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自分がこう投げたい、打ちたい、何勝したいとか。それを常に心に抱いてプレイしているのは一番楽しい。一番小さい目標はそこです。
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自分がこう投げたい、打ちたい、何勝したいとか。それを常に心に抱いてプレイしているのは一番楽しい。一番小さい目標はそこです。
(大谷翔平)
目標の形
中学生の野球選手・川村陽斗(かわむらはると)は、小柄ながらピッチングセンスに優れており、エースとしてチームを牽引していた。だが、陽斗には一つ弱点があった。それは、目標を明確に持てないことだった。
監督から「お前の目標は何だ?」と聞かれるたび、陽斗は「とりあえず試合に勝ちたいです」と答えるだけだった。それ以上のビジョンが浮かばなかったのだ。
ある日の練習後、陽斗はグラウンドでキャッチボールをしているキャプテンの立花翔太(たちばなしょうた)に声をかけた。翔太はチーム一の努力家で、練習にも目標にも妥協しないことで有名だった。
「翔太さん、目標ってどうやって決めるんですか?」
翔太はボールを受け取ると、不思議そうに首をかしげた。「どうやってって、普通に自分のやりたいことを考えるだけじゃないの?」
「でも、そんなの簡単じゃないですよ。俺、やりたいことなんて漠然としてて……。」
翔太は少し考えてから答えた。「じゃあ、今の自分に足りないものを一つずつ探してみるのはどうだ?俺は昔、三振ばっかりだった頃に『次の試合で絶対にヒット一本打つ』って小さな目標を立ててた。それが達成できたら次は『次の試合では二塁打を打つ』とか、徐々にステップアップしていったんだ。」
「小さい目標を立てる……。」
翔太の言葉に陽斗は考え込んだ。自分に足りないもの、やりたいこと。頭の中を整理し始めると、自然と一つの思いが浮かんできた。
「俺、もっとスライダーを上手く投げられるようになりたいです。」
「それだよ!」翔太は満面の笑みを浮かべた。「そうやって自分がこうしたいって思うことが、目標の第一歩だ。」
次の日から、陽斗はスライダーの練習に集中した。ボールの握り方を変えてみたり、腕の振りを試行錯誤したりと、あらゆる方法を試した。もちろん、うまくいかないことも多かったが、そのたびに陽斗は自分の中で「もっと良くなりたい」という気持ちを強くしていった。
そして迎えた地区大会の準決勝。陽斗は先発投手としてマウンドに上がった。試合は接戦で、6回表を終えた時点で1-1の同点だった。
7回表、相手の主力バッターが打席に立つ。彼は大会屈指のホームランバッターであり、陽斗にとっても大きな壁だった。
陽斗は心の中でつぶやいた。「俺がこう投げたいって思って練習してきたスライダーで、このバッターを抑える。」
キャッチャーがサインを出す。陽斗はそれを確認し、セットポジションに入る。そして、思い切り腕を振り抜いた。
スライダーはバッターの手元で鋭く曲がり、見事空振りを奪った。スタンドから歓声が上がる。陽斗の顔には自然と笑みが浮かんだ。
試合後、陽斗は翔太に報告した。「今日、スライダーで三振取れました!」
翔太はうなずきながら、「それで、次の目標は?」と尋ねた。
陽斗は少し考えてから答えた。「次は、ランナーがいる場面でスライダーをもっと自信を持って投げられるようになりたいです。」
翔太は笑顔で答えた。「いい目標だな。その調子でどんどん進んでいけよ。」
陽斗は自分の中で、初めて「目標を持つ楽しさ」を感じていた。そして、それを常に心に抱きながらプレイすることが、自分にとって一番大切なことだと気づいたのだった。
(大谷翔平)
目標の形
中学生の野球選手・川村陽斗(かわむらはると)は、小柄ながらピッチングセンスに優れており、エースとしてチームを牽引していた。だが、陽斗には一つ弱点があった。それは、目標を明確に持てないことだった。
監督から「お前の目標は何だ?」と聞かれるたび、陽斗は「とりあえず試合に勝ちたいです」と答えるだけだった。それ以上のビジョンが浮かばなかったのだ。
ある日の練習後、陽斗はグラウンドでキャッチボールをしているキャプテンの立花翔太(たちばなしょうた)に声をかけた。翔太はチーム一の努力家で、練習にも目標にも妥協しないことで有名だった。
「翔太さん、目標ってどうやって決めるんですか?」
翔太はボールを受け取ると、不思議そうに首をかしげた。「どうやってって、普通に自分のやりたいことを考えるだけじゃないの?」
「でも、そんなの簡単じゃないですよ。俺、やりたいことなんて漠然としてて……。」
翔太は少し考えてから答えた。「じゃあ、今の自分に足りないものを一つずつ探してみるのはどうだ?俺は昔、三振ばっかりだった頃に『次の試合で絶対にヒット一本打つ』って小さな目標を立ててた。それが達成できたら次は『次の試合では二塁打を打つ』とか、徐々にステップアップしていったんだ。」
「小さい目標を立てる……。」
翔太の言葉に陽斗は考え込んだ。自分に足りないもの、やりたいこと。頭の中を整理し始めると、自然と一つの思いが浮かんできた。
「俺、もっとスライダーを上手く投げられるようになりたいです。」
「それだよ!」翔太は満面の笑みを浮かべた。「そうやって自分がこうしたいって思うことが、目標の第一歩だ。」
次の日から、陽斗はスライダーの練習に集中した。ボールの握り方を変えてみたり、腕の振りを試行錯誤したりと、あらゆる方法を試した。もちろん、うまくいかないことも多かったが、そのたびに陽斗は自分の中で「もっと良くなりたい」という気持ちを強くしていった。
そして迎えた地区大会の準決勝。陽斗は先発投手としてマウンドに上がった。試合は接戦で、6回表を終えた時点で1-1の同点だった。
7回表、相手の主力バッターが打席に立つ。彼は大会屈指のホームランバッターであり、陽斗にとっても大きな壁だった。
陽斗は心の中でつぶやいた。「俺がこう投げたいって思って練習してきたスライダーで、このバッターを抑える。」
キャッチャーがサインを出す。陽斗はそれを確認し、セットポジションに入る。そして、思い切り腕を振り抜いた。
スライダーはバッターの手元で鋭く曲がり、見事空振りを奪った。スタンドから歓声が上がる。陽斗の顔には自然と笑みが浮かんだ。
試合後、陽斗は翔太に報告した。「今日、スライダーで三振取れました!」
翔太はうなずきながら、「それで、次の目標は?」と尋ねた。
陽斗は少し考えてから答えた。「次は、ランナーがいる場面でスライダーをもっと自信を持って投げられるようになりたいです。」
翔太は笑顔で答えた。「いい目標だな。その調子でどんどん進んでいけよ。」
陽斗は自分の中で、初めて「目標を持つ楽しさ」を感じていた。そして、それを常に心に抱きながらプレイすることが、自分にとって一番大切なことだと気づいたのだった。
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