名言

自己満足の勝負

人に評価される職業なのでもちろん数字や成績も大事だけど、そのためにはやりません。
ある意味、自己満足のためにやっています。
僕が、「そういうプレーヤーになりたい」「そこのレベルに行きたい」「そういう人たちと勝負してみたい」そのためにやっているんです。

大谷翔平


「自己満足の勝負」

プロスポーツの世界は、常に数字と成績に追われる場所だ。勝敗がすべてを決める厳しい現実の中で、僕――坂本大翔（さかもと ひろと）はプロサッカー選手としてプレーを続けている。

「大翔、お前、また得点ランキングが落ちてるぞ！」
試合後のロッカールームで、チームメイトの真司が声をかけてきた。彼はキャプテンとしての責任感から、いつも周囲に気を配っている。

「わかってるよ。でも、俺は点を取るだけがプレーだと思ってないんだ。」
軽く笑って返すと、真司は少し眉をひそめた。

「お前のそのスタンス、悪くないけどな。でも評価されるのは数字だぞ？監督もスポンサーも、結果を求めてるんだ。」

真司の言葉は正しい。プロの世界では、点を取る選手が賞賛され、結果を残せない選手は淘汰される。それでも、僕はただ数字や評価のためにプレーをしているわけじゃない。

子どもの頃の夢
サッカーを始めたのは、小学校2年生のときだった。近所の少年団に入ったのは、友達に誘われたからだ。最初は遊び半分だったけれど、ボールを追いかけるうちに心から楽しめるものだと気づいた。

中学生の頃には、地元の大会で活躍するようになり、地域でも注目される選手になった。だけど、僕には一つだけ他の選手と違うところがあった。

それは「勝利そのもの」よりも、「自分がどれだけ満足のいくプレーをできたか」が大事だったことだ。

ある試合でチームが大勝したとき、僕は自分のプレーに満足できずに悔し涙を流した。逆に、負けた試合でも、自分のパスが通った瞬間に喜びを感じることもあった。

プロの現実
プロに入ったとき、そんな考え方は甘いと言われた。

「坂本、お前のプレー、確かにうまいけどな、もっとゴールを狙えよ。チームに貢献することが最優先だぞ。」

監督からも先輩からも、数字に対する意識を求められた。それがプロの宿命だと理解している。でも、僕はどこか割り切れなかった。

「ゴールだけがサッカーじゃない。」

試合で一瞬の隙を突くパス、相手をかわして作るスペース、そのすべてが僕にとってはゴールと同じくらいの価値を持っている。観客やメディアに評価されなくても、自分が納得できるプレーこそが、僕にとってのプロとしての矜持だった。

自己満足のプレー
ある日、僕の価値観を変える出来事が起きた。

試合終了間際、1点差でリードしている状況。僕はボールを持ち、ゴールを狙える位置にいた。だが、ふと視界の端に見えたチームメイトにボールを送ることを選んだ。結果、そのアシストで追加点が決まり、試合は勝利に終わった。

試合後、監督からは叱責された。

「なぜお前がシュートを打たなかったんだ！あの場面では、自分で決めるべきだっただろう！」

その言葉に反論するつもりはなかった。監督の考えも正しい。それでも、僕はその試合のプレーに満足していた。

「俺は、自分が理想とするプレーを選んだだけです。」

そう答える僕に、監督は呆れたように首を振ったが、それ以上は何も言わなかった。

本当の挑戦
僕はサッカーを通じて、自分の可能性を試しているだけだ。チームの勝利も大事だし、ファンの声援にも応えたい。だけど、何よりも僕が目指すのは、「自分が満足できる選手であること」だ。

「坂本、大丈夫か？」
試合後、キャプテンの真司が肩を叩いてきた。

「うん、全然平気。」
僕は笑って答えた。今日もゴールを決められなかったけれど、自分の中で満足のいくプレーができたからだ。

「なんかお前、いつも楽しそうだよな。」
真司がそう言ってくれたのは、少し意外だった。

「だって俺、自分がどうプレーしたいかだけを考えてるから。」

結末
結果を追い求めるのがプロとして当然だというのはわかっている。それでも、僕にとっては自分が心から納得できるプレーを続けることが、何よりも大事だ。

だから、僕はこれからも「自己満足」のためにプレーを続ける。自分が憧れる選手と勝負できる日を夢見て、そのときに胸を張れる自分でいるために。