いとなみ

春秋花壇

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紫陽花の咲く頃に

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「なんでかな。愛してるから気づいちゃったんだよな」

あなたは本当に申し訳なさそうに暗い瞳でわたしの質問に答えた。

傍らで驚くほど鮮やかな青い紫陽花が静かに揺れている。



こんなはずじゃなかった。

わたしの欲しかったものはこんなんじゃない。

いくら泣いても、いくら叫んでも二度と戻ってこない

大切なあなたとの時間。

私の名前は凛桜(りお)

彼の名前は陽翔(はると)

わたしたちは、同級生で付属の高校で知り合った。

そのまま、わたしたちはエスカレーター式に大学に行き、

毎日のように楽しい青春の時間を過ごした。

気が付くといつもそばにいてくれて、陰になり日向になり

おっちょこちょいな私をフォローしてくれる。

そんなあなたが大好きだった。

茨木の日立にネモフィラを見に行ったり、

東京の青梅でレンゲショウマを見て

「妖精みたいね」

と、はしゃいだり、

私のアパートの傍のニリンソウを見て、

「いつかわたしたちもニリンソウのような夫婦になりたいね」

って、夢を語り合ったりしていた。

派手じゃないけど、凄い事はそれほどなかったけど、

ゆっくりと二人の時間を分かち合った。

1年、2年、3年。

高校を無事に卒業し、

4年、5年、6年、7年。

大学も何のトラブルもなく、楽しく有意義に過ぎて行った。

あなたは、学んだ事をいかして、ITの技術系の会社に就職し、

わたしも学んだ事を活かして、公僕となった。

仕事をし始めると、二人の時間がかみ合わない。

今までは毎日、一緒に過ごせていたのに、

急に添え木を外されたような錯覚に陥る。

毎日、LINEや電話で話はするんだけど、

時間だけがすり抜けていく。

「毎日、君の作った朝食が食べたいな」

あなたは甘えるように私の頭を撫でながらそう言った。

「まるで、プロポーズ」

「うん」

「え?」

「そうだよ」

式は後でもいいってことで、早速二人で住み始めた。

ここで気付くべきだったんだ。

一緒に住む前に、かみ合わなくなった歯車の戻し方を

もっと、じっくり話し合えばよかった。

わたしたちは、勘違いしていた。

一緒に暮らして居れば、離れる事なんてないって。

ずーとずーとこれから先も二人は一緒だって……。

毎日、定時で上がれるわたしはあなたの為に家を整えた。

掃除、片付け、洗濯、アイロンかけ、料理、買い物。

はじめは一緒にしたりする事もあったのに、

どんどんこまねずみのように一人でこなしていく。

だって、あなたは仕事が忙しくて

「飯、風呂、寝る」

しか言わなくなったから。

時間だけが過ぎて行き、二人で暮らしているのに、

あなたが何を考え、何を望んでいるのかさえ忘れてしまうほど、

意思の疎通はなくなっていく。

心が少しずつ、砂漠のように乾いていく。

どんなに頑張ってお料理しても、

疲れていて、寝ていたいのに掃除しても、

感謝される事も褒められる事も

「おいしいね」

と、共感する事もない生活。

いつしか、何の為に結婚したのか、

あなたじゃなくてもだれでも良かったんじゃないいかとさえ

考えるようになっていた。

たいていの男は
結婚相手とは思わない女といちゃつき
男といちゃつかない女と結婚する

美貌や愛欲によって結ばれた結婚ほど
早く紛争を起こして失敗しやすい
 結婚には、一定して変ることのない
しっかりとした土台と
堅実にして慎重な行動が必要である

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