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春秋花壇

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楽しみはしばしばやって来る訪問者であるが、苦しみは無残にも我々にまとわりつく

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楽しみはしばしばやって来る訪問者であるが、苦しみは無残にも我々にまとわりつく。

ジョン・キーツ「エンディミオン」


訪問者と影

1.

雨が静かに降り続く薄暗い午後、リサは部屋の窓辺に座り、外をぼんやりと見つめていた。彼女の家は街のはずれにあり、訪れる人も少ない。静けさに包まれたこの家には、訪問者もめったに来ない。しかし、その静寂が彼女には心地よかった。日常の雑踏から逃れ、自分だけの時間を過ごせるこの場所が、リサの唯一の安らぎだった。

だが、その静かな生活に、しばしば突然の訪問者がやってくることがあった。彼女が心から楽しめる小さな喜びが、まるで不意に訪れる春の日差しのように、彼女の生活に輝きを与えるのだ。リサはその瞬間を心待ちにし、訪問者がもたらすささやかな幸せを大切にしていた。

しかし、楽しみの訪問者が去ると、すぐに影が忍び寄ってくる。まるでその空白を埋めるかのように、苦しみが彼女の心にまとわりついて離れない。それは一瞬の楽しみがもたらす輝きを暗い闇に包み込み、リサを深い孤独の中に引き戻してしまうのだった。

2.

リサはかつて、人生に対して楽観的だった。若い頃は、未来に無限の可能性を信じ、どんな困難も乗り越えられると信じていた。しかし、数年前に彼女の夫であるタクミが突然亡くなってから、リサの世界は一変した。彼の死は、彼女にとって耐え難い苦しみをもたらし、その影は彼女の心に深く刻まれた。

タクミと過ごした日々は、リサにとってかけがえのない宝物だった。彼と一緒に笑い、泣き、喜びを分かち合った記憶は、彼女の心を暖かく包み込む。しかし、その思い出もまた、彼の死という現実と共に苦しみを伴うようになっていた。

リサは、タクミの死後、長い間自分を責め続けた。なぜあの時、もっと彼を助けられなかったのか。なぜ、あの最後の瞬間に、彼に寄り添うことができなかったのか。そうした後悔と自責の念が、彼女の心を締め付け、苦しみが絶え間なく彼女を苛む。

3.

それでも、時折訪れる小さな楽しみが、リサの心に安らぎをもたらすこともあった。例えば、彼女が愛したガーデニングの時間。花壇に咲く色とりどりの花たちは、まるで彼女に微笑みかけるように、鮮やかな色彩で彼女の心を癒してくれた。特に春になると、チューリップが咲き誇り、その美しさが彼女の心を少しでも軽くしてくれる。

しかし、その楽しみも長くは続かない。チューリップが枯れると、再び彼女の心には影が忍び寄ってくる。彼女はその影から逃れることができず、苦しみが再び彼女の心を占領するのを感じていた。

リサは自分がどうしてこんなにも苦しみに囚われてしまったのか、理解できなかった。彼女は自分の中にある楽しみを大切にしようと努力していたが、それでも苦しみは無慈悲に彼女にまとわりつき、決して離れることがなかった。

4.

ある日、リサは長い間引き出しの中にしまっていたタクミの日記を取り出した。彼が生前に書いていたもので、彼の考えや感じたことが綴られていた。リサはその日記を読みながら、タクミが自分に伝えたかったメッセージを探し求めた。

日記の最後のページには、タクミが書いた一文があった。

「楽しみはしばしばやって来る訪問者であるが、苦しみは無残にも我々にまとわりつく。それでも、僕は楽しみを選ぶ。なぜなら、それが僕を生かしてくれるから。」

その言葉を読んだリサは、涙が止まらなかった。タクミもまた、苦しみと戦いながら、楽しみを見つけ出そうとしていたのだ。彼が選んだのは、楽しみを信じることだった。リサは、彼の言葉に励まされ、少しずつでも前に進む勇気を見つけることができた。

5.

リサは、タクミが伝えたかったメッセージを胸に刻み、再び庭に足を踏み入れた。彼女は花を育てることで、タクミが自分の中に残してくれた楽しみを大切にしようと思った。苦しみが彼女を取り囲んでも、それを乗り越える力を持つ楽しみが、いつも彼女の心の中にあると信じた。

季節が移り変わり、庭には再び美しい花々が咲き誇った。リサはその中で、タクミと過ごした日々を思い出しながら、楽しみを訪問者として迎え入れることができるようになっていた。そして、その訪問者がもたらす喜びが、彼女の心に灯り続ける限り、苦しみもまた乗り越えることができると信じた。

夜空に星が輝く中で、リサは微笑みながら、自分自身に言い聞かせた。

「苦しみがどんなにまとわりついても、私は楽しみを選ぶ。なぜなら、それが私を生かしてくれるから。」

終わり








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