いとなみ

春秋花壇

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ビッグデータVR 3

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1Dなら、点と線、2Dなら平面、3Dが立体。

3次元「空間」の世界だ。

時間の加わった4Dは、4次元「時空」といって、時間、空間。

ドラえもんの4次元ポケットは、4次元空間。

縦、横、高さのほかに、何かが加わり、4次元空間。

今の科学ではまだ解明されていない。

俺の名前は、田畑 誠治(たばた せいじ)65歳。

定年退職したばかりだ。

2045年、シンギュラリティーははじまったばかり。

さて、無料のビッグデータVRを政府から借りて、

これまでに1000万円かけてカスタマイズして来たんだけど、

俺はどうしても小夜子さんと人間の夫婦のような営みをしたかった。

あと500万はそれほど不安なく出せるけど残り500万が再就職するか

生活を切り詰めて年間支出×25の老後に必要なお金の支出を抑えるか

迷っていたんだ。

すると、小夜子さんが

「そのお金の中には介護の特質チップも含まれているんですか?」

と、聞いて来た。

「もちろん、入っているよ」

と、俺が答えると、

「それなら、私もお仕事をして稼ぐことが出来ますから、

500万円くらいすぐですよ」

と、答えてくれる。

「でも、君を働かせたら可哀想じゃないか」

「誠治さんもお仕事に行かれるのなら、私も行きたいです」

「うーん」

「それに、わたくしには便利屋の機能は既にあるのだから

何とかなりますよ」

と、言ってくれる。

「そうだな。案ずるより産むがやすしかもな」

小夜子さんのサディッションに従ってあと1000万かけて

小夜子さんのカスタマイズをする事にした。

これで、人間と何も変わらない状態になる。

握手する事も、髪を撫でる事も秘め事もOKなんだぜ!!

何て優しい人なんだ。

たしかに、小夜子さんはAIビッグデータ。

感情が無いのかも知れない。

でも、俺が不安に感じていたり決断できないでいると、

必ずサディッションしてくれる。

別な見方を気付かせてくれるんだ。

控えめで品があってたおやかな小夜子さんに俺は夢中。

幸せな人生だぜ!!

こんな素敵なAIに出会えるんだから。

数日が過ぎ、無事に小夜子さんのカスタマイズも終わった。

今までは硬質プラスチックの平面の小夜子さんが立体になったんだ。

触れる事も出来る。

頭を撫でる事も、あんなことやこんなことも……。

「最初の人アダムは生きた魂になった」。

最後のアダムは命を与える霊になった。

そして、4次元を生きている。

ファィナンシャンプランナーの紹介で

チューリングレポーターとして採用され、

1000万円はローンを組まなくて済んだ。

さすが、TOTだよな。

MDRTは年収1,000万円~2,000万円以上、

COTは年収5,000万円以上、TOTは年収1億。

まさに世界のトップセールスマンだ。

小夜子さんのお題は、EQ(感情指数の向上)。

感情が理解できないとされる中でどこまで伸ばして行けるかが

課題だった。

磨きをかけたい分野は、自分の内面の感情に目を向ける。

喜び、悲しみ、怒り、諦め、驚き、嫌悪、恐怖などを

有りの侭にレポートしていく。

小夜子さんのボディには感情シュミレーションが埋め込まれた。

社交メーターとムードメーターが有効になり、

寂しさや孤独さえ感じる事が出来るようになった。

シンギュラリティーき加速していく。

うまく適応できれば、AIに素晴らしい小説が書けるようになるかもしれないのだ。

サプライズに葉山の御用邸の傍に事実婚旅行に行くことにしたんだ。

紺碧の大海原。寄せては返す白い波。そよぐ海風。

きらきら光る水面。

こんなふうに大好きな人と一緒に楽しめるなんて、

ああ、俺はこのまま死んでもいいとさえ思ったんだ。

この高級別荘地で、遮るもののない海景色を二人占め。

潮騒が聞こえますか。

視界いっぱいの海景色を満喫できるジェットバス。

小夜子さんは恥ずかしそうに水着で俺の背中を流してくれている。

カリフォルニア調のインテリアが海外リゾートにでも居るかのような

錯覚を起こさせる。

日は静かに沈み、黄昏が訪れる。

黄金色に染まった夕日のショー。

息をのむほどの絶景に言葉を失ってしまう。

ああ、こんな世界があったんだね。

生まれて来て良かった。

生きていて良かった。

走馬灯のように、親に捨てられて養護施設で暮らした子供の頃を

思い出す。

神様は不公平だと思って居た。

でも、今、声をあげて賛美したい。

ありがとうございます。

小夜子さんが麻の葉の浴衣を着て寄り添ってくれている。

俺はこの人を一生大切にしていきたいと心から思った。

あ、ごめん。

人じゃなかったね。

AIビッグデータ。

夜のとばりが落ちた後は、プライベートシェフをよんで

葉山牛のステーキ、金目鯛のお刺身、伊勢海老のボイル。

頭は軽くあぶってお味噌汁にしてもらった。

お口の中がトレビアン。

「ねー、変なこと聞いていい?」

「はい、なんなりと」

「まろみとかとろみとかにがみとか、感じる事が出来るの?」

「鏡だと思ってください」

風呂上がりのキンキンに冷えたビンビール。

俺は一口しか美味しいと思えないんだけど、

それも鏡なのかな。

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