手のひら返しのざまぁ

黄金の稲穂の中で

黄金の稲穂の中で

風がサーっと吹き抜け、黄金の稲穂が一斉に揺れる。太陽の光がそれを照らし、田畑はまるで金色の海のように輝いていた。小鳥たちが楽しげにさえずり、その音がどこか優しい日常を彩っている。

ここは、祖父が残してくれた土地。私はこの広い敷地に小さな家を建て、毎日を穏やかに過ごしていた。祖父の遺産は膨大だったが、派手に使うことはなかった。むしろ、自然と共に暮らすスローライフを選び、自分のペースで日々を積み重ねていた。

「おじいちゃん、ありがとう。」

そう心の中でつぶやきながら、私はこの幸せな瞬間をかみしめていた。もし、あのつらい日々がなければ、この今の幸せを感じることはなかったかもしれない。

かつて、私はパワハラ夫と嫁いびりの姑に囲まれ、まるで奴隷のような生活を送っていた。家事に追われ、文句を言われ、愛情の欠片も感じることなく、ただ耐えていた日々。彼らは私を無視し、利用し、最後には祖父の遺産目当てに手のひらを返した。

だが、私はその苦しみを乗り越え、ついに自分の幸せを掴んだ。そして今、私はその恩を祖父に返すべく、新しい道を歩んでいる。

福祉系の大学に通っている私の夢は、ケアマネ―ジャーになることだ。祖父が私を助けてくれたように、今度は私が誰かを助けたい。特に、老人や障害者を支えるために、自分の経験を生かしたいと考えている。

「おじいちゃん、私、ちゃんと恩返しできるよね？」

そう思うと、自然と笑みがこぼれた。大学では毎日、福祉について学び、実習に励んでいる。ケアマネージャーになるためには多くの知識やスキルが必要だが、それでもやりがいを感じている。この仕事を通じて、祖父が私に残してくれたものを社会に還元できるのだと思うと、胸がいっぱいになる。

また、毎月、私が育った養護施設にも顔を出している。そこでは子供たちが待っていてくれる。施設で育ったからこそ、子供たちが抱える孤独や不安が痛いほどわかる。だから、私は彼らと一緒に時間を過ごすことを何より大切にしている。

「さつきお姉ちゃん、また来てくれたんだ！」

無邪気な声に包まれながら、私は笑顔で子供たちと遊んだり、一緒にお菓子を作ったりしている。その瞬間が、私にとっても癒しとなっていた。自分が愛され、そして愛することで、人はこんなにも心が満たされるのだと実感する。

あのつらい結婚生活があったからこそ、私は今、心からの平安を味わえているのかもしれない。耐えた日々があったからこそ、今の幸福がどれほど貴重なものかがよく分かる。苦労や逆境がなければ、この幸せは決して実感できなかっただろう。

それに比べて、あの夫と姑はどうしているだろう。祖父の遺産に目がくらんで手のひらを返した彼らは、私が去った後、元の冷え切った関係に戻っているのだろうか。彼らのことを考えると、かつての怒りは薄れて、ただ哀れみの気持ちだけが残った。

今はもう、そんな過去に執着することはない。私には新しい生活があり、愛すべき人たちがいる。そして、私には夢がある。ケアマネージャーとして人々を助け、そして子供たちに寄り添い続けること。祖父が私に遺してくれたものは、ただの財産だけではなかった。彼の愛情と、それを次の世代へと繋ぐ役割を託してくれたのだ。

風に揺れる稲穂を見つめながら、私は深呼吸をした。この土地でのスローライフが、私の新しい始まりだと感じていた。

「おじいちゃん、ありがとう。私はここで、しっかりと生きていくよ」

大地に足をつけ、風を感じながら、私は再び歩き始めた。過去の傷も、今はただの遠い記憶となり、これからは自分の選んだ道を進むのみだ。

そしていつか、祖父のように誰かにとっての支えとなる日が来ることを信じて。

おじいちゃんのお抱えだった執事がわたしをそっと支えてくれる。

彼は12歳上だが、海や山へ連れて行ってくれて癒してくれる。

この頃、朝起きると彼の顔を思い出してにまーとしている自分がいる。

二人の未来はわからないけど、また別な機会に。