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ファルカタの森
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あるところに、美しく聡明な令嬢、綾香(あやか)がいました。綾香は、隣国の王子である光輝(こうき)と婚約をしていました。二人は幼い頃からの仲良しで、将来を誓い合った間柄でした。
隣国は決して富んだ大きな国ではありませんでしたが、それでも綾香は大人になって嫁ぐ日を指折り数えて待ち望んでいました。いつかは王子の妃になるのですから、どこに出しても恥ずかしくないように料理や掃除、マナーや政治
と目まぐるしい日々を過ごしていたのです。
ある日、光輝は綾香の元を訪れ、突然婚約破棄を告げます。光輝は、別の国から来た令嬢、莉子(りこ)と結婚することになったというのです。綾香は、光輝の突然の決断に驚き、絶望します。
「わたくしに何か悪い点があるのなら、直します。どうか婚約破棄を取り消してください」
「それは、できぬ」
「どうしてでございますか?」
「そんなもん、自分で考えろ!!」
どんなに頼んでも、けんもほろろ。
あの大好きだった光輝とは思えないほど、そっけない態度。
まるで綾香が悪役令嬢で、光輝の愛する莉子さんに何か意地悪をしたような感じなのです。
しかし、侍女に聞いてもそんな噂は耳にしたこともないとのこと。
皆目見当がつきません。
「覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)」のことわざの通り、
一度こぼれた水を再び盆に戻すことはできないのかもしれません。
綾香は、光輝に理由を尋ねますが、光輝は明確な答えをしてくれません。ただ、莉子が非常に才色兼備の女性であり、彼の理想の女性だとだけ言います。綾香は、光輝の言い分を信じられず、二人の結婚を阻止しようとします。
綾香は、光輝の父親である王に会い、婚約破棄の撤回を願い出ます。しかし、王は光輝の意思を尊重し、婚約破棄を認めます。綾香は、王の決定に納得できず、王宮を飛び出します。
「こんなことが許されるなんて……」
腹が立つのと、涙が止まらないのとで、もう誰にも会いたくありませんでした。
誰かにあったとしても、またも、裏切られたら……。
一人の殿方を若い美しい盛りにさえつなぎ留めておくことができなかった。
わたしには、何の才能も魅力もないんだ。
次から次へとこれでもか、これでもかと自分をめった刺しにする。
ブクブクと底なしに埋まっていく、そんな感じだったのです。
綾香は、森の中で一人、婚約破棄のショックから立ち直れずにいました。そんな彼女の前に、一人の青年が現れます。青年は、綾香の幼なじみの剣士、一輝(かずき)でした。
一輝は、綾香を励まし、一緒に立ち上がろうと言います。綾香は、一輝の言葉に勇気づけられ、立ち直る決意をします。
「だいじょうぶ、わたしはきっとうまくいく」
何度も何度も言い聞かせるようにつぶやくのです。
「うれしい、たのしい、しあわせ、ついてる」
歩くたびに、リズムをつけて歌うのです。
少しずつ、綾香の口角が上がり、眉間の皺が薄くなってきました。
すると不思議、綾香の周りがキラキラと輝いてさわやかな風が吹き始めました。
綾香は、たくさんの花を植えます。
咲いた花の周りを蝶や蜂やトンボが飛んでいます。
夏はうるさいほどのせみ時雨。
不思議ですね。
蝉は大人になるまで7年もかかるはずなのに。
どこから飛んできたのでしょう?
