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所有欲
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「おおアレクサンドロス王よ,すべての人間は,わたしたちがいま立っているほどの土地しか所有致しませぬ。あなたも,たいへん活動家で容赦がなく,自国を遠く離れて世界中を歩き回り,自分を悩ましまた他人を困まらせていることを除けば,他の人間と同じであります。しかし長くはありませぬ。あなたは死にますから。そして埋葬に足るだけの土地を所有するのみとなるでありましょう」。
何かの小説に、デパートに行ってデパートごと買えるのも不幸だが、
何も買えないのも不幸だ。
という文章があった。
俺の名前は、大原 浩平 30歳。
そして、婚約者は森田 奈月 24歳。
二人は、半年前に婚約したのだが、婚約破棄しようと思う。
理由は彼女の果てることのないブランド志向である。
やれ、プラダのバッグだ。
やれ、ミキモトのネックレスだ。
エルメス、グッチ、ディオール、オーデマ・ピゲの時計、ティファニーやカルティエ
CECIL McBEE (セシルマクビー)、LOWRYS FARM (ローリーズファム)。
すばらしいブランドばかりだ。
いいものはいい。
だが、しかーし
自分の持ってもいない金を使って,必要でもない物を,
好きでもない人に感銘を与えるだけのために買う。
自分ごほうびにボーナスでエルメスのピコタンロックを379000円で買ったとしよう。
それはとても素敵なことだと思う。
俺が言いたいのは、カードや借金までして買うのはどうかといっているのだ。
こんな生活をしていたら、1億だって、あっという間になくなるだろう。
そして、一番大切な「足るを知る」「感謝」がない生活になってしまうということだ。
人間はとっても不完全だから、時には間違った考え方、生き方を選択してしまうこともあるだろう。
それは俺も同じことだから、許せる。
むしろ、かわいいとさえ思う。
ロボットやヒューマノイドと結婚したいわけじゃないんだから。
でもね、助言を与えられたときに、憤懣やるかたないようなむくれた表情や
自己正当化、理由付けがうんざりするのだ。
同じ時間を使うなら、どうやったら欲求不満にならずに
物質欲を抑えることができるのか。
どうしてそんなにブランドにこだわるのか。
実は自己肯定感がないんじゃないか。
そんなことを考えられるような人を一生の伴侶にしたいのだ。
星のや東京で待ち合わせることにした。
星野リゾートから、干し海苔贈答
東京駅のすぐそば、金融会社が立ち並ぶ大手町界隈に
新しい枯山水のような温泉旅館があるのをご存知ですか。
金木犀が一斉にオレンジのかわいい花をつけ、
あまーい香りを運んでくる10月初旬。
アメリカ花見月が赤い小さな実を震わせてたたずんでいる。
ことわざ「男心と秋の空」ができた理由 もともとは「男心と秋の空」です。
男性の変わりやすい心を例えていますが、
主に女性に対する愛情が変わりやすいことをさしています。
「男心と秋の空」のことわざができたのは江戸時代。
さば雲、いわし雲、うろこ雲、ひつじ雲。
高積雲や巻積雲が見やすくなる今日この頃、
ビルの立ち並ぶこの一等地に、
不思議な雰囲気の黒い建物。
エレベーターが畳という面白いつくり。
和テーストが和みを運んでくる。
客室ではなくて、玄関で靴を脱ぐ。
ホテルに慣れていると、とっても不思議な感覚に襲われる。
上がり框(かまち)と畳敷きの長い廊下の先に花が活けられている。
尾花が季節を伝える。
障子の背景から柔らかな光が心を癒す。
転生でもしたのかと思わせる既視感。
「袖振り合うも多生の縁」
お茶の間ラウンジで知り合った人同士が
仲良くなり会話が弾むこともあるとかないとか。
ソーシャルディスタンス、3蜜避けての昨今では
遠い昔の話になりつつあるのかもしれない。
直線と曲線の織り成す心地よいディテール。
ああ、ここは都心のオアシス。
畳の香り。白檀(びゃくだん)を調合した香り。
麻の葉や青海波の江戸小紋が楽しさを添える。
エレベーター内部でお部屋に鍵をかざすと
宿泊フロアーにいける。
セキュリティーも万全。
お部屋の家具のデザインも鏡のなかにテレビがあったり、
座卓の曲線と障子の優しい明かりが緊張感をほぐしてくれる。
東京駅近くにある千と千尋の神隠しの旅館といった雰囲気。
塩分のあるとろみのあるお湯にゆっくりつかると、
日ごろの疲れもストレスも淡雪のように解けていく。
そう、ここは温泉旅館なのだ。
奈月ちゃんも温泉を堪能したのかこざっぱりしている。
とってもいい感じ。
ブランドを身につけなくても十分美しい。
世界第3位のシェフによる創作フレンチが夕食。
鹿のカルパッチョ!
