いとなみ

春秋花壇

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日・炎・水・雷・岩・風・月・恋・蛇・花・木・蟲・音・霞・獣

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「わたくし、是永 竜介は菅山 諭子さんとの婚約を破棄する」

「理由は?」

「理由は、

日・炎・水・雷・岩・風・月・恋・蛇・花・木・蟲・音・霞・獣

である」

なんじゃー、これは。

なぞ賭けなのか。

ひょっとして、今流行の『鬼滅の刃○』の「呼吸」?

縁を切るなら、さくっと潔くはいいけど。

めんどくさいことをする。

去るもの追わずで、考えたくもないのに。

わたくし、菅山 諭子 23歳は、

婚約者 是永 竜介さま 29歳から婚約を破棄されたようです。

わたくしには、婚約者の他に守りたい人がいるのです。

ちょっと前までは、彼のお仕事もうまくいっていて、

このまま是永 竜介さまのもとに嫁いでもいいかなと思っていたのですが、

守りたい人、長谷 雅人さん 23歳が社長をしていた会社から追われ、

無一文になってしまったようなのです。

彼は、小学校のときから幼馴染で、いつもわたしを守ってくれました。

わたしが父母を交通事故でなくして、

親戚の家をたらいまわしにされそうになっていたとき、

彼のご両親が引き取ってくださって今日まで育ててくださいました。

兄弟のように育ったので、私自身、彼を兄弟としてではなく

男性としてまた、一生の伴侶として愛しているとは気がつかなかったのです。

もちろん、婚約者の是永 竜介さまのことも心から尊敬しているのです。

長谷 雅人さんが何もかも失って、気落ちしているのに、

わたくし一人が幸せでいるのはとても罪だと思えるのです。

だから、結婚を少し伸ばしてほしいとお願いしたら、

婚約破棄されてしまいました。

待てない、続かないは、子供と大人を分けるプログラムです。

待てないといわれるなら、諦めるしかないですよね。

今日は夕方、長谷 雅人さんと食事をする約束になっています。

お魚もお肉もおいしい個室のある居酒屋「海畑」です。

彼にプレゼントがあるんです。

喜んでもらえるでしょうか。

長谷 雅人さんから、会社がどうしてだめになったかを

かいつまんで聞くことができました。

彼が、羽振りの良かったとき、エルメスやビィトンのバッグ、

お洋服や宝石を買うからと散々おねだりをして、

お金を使わせていました。

金食い虫だったんです。わたしw

「わたしに貢いだお金、いくらかわかってる?」

「君にそれだけの価値があるから、プレゼントしたんだし」

「でも、金食い虫だよね」

「君が喜ぶ顔が見れるなら、僕はうれしかった」

「ありがとう」

「ここに、5000万円の現金が用意できたら、

もう一度起業する?」

「うーん、今は無理かな」

「どうして?」

「人を信じられなくなってるかも」

「なら、人を使わないでできる起業をしてみたら」

「仕事はそろそろ始めるけど、起業はまだかな」

「じゃあ、お金が必要になったら、おろしていつでも使って」

印鑑と通帳を彼に預けました。

そう、彼は、モノなしマルチ商法に引っかかったのです。

だまされてしまったのです。

「脇が甘いねー」

「調子に乗っていたのかもしれない」

シェアビジネスも大赤字になるみたいだし。

老齢化が進んで、田舎暮らしにあこがれて、

住み慣れたい家を売って、人間関係、医療施設、さまざまな問題で

つんでしまう人が増えているみたい。

そこらへんも加味しながら、少し勉強することにする。

不動産鑑定士を資格が取れたらうれしいけど。

いろんな将来の夢を語り合いながら、

おいしい料理に舌鼓を打つ。

やっぱり、気の合う人と食べる食事は至福のときだよね。

「ところで、婚約破棄の理由は?」

「日・炎・水・雷・岩・風・月・恋・蛇・花・木・蟲・音・霞・獣」

「なんだそりゃ」

「『鬼滅の刃○』の呼吸みたいなんだけど、見たことないからわからないのよ」

「うーん」

かれは、メモ帳に日・炎・水・雷・岩・風・月・恋・蛇・花・木・蟲・音・霞・獣

書き始めた。

「なんか多くない?」

「だから、一度も見たことないって」

「あ、木が多い」

「きがおおい」

「俺のことかな」

二人は、白い歯を見せてにこやかにピースサインをした。


2年後、彼は結局、人間を信じることが難しくて、

調理師の免許を取って、子供食堂を始めた。

基礎からはじめましょう。

頭ではわかっているんだけど、自己肯定感がもてない。

信じようとするが、まただまされるんじゃないか。

また、お金を持ち逃げされるんじゃないかと疑心暗鬼になってしまう。

今は、それでいいんだ。

ありのままを受け入れる。

大やけどしたのに、何もなかったと自分にうそをつく必要はないよね。

3蜜避けての世のだけど、

わたくし、菅山 諭子を救ってくれたのは、

長谷 雅人さんだった。

そっと寄り添ってくれた。

優しく、励ましてくれた。

だから、彼が自分自身さえも信じられなくなった今、

彼のそばに寄り添いたい。

彼の役に立ちたいのです。

ここには、お年よりも安い値段で利用できる。

学生のボランティアもいて、勉強を教えたりしてくれる。

不登校の子なども増えてきた。

皆が少しでも楽しいと感じてもらえたらいいな。

地域の人も喜んで手伝ってくれる。

近所に土地を買って、おばあちゃんたちと畑を作っています。

無農薬野菜、ネットをちゃんとかけないと全部

虫に食べられてしまいます。

有機野菜も難しいですよね。

腐葉土やくんたんをすきこんだ土は、

ほらふわふわ。

みんなで、サツマイモ堀をしたり

腕相撲をしたり、お年寄りと子供たちとの

橋渡しができたらいいな。

この大地のような人になれたらうれしいな。

わたしは、栄養士の免許を持っているので、

月の献立を手伝ったりしている。

これから、この施設にいくらかかるかわからないので、

籍だけ入れて写真だけ撮りました。

以前のようには、儲からなくても、共に生きていく。

それだけでも幸せなんです。

今日は文化の日。

日本の国民の祝日の一つである。

日付は11月3日。明治天皇の誕生日にあたり、

明治期に天長節、昭和初期に明治節として祝日となっていた日である。

文化功労賞の人には、年金350万円が授与される。

トレニアカタリーナブルーリバーの青いお花のように

いつまでもお元気でお過ごしください。

うれしい。

楽しい。

幸せ。

ついてる。

ありがとうございます。
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