辺境の地の人たちは、
「無駄なことを、こんな乾燥しきったところで花なんて咲くわけがない」
と、陰口をたたいていました。
それでも綾香は、泥まみれになりながらも花を植えます。
木陰で休めるようにファルカタの木も街路樹に植えていきます。
ファルカタは桜や樫のように硬い木ではありませんから、家の柱などには使えませんでしたが、成長がとっても早く、箱などを作ったり加工にして使うには白くて扱いやすい木でした。
するとどうでしょう。乾ききったひび割れた大地に恵みの雨が降り注ぐのです。
まるでじょうろで、お花や木に水を灌ぐように表面の土が乾いてくると
水の循環をセットされたように潤していくのです。
その木はどんどん伸びて、5~7年で大木になっていくのです。
木々の梢に様々な鳥が巣を作り、地鳴きしさえずっています。
綾香は、光輝への未練を断ち切り、新たな人生を歩むことを決意します。彼女は、一輝とともに、辺境の地で暮らし始めます。そこは荒涼とした砂交じりの乾ききった大地でした。
毎日朝早く起きて、地元の農民たちと水路を掘り、山から木の葉をたくさん取ってきて、山のように積み上げていきます。刈った雑草とぬかも加えて、少しずつ水を注いでいきます。ミミズを加えて腐葉土を作っていきます。赤い砂交じりの土が腐葉土と堆肥のおかげて肥沃な黒土に代わっていきます。
堆肥を施すタイミングは、種まき(畑に直接まく場合)や植え付けの2週間前です。1平方メートルに2~3㎏の割合で施し、クワ等で土とよく混ぜます。
こうして土壌の通気性と保水性が高まり、各種の微生物が増加して土壌の化学的変化にも緩衝作用となるのです。
綾香は、辺境の地で、一輝と共に新しい生活を築いていきます。彼女は、一輝の支えもあり、次第に笑顔を取り戻していきます。
ある日、綾香は、辺境の地に異変が起こっていることを知ります。隣国が、綾香の領地を狙って侵攻してきたのです。綾香は、一輝とともに、領地を守るために戦います。
神に祈り、結界を張ります。
隣国の敵兵たちの馬は、綾香の領土に入ろうとすると、狂ったようにいなないて進軍することができません。
踵を返して勝手に元来た道へと暴走してしまうのです。
綾香と一輝の活躍により、隣国の侵攻は退けられます。綾香は、領民から感謝され、英雄として迎えられます。
綾香は、辺境の地で、一輝とともに、幸せに暮らしました。彼女は、光輝への未練を完全に断ち切り、新たな人生を歩み始めました。
綾香の指導で肥沃な土地とかした新しい領土は、
緑豊かなオアシス「ファルカタの森」と呼ばれるようになったのです。
一年先を思う人は花を育てなさい。十年先を思う人は木を育てなさい。百年先を思う人は人を育てなさい
「さあてそろそろ、学校を建てようかしら」
隣国は決して富んだ大きな国ではありませんでしたが、それでも綾香は大人になって嫁ぐ日を指折り数えて待ち望んでいました。いつかは王子の妃になるのですから、どこに出しても恥ずかしくないように料理や掃除、マナーや政治
と目まぐるしい日々を過ごしていたのです。
ある日、光輝は綾香の元を訪れ、突然婚約破棄を告げます。光輝は、別の国から来た令嬢、莉子(りこ)と結婚することになったというのです。綾香は、光輝の突然の決断に驚き、絶望します。
「わたくしに何か悪い点があるのなら、直します。どうか婚約破棄を取り消してください」
「それは、できぬ」
「どうしてでございますか?」
「そんなもん、自分で考えろ!!」
どんなに頼んでも、けんもほろろ。
あの大好きだった光輝とは思えないほど、そっけない態度。
まるで綾香が悪役令嬢で、光輝の愛する莉子さんに何か意地悪をしたような感じなのです。
しかし、侍女に聞いてもそんな噂は耳にしたこともないとのこと。
皆目見当がつきません。
「覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)」のことわざの通り、
一度こぼれた水を再び盆に戻すことはできないのかもしれません。
綾香は、光輝に理由を尋ねますが、光輝は明確な答えをしてくれません。ただ、莉子が非常に才色兼備の女性であり、彼の理想の女性だとだけ言います。綾香は、光輝の言い分を信じられず、二人の結婚を阻止しようとします。
