徒然草

春秋花壇

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徒然草 第二百三十三段

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徒然草 第二百三十三段

原文

万よろづの咎あらじと思はば、何事にもまことありて、人を分かず、うやうやしく、言葉少からんには如かじ。男女なんによ・老少、皆、さる人こそよけれども、殊に、若く、かたちよき人の、言うるはしきは、忘れ難く、思ひつかるゝものなり。

万よろづの咎は、馴れたるさまに上手めき、所得たる気色して、人をないがしろにするにあり。

現代語訳

何事でも失敗を避けるためには、常に「誠実」という二文字を忘れずに、人を差別せず、礼儀正しく、控えめに話すことが一番です。これは男性でも女性でも、老人でも若者でも同じことです。特に若くて美男子で言葉遣いが綺麗なら、忘れがたい魅力となります。

様々な過失は、物事に慣れて自信過剰になり、成功した気になって人を軽んじることから起こります。

ポイント

誠実さの重要性:どんな状況でも「誠実」であることが失敗を避けるために最も重要であると述べています。
差別しないこと:人を差別せず、誰に対しても礼儀正しく接することが大切です。
控えめな言葉遣い:言葉は少なく、控えめに話すことが理想とされています。
若く美しい人の魅力:若くて美しい人が言葉遣いも美しいと、特に忘れがたい印象を与えるということが述べられています。
過失の原因:過失は、物事に慣れて自信過剰になり、成功した気になって人を軽んじる態度から生じるとしています。
解説

この段では、人間関係における誠実さや礼儀、謙虚さの重要性が説かれています。吉田兼好は、失敗や過ちを避けるためには、常に誠実であること、人を差別せずに接すること、そして控えめな言葉遣いを心掛けるべきだと強調しています。

特に、若く美しい人が言葉遣いも美しいと、その人の魅力が一層際立つことが述べられています。これは、見た目だけでなく内面も美しくあることが、真の魅力を生むということを示唆しています。

また、過失の原因として、自信過剰や成功した気になって他人を軽んじる態度が挙げられています。これは、成功に酔いしれて傲慢になることが、結局は失敗や過ちにつながるという警告です。

この段は、日常生活や仕事においても通じる教訓を含んでおり、現代においても非常に価値のある教えとなっています。誠実さや謙虚さ、礼儀正しさを忘れずに行動することで、人間関係は良好に保たれ、成功に近づくことができるでしょう。








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