名言

目標があれば、頑張れると思います。

目標があれば、頑張れると思います。

大谷翔平


「少年の目標」

拓真は、小学三年生で初めて野球を始めた。入部のきっかけは特別なものではなく、友達がみんな野球をしていたからだった。最初のうちは、ただチームのみんなと同じユニフォームを着て、ボールを追いかけるのが楽しかった。しかし、練習を重ねるうちに、チーム内でも目立つ選手が現れ始め、彼らに自分も負けたくないと思うようになった。

ある日、拓真はコーチに言われた。

「拓真、お前にはまだ目標がないんだな。だから練習の本気度が足りない」

その言葉に心を突き動かされた。拓真はその夜、自分にとって「目標」とは何なのかを考え始めた。甲子園に出場することなのか、それともプロ野球選手になることなのか。野球をする理由が友達と遊ぶためだけではなくなっていたことに気づいた。

翌日から、拓真は少しずつ目標を持つようになった。「レギュラーになりたい」と思い、そのために何をすべきかを考え始めた。守備やバッティングの練習に力を入れ、毎日一生懸命に取り組んだ。だが、チームの中で目立つ存在になるのは簡単なことではなかった。レギュラーを争う仲間たちは皆、それぞれの目標を持って努力していた。

ある日、拓真が特に憧れていたチームのエース、優斗が拓真に言った。

「お前、本当にレギュラーになりたいと思ってる？その割にはちょっと甘い気がするぞ」

優斗の言葉は冷たかったが、拓真はその指摘を素直に受け止めた。彼は自分に足りないのは、ただ努力するだけではなく「どのような選手になりたいか」という明確なイメージだと感じた。

それからの拓真は、プロ野球選手の試合映像を見て、自分が目指す選手像を少しずつ明確にしていった。プロ選手のフォームや動き、試合中の集中力。自分もそんな風にプレーできるようになりたいと強く思った。そして、具体的な目標ができたことで、練習に取り組む姿勢が変わり始めた。

週末、チームの練習試合があった。拓真はベンチから試合を見つめ、自分が試合に出るイメージを膨らませていた。そしてチャンスが巡ってきた。五回裏、監督が拓真を代打で送り出すことにしたのだ。彼は自分のバットを握りしめ、深呼吸をして打席に向かった。

ピッチャーの投げた速球が、まるでスローモーションのように見えた。集中した瞬間、拓真は全力でスイングを振り切った。ボールがバットに当たり、真っ直ぐ外野へと飛んでいった。彼の打ったボールは見事なヒットとなり、観客席から歓声が湧き上がった。

試合後、拓真は嬉しさで胸がいっぱいだった。そして、彼の姿を見ていた優斗が近づいてきて、ポンと肩を叩きながら笑顔で言った。

「やるじゃん、拓真。目標を持ってやってるって感じがするよ」

拓真はその言葉に少し照れながらも、自分が一歩成長できたことを実感した。その日以来、彼はただ試合で活躍することだけでなく、より高い目標を追い求めるようになった。そして、いつの日かチームの中心となる選手になることを夢見て、さらに練習に打ち込んでいく。

「目標があれば、頑張れると思う」と、拓真は自分に言い聞かせるように呟いた。