名言

成功するとか失敗するとか僕には関係ない。それをやってみる事の方が大事。

成功するとか失敗するとか僕には関係ない。それをやってみる事の方が大事。

（大谷翔平）


挑戦の軌跡

夕焼けが校舎をオレンジ色に染め上げる頃、体育館の片隅で、優斗（ゆうと）は一人、黙々とバスケットボールをドリブルしていた。体育館に響くボールの音だけが、静かな空間にリズムを刻んでいる。

優斗は高校二年生。バスケットボール部に所属しているが、決して目立つ選手ではなかった。身長は平均より少し低く、特別運動神経が良いわけでもない。それでも、優斗はバスケットボールが好きだった。いや、好きというよりも、挑戦すること自体に、言い知れぬ喜びを感じていた。

「成功するとか失敗するとか僕には関係ない。それをやってみる事の方が大事。」

それは、優斗が尊敬するバスケ部の顧問、佐々木（ささき）先生から教わった言葉だった。佐々木先生は、かつて実業団で活躍した経歴を持つ、穏やかで熱心な指導者だった。

「バスケットボールは、人生の縮図だ。」佐々木先生はよく言った。「上手くいかないことの方が多い。でも、そこで立ち止まってしまうのか、それとも挑戦し続けるのか。それが、その人の成長を決める。」

優斗は、その言葉を胸に、毎日練習に励んでいた。他の部員たちが休憩している時間も、自主練習を欠かさなかった。新しいドリブルの技を練習したり、シュートフォームを研究したり。常に、新しいことに挑戦していた。

優斗の武器は、諦めない心だった。どんなに難しい技でも、何度も何度も繰り返し練習することで、いつかは必ずできるようになると信じていた。失敗を恐れず、常に挑戦し続ける。それが、優斗の強さだった。

ある日、練習後、優斗は佐々木先生に呼び止められた。

「優斗、最近、新しいドリブルに挑戦しているそうだな。」

「はい、先生。なかなか上手くいかないんですが…」

「上手くいかないのは、当たり前だ。」佐々木先生は優しく微笑んだ。「最初から上手くいくことなんて、ほとんどない。大切なのは、そこで諦めないことだ。」

佐々木先生は、続けて言った。

「お前は、失敗を恐れない。それは、素晴らしいことだ。だが、ただ挑戦するだけでは、成長は遅い。なぜ失敗したのか、どうすれば改善できるのか。それを考えることが、もっとも重要だ。」

佐々木先生は、優斗にノートとペンを渡した。

「練習日誌をつけろ。その日に練習したこと、上手くいったこと、上手くいかなかったこと。全て記録するんだ。そして、なぜ上手くいかなかったのか、どうすれば改善できるのか、自分なりに分析するんだ。」

優斗は、その日から練習日誌をつけるようになった。最初は戸惑ったが、続けるうちに、自分の弱点や改善点が見えてくるようになった。そして、練習方法も工夫するようになった。

ある日、優斗は新しいドリブルの練習中に、ふと、あることに気づいた。今まで意識していなかった、重心の移動とボールのコントロールの関係性。それに気づいたことで、ドリブルの成功率が格段に上がった。

「できた…！」

優斗は、自分の成長を実感し、胸が熱くなった。失敗を分析し、改善することで、壁を乗り越えることができたのだ。

その後も、優斗は練習日誌をつけ続け、様々なことに挑戦した。新しいシュートフォーム、パスの精度、チームプレイ。一つ一つ、課題を見つけ、克服していく。その過程で、技術だけでなく、考える力や分析力も身につけていった。

そして、インターハイの予選が始まった。優斗は、スタメンとして試合に出場する機会が増えた。持ち前の諦めない心と、分析力を活かし、チームに貢献した。

結果、優斗のチームは、県大会で優勝し、インターハイへの出場を決めた。インターハイでは、強豪校との対戦を通して、さらに多くのことを学んだ。結果はベスト16だったが、優斗は、大きな手応えを感じていた。

大会後、優斗は佐々木先生に呼ばれた。

「優斗、よくやった。お前は、本当に大きく成長した。」佐々木先生は、優斗の成長を心から喜んでいた。「それは、お前が、挑戦し続けたからだ。」

優斗は、佐々木先生の言葉に、深く頷いた。インターハイという舞台を経験し、さらに高いレベルの選手たちと対戦することで、自分の課題も明確になった。まだまだ、挑戦できることがある。

「先生、ありがとうございます。でも、これで終わりではありません。もっと、上を目指します。」

優斗の言葉に、佐々木先生は満足そうに微笑んだ。

「そうだ。それでこそ、お前だ。『成功するとか失敗するとか僕には関係ない。それをやってみる事の方が大事。』その気持ちを忘れずに、これからも挑戦し続けてほしい。」

優斗は、夕焼け空を見上げた。空には、様々な色の雲が、力強く広がっていた。優斗の心には、新たな目標が燃え上がっていた。もっと上手くなりたい。もっとチームに貢献したい。そして、もっと、もっと、高いレベルで、自分のバスケットボールを表現したい。

優斗の挑戦は、まだ始まったばかりだ。挑戦の軌跡は、これからも続いていく。そして、その軌跡は、優斗自身を、より高みへと導いてくれるだろう。