いとなみ

春秋花壇

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過って改めざる。これを過ちという。

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あれはまだ新型感染症が騒がれる前の２０１９年のクリスマス。

ぼっちクリスマスを都内のホテルのバーで一人楽しんでいた。

結構混んできて、あなたが隣に座って

何となく話し始めて、気が付いたら朝ちゅんで

あなたがベッドの隣に生まれたままの姿でいた。

目と目を見つけあって頬を染めることも、

手が触れあって、ときめくことも

公園を一緒にお散歩する事も

映画館でポップコーンとコーラをほおばる事も

お気に入りの手料理をふるまうこともない儘に

いきなりCですか?

どうしてこんなことになっているのかさえ覚えていない。

完全なるブラックアウト。

そばに彼が座った時、ホワイトムスクのセクシーな香りが

鼻を擽ったのだけは覚えてる。

う～ん、寂し過ぎるよね。

それでも、体を重ね合ってLINEを交換して、

なぜかあの日からずっとあなたと一緒に暮らしてる。

子猫のようにじゃれ合って、

子犬のようにはしゃいでる。

(家事は誰がする)とか

(お金はどっちがいくら出す)とか

何故かまったく話し合うことはなかった。

あなたの荷物もいつ運んできたのか知らない。

あなたはの住んでいたマンションがどうなってるのかさえ分からない。

あなたがどんなお仕事をしてて、

年が幾つなのかさえ聞きもしない。

ただ、二人でいる方が心地よかった。

時たま、コンパスを持ってオリエンテーリングしたり、

デパートの食料品売り場に一緒に行って

お肉や野菜を買い込んで

そのままキャンプに行ったり、

アルマンド（アルマン・ド・ブリニャック）のシャンパンを

お部屋の明かりを消してアロマキャンドルの中で味わった。

「ねー、これにがーい」

って、さんまの塩焼きに舌鼓をうち、

頂き物の鮭を二人でお料理してマリネにしたり。

一夜の過ちを何度も重ねてあなたがいる事が当たり前になって行った。

名前さえ知らない人なのに。

「風味を添えていきたいね」

あなたはぽつんとつぶやく。

わたしも素直にこくんと首を振った。

それがあなたのプロポーズ。

次の日、あなたは婚姻届けを貰って来て、

あなたの友人と私の友人の前でわたしたちは結婚した。

あれから幾重にも過ちを繰り返し、時は流れる。

今日は二人の金婚式。

わたしたちには、三人の子供と六人の孫がいる。

あの日、あなたに出会っていなければ

次の年、新型感染症が流行らなければ

stay homeで、緊急事態宣言がなければ

マスクがなかなか手に入らないという非常事態がなければ

そして、何よりも二人が寂しがり屋じゃなければ

－1×－1＝＋1

過ちも二人が認めて補い合っていけたら

フレーバーな風味のある人生。

深みとこくとまろみを増していく。

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