら、幼馴染の奏のことを思い浮かべていた。奏は、旅に出ていて、もう何年も会っていない。

「いつ帰ってくるんだろう…」

さくらは、奏への想いを募らせていた。

「柳はなよなよ 風まかせ」

風に揺れる柳の枝のように、さくらの心も揺れ動く。

「山吹は浮気で ちりちとてん」

山吹の花のように、さくらの気持ちも移ろいやすい。

「色ばっかりしょんがいな」

春爛漫の美しい景色も、さくらの目には虚しく映る。

そんな時、さくらの携帯電話が鳴った。

「もしもし?」

「さくら?俺だよ、奏。」

「奏っ!」

電話の向こうから聞こえる奏の声に、さくらは驚きと喜びを隠せない。

「ただいま、帰ってきたよ。」

「えっ?!もう?!今どこにいるの?」

「駅前のカフェにいるよ。」

「じゃあ、すぐ行く!」

さくらは、電話を切るなり、駆け足で駅前のカフェへ向かった。

カフェに到着すると、奏は窓際の席でコーヒーを飲んでいた。

「奏っ!」

さくらは、奏の名前を叫びながら、彼の元へ駆け寄った。

奏は、さくらを見て、優しく微笑んだ。

「おかえり、奏。」

さくらは、奏の腕に飛び込んだ。

二人は、久しぶりに再会を喜び合い、抱きしめ合った。

カフェの窓から見える桜の蕾は、もうすぐ咲き誇らんとしていた。

二人の未来も、桜の花のように美しく咲き誇ることを願って、二人は手を握り合った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

妻と愛人と家族

春秋花壇
現代文学
4 愛は辛抱強く,親切です。愛は嫉妬しません。愛は自慢せず,思い上がらず, 5 下品な振る舞いをせず,自分のことばかり考えず,いら立ちません。愛は傷つけられても根に持ちません。 6 愛は不正を喜ばないで,真実を喜びます。 7 愛は全てのことに耐え,全てのことを信じ,全てのことを希望し,全てのことを忍耐します。 8 愛は決して絶えません。 コリント第一13章4~8節

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

処理中です...