綾香は、光輝の父親である王に会い、婚約破棄の撤回を願い出ます。しかし、王は光輝の意思を尊重し、婚約破棄を認めます。綾香は、王の決定に納得できず、王宮を飛び出します。
「こんなことが許されるなんて……」
腹が立つのと、涙が止まらないのとで、もう誰にも会いたくありませんでした。
誰かにあったとしても、またも、裏切られたら……。
一人の殿方を若い美しい盛りにさえつなぎ留めておくことができなかった。
わたしには、何の才能も魅力もないんだ。
次から次へとこれでもか、これでもかと自分をめった刺しにする。
ブクブクと底なしに埋まっていく、そんな感じだったのです。
綾香は、森の中で一人、婚約破棄のショックから立ち直れずにいました。そんな彼女の前に、一人の青年が現れます。青年は、綾香の幼なじみの剣士、一輝(かずき)でした。
一輝は、綾香を励まし、一緒に立ち上がろうと言います。綾香は、一輝の言葉に勇気づけられ、立ち直る決意をします。
「だいじょうぶ、わたしはきっとうまくいく」
何度も何度も言い聞かせるようにつぶやくのです。
「うれしい、たのしい、しあわせ、ついてる」
歩くたびに、リズムをつけて歌うのです。
少しずつ、綾香の口角が上がり、眉間の皺が薄くなってきました。
すると不思議、綾香の周りがキラキラと輝いてさわやかな風が吹き始めました。
綾香は、たくさんの花を植えます。
咲いた花の周りを蝶や蜂やトンボが飛んでいます。
夏はうるさいほどのせみ時雨。
不思議ですね。
蝉は大人になるまで7年もかかるはずなのに。
どこから飛んできたのでしょう?
辺境の地の人たちは、
「無駄なことを、こんな乾燥しきったところで花なんて咲くわけがない」
と、陰口をたたいていました。
それでも綾香は、泥まみれになりながらも花を植えます。
木陰で休めるようにファルカタの木も街路樹に植えていきます。
ファルカタは桜や樫のように硬い木ではありませんから、家の柱などには使えませんでしたが、成長がとっても早く、箱などを作ったり加工にして使うには白くて扱いやすい木でした。
するとどうでしょう。乾ききったひび割れた大地に恵みの雨が降り注ぐのです。
まるでじょうろで、お花や木に水を灌ぐように表面の土が乾いてくると
水の循環をセットされたように潤していくのです。
その木はどんどん伸びて、5~7年で大木になっていくのです。
木々の梢に様々な鳥が巣を作り、地鳴きしさえずっています。
綾香は、光輝への未練を断ち切り、新たな人生を歩むことを決意します。彼女は、一輝とともに、辺境の地で暮らし始めます。そこは荒涼とした砂交じりの乾ききった大地でした。
毎日朝早く起きて、地元の農民たちと水路を掘り、山から木の葉をたくさん取ってきて、山のように積み上げていきます。刈った雑草とぬかも加えて、少しずつ水を注いでいきます。ミミズを加えて腐葉土を作っていきます。赤い砂交じりの土が腐葉土と堆肥のおかげて肥沃な黒土に代わっていきます。
堆肥を施すタイミングは、種まき(畑に直接まく場合)や植え付けの2週間前です。1平方メートルに2~3㎏の割合で施し、クワ等で土とよく混ぜます。
こうして土壌の通気性と保水性が高まり、各種の微生物が増加して土壌の化学的変化にも緩衝作用となるのです。
綾香は、辺境の地で、一輝と共に新しい生活を築いていきます。彼女は、一輝の支えもあり、次第に笑顔を取り戻していきます。
ある日、綾香は、辺境の地に異変が起こっていることを知ります。隣国が、綾香の領地を狙って侵攻してきたのです。綾香は、一輝とともに、領地を守るために戦います。
神に祈り、結界を張ります。
隣国の敵兵たちの馬は、綾香の領土に入ろうとすると、狂ったようにいなないて進軍することができません。
踵を返して勝手に元来た道へと暴走してしまうのです。
綾香と一輝の活躍により、隣国の侵攻は退けられます。綾香は、領民から感謝され、英雄として迎えられます。
綾香は、辺境の地で、一輝とともに、幸せに暮らしました。彼女は、光輝への未練を完全に断ち切り、新たな人生を歩み始めました。
綾香の指導で肥沃な土地とかした新しい領土は、
緑豊かなオアシス「ファルカタの森」と呼ばれるようになったのです。
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