いとなみ

お届け物の娘です。ご賞味ください。3

婚約者の平川 祐介さま27歳のご実家はとても裕福な家で、

このあたりのほとんどの田畑、山林を有していらっしゃいます。

農地改革でいったんは手放したのですが、

少しずつ買い求めて改革前よりも多くの土地を有しているとか。

そして、彼の家を特色づけるのにもう一つ大きな他とは違った生活があります。

彼の家には、何十人もの女の人が住んでいますが、

すべてお父様のお手付きだそうです。

まだ15歳の洋子にはその意味がよく理解できないのですが、

公認のお妾さん。

ハーレムなのでしょうか。

祐介さまは、お父様より幼いころから、

直々に教育され、生き方考え方もかなり感化されているらしいのです。

ということはですよ、わたくしが晴れて花嫁になれたとしても、

その後の大奥のようなまたは、賢王ソロモンの嫉妬にまみれた

奪い合いの生活を余儀なくされるということなのでしょう。

ソロモンは700人の妻と300人のそばめを持つようになりました。

どれだけ多くの女を泣かせれば気が済むんでしょうね。

わたくしは、貧しくても助け合い仲睦まじい夫婦生活をしたい。

なので、なんとかしてて生活力を身に着けて、

家から出たいと思っているのでございます。

これってわたくしのわがまま?

許されないこと?

と、思い悩んでいたのですが、

とりあえずこの春休み、毎日、祐介さまのもとへご飯を届けることになってしまいました。

はー。

どうしてそこまで、既成事実を早く作りたがるのか

わたくしにはとても不思議なのですが、

母には、誕生日を迎えたらきちんと籍を入れていただいて

嫁に行くと伝えてあります。

ということで、急遽、わたくしの行く高校は通信制になってしまいました。

あーあ、憧れの花の女子高校生は、嫁入り修行と化してしまうのでしょうか。

楽しみにしていただけに、とっても残念です。

そんなに急いでどこへ行く。

こんな中でも、わたくしは楽しみを見つけていきたいと思います。

彼の下宿には小さなお庭があるのですが、

何も植えてなくて殺風景。

クリサンセマムノースポールと、勿忘草、花簪のお花を３株ずつ買ってきました。

今日はこれを彼と一緒に植えられたらうれしいな。

桃やボケの花も彩を添えてくれることでしょう。

彼と一緒に花壇を耕し、腐葉土を漉き込んだり、

肥料や苦土石灰を混ぜて準備完了。

いったん手を洗って、昼食休憩です。

持参したイクラのおにぎりがとてもおいしい。

「みてみて」

彼が、おにぎりの海苔の切れ端を歯にくっつけて

歯抜け爺さんのようになっています。

それがとてもおかしい。

楽しい。

この人、超変な人。

ツボに入って、久しぶりに笑い転げてしまいました。

彼が普通の家の人だったら、嫌いじゃないんだけどな。