名言

「毎日何分間」とか「毎日何本振っていく」

「毎日バットを振る」というよりは、
じゃあ「毎日何分間」とか「毎日何本振っていく」とか
そのくらい明確じゃないとちゃんとこなせないんじゃないかなと思います。

大谷翔平


毎日何本振るのか

健太は中学野球部の一年生だ。目標は、次の夏の大会でレギュラーを勝ち取ること。だが、練習に身が入らない日が続いていた。監督からも「基礎をしっかりやれ」と言われるものの、ただ「毎日バットを振る」と漠然と言われても、どこかやる気が起きなかった。

「毎日振ってりゃうまくなるのかよ…」

練習の帰り道、公園で野球部のエースでキャプテンの涼太がバッティング練習をしているのを見つけた。夕日が差し込む中、涼太は黙々とバットを振り続けている。

「お疲れ、涼太先輩。こんな時間まで練習ですか？」

「おう、健太か。まあな。お前、最近あんまり打ててないだろ。どうだ、少し練習していくか？」

健太は気まずそうに笑いながらバットを握った。

「毎日振ってるんですけどね…なんか上達してる感じがしなくて」

涼太は笑って、手元のノートを健太に見せた。ページには日付ごとに数字が書かれている。

「これ、何ですか？」

「俺のバットスイングの記録だよ。毎日500本振るって決めてて、何本振ったかちゃんと数えてるんだ。それだけじゃなくて、どんなことを意識して振ったかもメモしてる」

「500本ですか？ 毎日そんなに振ってるんですか！？」

「そうだよ。でもな、ただ振るだけじゃ意味がない。フォームを意識して、一球一球を試合のつもりでやる。そうじゃなきゃ、時間の無駄になるからな」

涼太の言葉に健太は目を開かれた思いがした。毎日漠然と振るのではなく、明確な目標と数値を持って取り組むこと。それが涼太の強さの秘密なのだと気づいた。

翌日から、健太は「毎日500本振る」という目標を自分にも課した。ノートも真似して買い、そこに毎日の練習記録を書き始めた。最初は500本も振るのがしんどく、腕もパンパンになった。だが、涼太のアドバイスを思い出しながらフォームを意識し続けた。

「バットを振るだけじゃなくて、どんな球が来たつもりで振るのかを考えるんだ。アウトコースに来るスライダーを狙うのか、それとも甘いストレートを打ち返すのか。頭を使わないとただの作業で終わるぞ」

練習を重ねるうちに、健太は自分のスイングに変化を感じ始めた。体の使い方がわかってきて、無駄な動きが減り、スイングスピードも上がった。やがて、練習試合で快音を響かせるようになり、監督からも褒められるようになった。

「いいぞ、健太。この調子なら、レギュラーも見えてくるんじゃないか？」

その言葉が健太の心に火をつけた。もっと上達したいという思いが、さらに彼を突き動かした。そして次第に、健太はただの努力家ではなく、試合を左右する選手としてチームの信頼を得ていくようになった。

シーズンが終わったあと、健太のノートには「毎日500本」の記録がぎっしりと書き込まれていた。そのページの一つ一つが、彼の成長の証だった。

涼太はそんな健太を見て微笑みながら言った。

「お前、最初は全然だったけど、続ければここまで変わるんだな。やっぱり何事も目標をはっきりさせるのが大事だってことだな」

健太は頷きながら、またバットを握った。

「これからも続けます。毎日振り続けて、もっと上を目指します！」

目標を明確にすること。それは、ただ努力をするだけではたどり着けない高みへの鍵だった。