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燃ゆる山、秘湯の誘い

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「燃ゆる山、秘湯の誘い」

星の果実ジャムの販路拡大に成功し、領地に活気が戻り始めた。だが、私は満足していなかった。この領地をもっと豊かに、訪れる人々に愛される場所にしたいという思いが募る。

そのきっかけとなったのは、領地を巡回中に訪れた紅葉の山だった。冷たい風が吹く中、鮮やかに色づいた木々が空を埋め尽くし、赤や黄の葉が舞い散る。その絶景に息を呑むと同時に、奥へ続く細道を見つけた。

「この先には何があるのかしら?」

案内役の農夫に尋ねると、彼は驚いた表情を見せた。

「あの先は、昔から使われていない温泉があります。険しい道なので、あまり人が行かないんですよ。」

温泉と聞いて、私は胸が高鳴った。秘湯と紅葉の絶景。それを観光資源として活用できれば、領地にさらなる可能性が広がる。

翌朝、私は温泉の調査に向かった。険しい山道を進むと、谷間に湯けむりが立ち上る場所を見つけた。湯は澄んだ翡翠色で、湯面にはほんのりと立ち昇る蒸気が漂っている。近くには小さな滝もあり、その音が静寂の中で心地よく響いていた。

「これは素晴らしいわ……!」

早速、領地の職人や建築家を呼び、この秘湯を観光地化する計画を立てた。宿泊施設を整え、紅葉シーズンにはライトアップを施す。そして、訪れる人々が温泉を楽しみながら自然の美しさを満喫できるような環境を整えるつもりだった。

計画を進める中で、私は再びレオン・クロフォードに助言を求めた。彼は地元観光業にも詳しく、的確なアドバイスをくれる存在だった。

「エミリー、秘湯を観光資源にするのは良いアイデアだ。しかし、それだけでは持続可能性が足りない。他にも季節ごとのイベントや、地域ならではの体験プログラムを用意するといい。」

彼の言葉に、私はさらなる工夫を凝らした。春には山菜採りツアー、夏には夜の蛍鑑賞会、冬には雪見風呂の体験を企画した。そして、温泉の近くにある滝を「恋結びの滝」と名付け、カップル向けのスポットとしてアピールすることにした。

ついに、紅葉シーズン初日の温泉オープン日がやってきた。町の広場から秘湯までの道には案内板が立ち、露天風呂からは山々の燃えるような紅葉が一望できた。訪れた人々はその美しさに感嘆し、温泉の心地よさに笑顔を浮かべた。

その中には、レオンの姿もあった。彼はいつものように冷静な表情で温泉を眺めていたが、私が話しかけると、珍しく満足そうな笑みを浮かべた。

「君は本当にすごいな、エミリー。秘湯を見つけ、ここまで魅力的に仕上げるとは思っていなかったよ。」

「そんな……あなたが助言してくださったおかげです。」

私は恥ずかしさを隠すように笑った。だが、彼の言葉は私の心に温かさをもたらし、この地での挑戦が報われたと感じた。

その夜、星空の下で露天風呂に浸かりながら、一人静かに考えた。私はこの領地をより良くするために努力を重ねてきたが、それは同時にレオンへの想いを形にするためでもあった。

彼に認められる自分でありたい。その思いが、私を突き動かしているのだ。

「もっと先へ進もう。この地を、誰もが訪れたくなる場所にするために。」

秘湯の湯けむりが月明かりに照らされ、幻想的に揺れていた。その光景は、これからの未来への希望を象徴しているように思えた。









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