名言

その日に起きた良かったこと、悪かったこと。自分が感じて「次にこういうことをやろう」という内容を、iPadへ書き込むようにしています。

その日に起きた良かったこと、悪かったこと。自分が感じて「次にこういうことをやろう」という内容を、iPadへ書き込むようにしています。

大谷翔平


一日の記録

坂口拓海（さかぐちたくみ）は、夜になるとiPadを開き、その日に起きたことを書き込むのが習慣だった。彼がこの日記をつけ始めたのは3か月前、仕事でミスが重なり、自信を失っていた頃だった。

「何か変えなきゃいけない。」

そう思い立ち、ネットで見つけた「振り返り日記」の方法を試してみることにした。それは、毎日良かったことと悪かったことを一つずつ書き、そのうえで「次にどうするか」を考えるという単純なルールだった。

その日、拓海が書き始めたのは夜10時だった。

良かったこと
「上司に褒められた。」
今日はプレゼンの資料を提出した際、上司から「細かいところまでよく考えられているね」と言われた。今まで褒められることが少なかっただけに、意外な気持ちとともに、少し誇らしかった。

次にどうするか
「次回も細かい部分まで工夫する。ただ、もっと視覚的に見やすいデザインを心がけたい。」

拓海はその瞬間を思い出しながら、iPadの画面に文字を打ち込んだ。

悪かったこと
「同僚の頼みを断れなかった。」
昼休み、急に同僚の清水から「この資料、手伝ってくれない？」と言われた。断る理由が思いつかず、結局手伝ったが、そのせいで自分の作業が後回しになり、終業時間を過ぎても仕事が終わらなかった。

次にどうするか
「急な頼みごとに対して、自分のスケジュールを優先して断る勇気を持つ。」

これを書きながら、拓海は自分が言いたいことを言えない性格であることを改めて感じた。それでも、こうして「次にどうするか」を考えることで、少しずつ変われる気がしていた。

翌日、拓海は昼休みに清水に声をかけられた。
「昨日はありがとう。実は、今日も手伝ってほしいんだけど……。」

拓海は一瞬迷ったが、昨夜書いた日記を思い出した。
「ごめん、今日は自分の仕事が詰まってるんだ。」

言葉に出すのは簡単ではなかったが、清水は意外にもあっさりと「そっか、じゃあ自分でやるよ」と答えた。その瞬間、拓海は自分がほんの少し成長したことを実感した。

夜、再びiPadを開き、その日を振り返る。

良かったこと
「同僚の頼みを断ることができた。」
自分のスケジュールを優先することで、無理なく作業を進められた。少し自己肯定感が高まった。

次にどうするか
「相手を傷つけない言い回しをもっと考える。」

こうして日々を積み重ねていくうちに、拓海は少しずつ変わっていった。iPadに書き込まれた「次にどうするか」は、単なる文章ではなく、彼の成長の証だった。

半年後、彼は振り返り日記を通して得たことを自分なりにまとめ、ノートアプリに書き込んだ。

「人は、一日一日、小さなことを変えるだけで成長できる。大切なのは、それを忘れずに続けることだ。」

それは、自分を励ます言葉であり、これからも変わり続けようとする決意でもあった。拓海はiPadを閉じ、明日もまた新しいページを開く準備を整えた。