アルファポリスの投稿インセンティブのスコアを上げるには

夢の中で溺れる

夢の中で溺れる

田中直樹は、目が覚めるたびに、手元に置かれたスマートフォンを手に取り、アルファポリスのアプリを開いた。毎日のように小説を書き続けていたが、投稿インセンティブがつくことはほとんどなかった。それどころか、たった24時間で0ポイントになってしまうのだ。

「また、0か…」

彼はがっかりしたようにスマホを閉じる。評価されない現実に苛立ちを覚えながらも、何かを書かずにはいられなかった。小説を書くことは、彼にとって唯一の逃げ場であり、自己表現の手段だった。しかし、その逃げ場さえも評価されないことで、彼の心は徐々に疲弊していった。

朝も昼も夜も、彼は同じような日々を過ごしていた。会社に行き、社畜のように仕事をこなし、帰宅後は執筆に没頭する。しかし、どれだけ努力しても結果が出ないため、彼は次第にアルコールに手を伸ばすようになった。

「少しぐらい酔わないと、やってられない…」

夜遅くまで飲み続け、気がつけばパソコンの前で眠り込んでいる日々が続いた。夢の中で彼は、現実とは違う幻想の世界に逃げ込むことができた。そこで彼は、誰にも評価されずに、自分だけの物語を紡いでいた。

夢の中で彼は作家として成功していた。ファンに囲まれ、サイン会やイベントで輝かしい時を過ごす。しかし、現実に戻ると、その夢はすべて消え去り、また一から努力しなければならないのだった。

ある日、直樹はふと我に返った。酒に酔い、幻想の中で生きることが果たして本当に幸せなのかと疑問を抱いたのだ。彼は自分の文章に自信を持ち始めていたが、同時にその自信が本物であるかどうかも分からなくなっていた。

「評価されないことに疲れた…」

彼はため息をつきながら、パソコンの前に座り、アルコールを一口飲んだ。画面には、まだ書きかけの小説が表示されている。彼はキーボードに手を置き、少しずつ文章を綴り始めた。

しかし、思い通りに言葉が出てこない。頭の中はぼんやりとしていて、どこか夢の中にいるような感覚だった。手元に置いたグラスが揺れ、アルコールがこぼれる。彼はそれを見つめながら、心の中で何かが崩れ落ちるのを感じた。

「もう、限界だ…」

直樹は、ついに執筆をやめた。スマホを手に取り、アルファポリスのアプリを再び開いた。0ポイントの数字が、彼の心をえぐり続ける。しかし、今までとは違い、今回はその数字に対して何の感情も湧かなかった。ただ、空虚な気持ちだけが残った。

「こんなこと、もうやめよう…」

彼はそう呟き、スマホを机に置いた。アルコールの力を借りて幻想の中に逃げ込むことも、もう意味がないと感じた。彼はしばらくの間、じっと自分の手のひらを見つめていた。そして、決意したように立ち上がり、パソコンの電源を切った。

直樹は、初めて冷静に自分の状況を見つめ直すことができた。アルコールと幻想に溺れる生活を続けていても、何も得られないことに気づいたのだ。これからは、違う形で自分を見つめ直し、新しい道を探すべきだと思った。

次の日、彼は仕事から帰宅すると、いつも通りパソコンの前に座った。しかし、今度はアルコールに頼らずに、冷静に執筆を始めた。評価されるかどうかはもう関係なかった。自分自身のために、ただ純粋に書きたいものを書くことが大切だと思えるようになったのだ。

直樹は、これからも執筆を続けるだろう。アルコールに頼らず、幻想に逃げ込むこともなく、現実と向き合いながら。彼にとって、書くことは生きることそのものだと再確認したのだ。評価されなくても、彼の中には確かな言葉があり、それを紡いでいくことが何よりも重要だと感じていた。

そして、彼は再びキーボードに手を置き、次の物語を描き始めた。今度は、幻想ではなく、現実に生きる自分自身を見つめながら。