石を使ったアミューズブーシュ
生の栗を使ったポタージュ
松茸と和牛のパイ
かにとりんごとウニの前菜には
シェフが3年を費やしたという。
あらためて、料理は皿の上の芸術だと痛感する。
おいしい食事を堪能した彼女は、
「婚約破棄、もう少しだけ時間をください」
「どうして?」
「おいしいお料理をいただいたから」
「どういう意味?」
「ブランドは器、お料理は中身」
「旬と彩りで中身を飾りたいの」
彼女、きっと変われる。そんな気がした。
俺はまだ、彼女が好きなのかもしれない。
お風呂上りの彼女の白いうなじをチラッと見たとき、
体中を電気が走り、ずっと俺の所有物にしていたいと強く思ったんだ。
オバナ(尾花)の花言葉「悔いなき青春」、繊細な質感が涼しげなススキ(芒、薄)の「なびく心」
何かの小説に、デパートに行ってデパートごと買えるのも不幸だが、
何も買えないのも不幸だ。
という文章があった。
俺の名前は、大原 浩平 30歳。
そして、婚約者は森田 奈月 24歳。
二人は、半年前に婚約したのだが、婚約破棄しようと思う。
理由は彼女の果てることのないブランド志向である。
やれ、プラダのバッグだ。
やれ、ミキモトのネックレスだ。
エルメス、グッチ、ディオール、オーデマ・ピゲの時計、ティファニーやカルティエ
CECIL McBEE (セシルマクビー)、LOWRYS FARM (ローリーズファム)。
すばらしいブランドばかりだ。
いいものはいい。
だが、しかーし
自分の持ってもいない金を使って,必要でもない物を,
好きでもない人に感銘を与えるだけのために買う。
自分ごほうびにボーナスでエルメスのピコタンロックを379000円で買ったとしよう。
それはとても素敵なことだと思う。
俺が言いたいのは、カードや借金までして買うのはどうかといっているのだ。
こんな生活をしていたら、1億だって、あっという間になくなるだろう。
そして、一番大切な「足るを知る」「感謝」がない生活になってしまうということだ。
人間はとっても不完全だから、時には間違った考え方、生き方を選択してしまうこともあるだろう。
それは俺も同じことだから、許せる。
むしろ、かわいいとさえ思う。
ロボットやヒューマノイドと結婚したいわけじゃないんだから。
でもね、助言を与えられたときに、憤懣やるかたないようなむくれた表情や
自己正当化、理由付けがうんざりするのだ。
同じ時間を使うなら、どうやったら欲求不満にならずに
物質欲を抑えることができるのか。
どうしてそんなにブランドにこだわるのか。
実は自己肯定感がないんじゃないか。
そんなことを考えられるような人を一生の伴侶にしたいのだ。
星のや東京で待ち合わせることにした。
星野リゾートから、干し海苔贈答
東京駅のすぐそば、金融会社が立ち並ぶ大手町界隈に
新しい枯山水のような温泉旅館があるのをご存知ですか。
金木犀が一斉にオレンジのかわいい花をつけ、
あまーい香りを運んでくる10月初旬。
アメリカ花見月が赤い小さな実を震わせてたたずんでいる。
ことわざ「男心と秋の空」ができた理由 もともとは「男心と秋の空」です。
男性の変わりやすい心を例えていますが、
主に女性に対する愛情が変わりやすいことをさしています。
「男心と秋の空」のことわざができたのは江戸時代。
さば雲、いわし雲、うろこ雲、ひつじ雲。
高積雲や巻積雲が見やすくなる今日この頃、
ビルの立ち並ぶこの一等地に、
不思議な雰囲気の黒い建物。
エレベーターが畳という面白いつくり。
和テーストが和みを運んでくる。
客室ではなくて、玄関で靴を脱ぐ。
ホテルに慣れていると、とっても不思議な感覚に襲われる。
上がり框(かまち)と畳敷きの長い廊下の先に花が活けられている。
尾花が季節を伝える。
障子の背景から柔らかな光が心を癒す。
転生でもしたのかと思わせる既視感。
「袖振り合うも多生の縁」
お茶の間ラウンジで知り合った人同士が
仲良くなり会話が弾むこともあるとかないとか。
ソーシャルディスタンス、3蜜避けての昨今では
遠い昔の話になりつつあるのかもしれない。
直線と曲線の織り成す心地よいディテール。
ああ、ここは都心のオアシス。
畳の香り。白檀(びゃくだん)を調合した香り。
麻の葉や青海波の江戸小紋が楽しさを添える。
エレベーター内部でお部屋に鍵をかざすと
宿泊フロアーにいける。
セキュリティーも万全。
お部屋の家具のデザインも鏡のなかにテレビがあったり、
座卓の曲線と障子の優しい明かりが緊張感をほぐしてくれる。
東京駅近くにある千と千尋の神隠しの旅館といった雰囲気。
塩分のあるとろみのあるお湯にゆっくりつかると、
日ごろの疲れもストレスも淡雪のように解けていく。
そう、ここは温泉旅館なのだ。
奈月ちゃんも温泉を堪能したのかこざっぱりしている。
とってもいい感じ。
ブランドを身につけなくても十分美しい。
世界第3位のシェフによる創作フレンチが夕食。
鹿のカルパッチョ!
石を使ったアミューズブーシュ
生の栗を使ったポタージュ
松茸と和牛のパイ
かにとりんごとウニの前菜には
シェフが3年を費やしたという。
あらためて、料理は皿の上の芸術だと痛感する。
おいしい食事を堪能した彼女は、
「婚約破棄、もう少しだけ時間をください」
「どうして?」
「おいしいお料理をいただいたから」
「どういう意味?」
「ブランドは器、お料理は中身」
「旬と彩りで中身を飾りたいの」
彼女、きっと変われる。そんな気がした。
俺はまだ、彼女が好きなのかもしれない。
お風呂上りの彼女の白いうなじをチラッと見たとき、
体中を電気が走り、ずっと俺の所有物にしていたいと強く思ったんだ。
オバナ(尾花)の花言葉「悔いなき青春」、繊細な質感が涼しげなススキ(芒、薄)の「なびく心」
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