いとなみ

春秋花壇

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Ti Amo

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Ti Amo

東京の下町、夕暮れ時の路地裏。二人の影が、長々と伸びていた。

「ねぇ、イタリア語でなんて言うの?」

少女は、照れ笑いを浮かべながら、少年に尋ねた。

「Ti Amoだよ。」

少年は、真剣な眼差しで少女を見つめ、静かに答えた。

「Ti Amo…。」

少女は、その言葉をそっと口ずさみ、意味を噛み締めるように目を閉じた。

「愛してる…。」

日本語とは違う響きに、少女の胸は熱く高鳴った。

初めて出会ったのは、一年前の夏祭り。浴衣姿の少女に、少年は一目惚れをした。

綿菓子を持つ君の横顔があどけなかった。

お団子に結ったうなじのほつれ毛が艶っぽい。

一目ぼれしてしまった少年は、勇気を奮って声をかけた。

「LINE交換していただけませんか?」

祭りばやしが応援するかのように軽やかにあたりを包む。

あまりにもストレートな素朴な言葉に少女は恥ずかしそうに頬を染めた。

彼女は耳まで赤くして、スマホを差し出した。

少年は高鳴る鼓動を隠すように急いでLINEを交換した。

それからというもの、二人は毎日一緒に過ごすようになった。

下町の公園で語り合ったり、駄菓子屋でアイスを食べたり、神社にお参りに行ったり。

何気ない日常が、二人にとってかけがえのない時間になっていく。

線香花火の最後の一本ががぽとりと落ちるのを見て、

「おわっちゃった」

ってつぶやいた。

少年は、慌てて

「僕たちはずっと一緒だよ」

って、つぶやいたけど、君の瞳は曇ったままだった。

少女は重い病を抱えていた。

余命は、あとわずか。

その事実を知った少年は、深い絶望に打ちひしがれた。

それでも、彼は少女の前では明るく振る舞うことを決意した。

残された時間を、少しでも二人で楽しく過ごしたい。

そう願う少年の気持ちは、少女にも伝わっていた。

病状が悪化する中、少女は日に日に弱っていく。

それでも、二人は手を握り合い、互いの目を見つめ続けた。

言葉はなくても、通じ合える心があった。

ある日、少女はついに意識を失ってしまった。

少年は、必死に彼女の名前を呼んだ。

「…Ti Amo…。」

少女は、かすかな声で呟き、再び目を閉じた。

その瞬間、少年は涙を溢れさせた。

愛する人の命が、もうすぐ消えてしまう。

それでも、彼は少女への愛を誓い続けることを決意した。

「…Ti Amo…。」

少年は、少女の耳元で何度も囁いた。

愛の言葉は、少女の心に届いたのだろうか。

少女は、静かに息を引き取った。

少年は、少女の冷たくなった手を握りしめ、声を上げて泣いた。

愛する人を失った悲しみは、計り知れない。

それでも、少年は前を向くことを決意した。

少女との思い出を胸に、彼はこれからも生きていく。

いつかまた、どこかで会える日まで。

Ti Amo…

愛してる…

永遠に…

今も目を閉じると君の声が響く。

「ねぇ、イタリア語でなんて言うの?」

Ti Amo…
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