いとなみ

春秋花壇

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お届け物の娘です。ご賞味ください。2

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お届け物の娘です。ご賞味ください。

親から婚約者に向けてのおすみつきと共に差し出されてしまった。

福留 洋子 15歳。

結婚式も終わっていないのに、

この人と共に一夜を過ごすのだろうか。

「なんなら帰ってこなくてもいいからね」

この、なんならってなーに。

婚約者の平川 祐介 27歳は、私の頭をまだなでている。

いつくしむように。

いとおしむように。

小さな時から、私の夢はお嫁さんになることだった。

だから、このままここにいれば夢は確かにかなうんだけど。

ねー、こんなんでいいの?

カラーンコローン。

高らかに鐘がなり、白いハトが舞う。

ライスシャワーと、ほがらかなみんなの笑顔に見守られて、

新しい人生の門出。

それが私の描いた、幸せな花嫁だった。

彼の指が、頭から髪へ。

髪から耳、首筋へと移ろいで行く。

うるうるの上目目線で彼をとらえて離さない私の瞳は今、

困惑の色をしているのだろうか。

快感の電気がからだ中を駆け巡る。

動悸が激しくなり、私の大切なところが熱くなっていく。

とろけそうに甘い優しい彼の目線。

ああ、このまま。

何も考えず、彼の腕に抱かれたい。

つぼみが自然と花開くように、

私は女になっていく。

「ちょ」

中二病もやっと落ち着いたばかりの私は、

人生で大切な決断を迫られている。

このままここにいていいの?

本当にこの人でいいの?

どんなに女性闘士家が、男女平等だと叫んでも、

男女別姓が認められつつあっても、

私の住む山口県では、まだまだ男尊女卑。

女は男の三歩あとを黙ってついていく。

夫が

「あのカラスは白いね」

といえば、

「そうですね。どうしてあのカラスは白なのでしょうね」

というのがよい妻だと教わってきた。

いつの時代だよ。

時代錯誤も甚だしい。

と言われそうだが、

それはずるい男たちの責任逃れ。

彼の指が優しく頬をなでる。

わたしは静かに泣いている。

わたしは戸惑っている。

貞潔でありたかった。

性的不道徳から逃げ去りなさい! ほかの罪はどれも人が自分の体の外で犯すものですが,性的に不道徳な行為をする人は自分の体に対して罪を犯しているのです。

コリント第一 6:18

「私を欲しいなら、16歳のお誕生日まで待ってください。」

「16歳になったら、結婚することができます。そしたら、籍を入れてください」

「それからなら、喜んで私を差し出します」

必死で、声を殺してお願いをする。

わたしは、私を大切にしてほしい。

わたしもあなたを大切にしたいから、

これだけは譲れないの。

必死な思いだった。

彼はその気になっていて、

親もそのことは認めていて、

これはたんならわたしのわがまま。

「わかった。大丈夫だよ。今夜は何もしないから」

彼はそう言ってくれた。

でも、ここに居続けることは今はできない。

心はほかの何物にも勝って不実であり,必死になる

エレミヤ 17:9

危険を冒してまで、ここにいる必要は今はない。

守るべき他のすべてのものに勝ってあなたの心を守れ。命はそこに源を発しているからである

箴言 4:23

「ありがとうございます。バージンロードを胸を張って歩きたいのです」

彼はそっと、私から手を放した。

「君を知ることができてうれしかったよ。

ありがとう。ちゃんと君がオーケー出してくれるまで待ってるから」

彼はタクシーを呼んでくれた。

それにしても、お母様。

お届け物の娘です。ご賞味ください。

なんて、勝手に決めないでください。

結婚はすべての人の間で誉れあるものとされるべきです。

また結婚の床は汚れのないものとすべきです。

ヘブライ 13章4節
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