いとなみ

雨上がり

ぴちゃーん、ぴちぴち、ぽとーん、ぽとぽと、こーんことん。

わたしの住むアパートは雨が降ると途端ににぎやかになる。

トイレの後ろの木々にあたる雨粒。

雨どいから落ちる合唱隊。

オノマトペがデュオ、トリオ、カルテット。

しまいにはオーケストラになっていく。

さしずめ地球のシンフォニーとでもも呼ぶべきだろうか?

芽吹き始めた誰もいない公園で、大の字になって寝っ転がりたい。

雨のしずくが空からカーテンのように降ってきて、わたしの体を濡らしていく。

静かに大地と同化して、消えてなくなればいいのに……。

雨音だけが響く薄暗い部屋で、私は一人、窓辺に座っていた。冷たい雨粒が窓を叩きつける音が、まるで私の心を映しているようだった。

何もかも投げ出してしまいたいような、けだるい空気に包まれながらぼーと雨粒の奏でるリズムを目をつぶって聞いていた。

今日は、大切な人と別れた日だった。理由はどうあれ、もう二度と会えないと思うと、胸が締め付けられるような痛みを感じた。

雨の中、私たちは最後の言葉を交わした。彼の優しい声、温かい笑顔、全てが私の記憶に焼き付いている。

「さようなら。」

彼がそう言って去った後、私は茫然自失状態で立ち尽くしていた。雨に濡れた髪と頬を伝う涙が、冷たい。

家に帰っても、何も手につかなかった。ただ、窓辺に座って、雨の音を聞き続けることしかできなかった。

いつしか、雨は止み、薄日が差してきた。しかし、私の心は晴れなかった。

別れの痛みは、簡単には消えない。それでも、私は前に進むしかない。

私は深呼吸をして、立ち上がった。そして、再び窓辺に向かった。

そこには、雨上がりの虹が架かっていた。

虹は、七色の光を放ち、美しく輝いていた。

その虹を見た瞬間、私はふっと心が軽くなったような気がした。

別れは辛いけれど、人生は続く。

いつか、また新しい出会いがある。

そう信じて、私は前を向いた。

雨上がり、虹が架かる空を見上げながら、私は新しい一歩を踏み出した。

虹を見上げた主人公は、深呼吸をして歩き出した。

そう、私はわたしの人生の主人公。

誰かのわき役や通りすがりエキストラではない。

だけど、行き先は決めていない。ただ、前に進むことだけが大切だった。

街を歩きながら、主人公はふと空を見上げた。

そこには、まだ虹が架かっていた。

虹は、主人公に語りかけているようだった。

「大丈夫だよ。」

「あなたは一人じゃない。」

主人公は、虹に微笑んだ。

そして、再び前を向いた。

これから何が待っているかはわからない。

それでも、主人公は恐くなかった。

虹の光が、彼女を導いてくれるような気がした。

数ヶ月後

主人公は、新しい仕事に就いていた。

仕事は忙しかったが、充実していた。

新しい仲間と出会い、新しい経験をすることで、主人公は少しずつ前に進んでいた。

ある日、主人公は仕事帰りにカフェに立ち寄った。

そこで、偶然、懐かしい顔を見かけた。

それは、かつて別れた彼だった。

彼は、主人公に気づいて微笑んだ。

主人公も、彼に微笑み返した。

二人は、久しぶりにゆっくりと話をした。

別れた後のこと、それぞれの近況など。

話は尽きなかった。

別れ際に、彼は主人公に言った。

「元気そうでよかった。」

「また、どこかで会えるといいね。」

主人公は、彼の言葉に頷いた。

そして、彼を見送った。

彼との再会は、主人公にとって大きな心の支えになった。

彼は、主人公に過去にとらわれず、前に進むことの大切さを教えてくれた。

数年後

主人公は、夢だった小説家になっていた。

日々、執筆に励む生活を送っていた。

ある日、主人公は書店で自分の小説が並んでいるのを見た。

それは、夢のような光景だった。

主人公は、感慨深い気持ちで小説を手に取った。

そして、表紙に書かれたタイトルを見た。

「雨上がりの虹」

それは、あの日、別れの後に見た虹からインスピレーションを得た作品だった。

主人公は、小説の最初のページを開いた。

そして、書き出しをゆっくりと読み始めた。

「雨音だけが響く薄暗い部屋で、私は一人、窓辺に座っていた。」

完