徒然草

春秋花壇

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徒然草 第百七十六段

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徒然草 第百七十六段

原文
黒戸(くろど)は、小松御門(こまつのみかど)、位に即(つ)かせ給(たま)ひて、昔、ただ人(ひと)にておはしましし時、まさな事せさせ給ひしを忘れ給はで、常に営いとなませ給ひける間(ま)なり。御薪(みかまき)に煤(すす)けたれば、黒戸と言ふとぞ。

現代語訳
清涼殿の黒戸御所は、光孝天皇が即位した後、かつて一般人だった時の自炊生活を忘れないように、いつでも炊事ができるようにした場所である。薪で煤けていたので、黒戸御所と呼ぶのである。

ポイント
黒戸御所の背景:

光孝天皇(小松御門)が天皇に即位した後も、一般人であった頃の自炊生活を忘れないために設けた場所である。
「常に営いとなませ給ひける間なり」から、天皇が常に炊事を行っていた様子が伺える。
黒戸という名称の由来:

炊事を行う際に使用する薪が煤けたため、「黒戸」と呼ばれた。
「御薪に煤けたれば」とは、実際に使用していた薪が煙で黒くなったことを指している。

解釈
この段は、光孝天皇の人間性と謙虚さを強調している。天皇に即位しても、かつての一般人としての生活を忘れず、自炊の習慣を続ける姿が描かれている。これは、光孝天皇が位にあっても奢らず、庶民的な生活を大切にしたことを示している。

詳細な解釈
光孝天皇の謙虚さ:

天皇という高位に就いても、一般人だった頃の生活を忘れない姿勢は、彼の謙虚さと人間味を強調している。このエピソードを通じて、読者は光孝天皇の人格の高さを感じ取ることができる。
「黒戸」の象徴性:

黒戸は単に場所の名称ではなく、光孝天皇の人柄や生活スタイルを象徴している。煤けた薪という具体的な描写は、彼が実際にどのように生活していたかを生々しく伝えている。
徒然草全体のテーマとの関連:

徒然草は、無常観や人間の本質についての洞察が多く含まれている。この段もまた、権力や地位に左右されない本質的な人間性を探求する一例と言える。光孝天皇のエピソードを通じて、権力に対する慎ましさや自己を見つめ直す姿勢が描かれている。

まとめ
第百七十六段は、光孝天皇の生活習慣とその背後にある謙虚さを通じて、人間の本質や生き方についての洞察を提供する一節である。黒戸御所のエピソードは、地位に関わらず自分を律し、過去の経験を大切にすることの重要性を教えてくれる。








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