徒然草

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
106 / 250

徒然草 第百三段

しおりを挟む
徒然草 第百三段

原文

大覚寺だいかくじ殿どのにて、近習きんじふの人ども、なぞなぞを作りて解とかれける処ところへ、医師くすし忠守ただもり参りたりけるに、侍従大納言だいなごん公明卿きんあきらのきやう、「我が朝てうの者とも見えぬ忠守かな」と、なぞなぞにせられにけるを、「唐医師からへいじ」と解ときて笑ひ合はれければ、腹立たちて退り出いでにけり。

現代語訳

大覚寺の法皇御所において、側近たちがなぞなぞ大会を開いていた。そこに医者の丹波忠守がやってくると、三条公明が「忠守は、我が国の人間には見えないけど、どうしてか?」という問題を出した。誰かが「中国の医者だから」と答えると、皆で笑い合った。

「からいし」は、中国製の徳利である「唐瓶子」と、没落した「平氏」を掛けた駄洒落なのだが、丹波忠守は怒らずに立ち去ってしまった。

ポイント

舞台:大覚寺の法皇御所
登場人物:
側近たち
丹波忠守
三条公明
なぞなぞ:
問題:「忠守は、我が国の人間には見えないけど、どうしてか?」
答え:「中国の医者だから」
駄洒落:「からいし」は「唐瓶子」と「平氏」を掛けた言葉遊び
丹波忠守の反応:怒らずに立ち去る
解説

この段は、大覚寺の法皇御所で側近たちが開いたなぞなぞ大会の様子を描いています。

側近たちは「忠守は、我が国の人間には見えないけど、どうしてか?」という問題を出し、誰かが「中国の医者だから」と答えると、皆で笑い合います。

この問題は、丹波忠守が中国出身の医者であることを皮肉ったものであり、側近たちは彼の外見や言動が異国の人物であるように感じていたようです。

しかし、丹波忠守は怒ることなく、静かに立ち去ってしまいます。

彼の反応は、皮肉に対して寛容であることを示しているとも、単に問題に興味がなかったことを示しているとも解釈できます。

この段は、ユーモラスな場面を通して、当時の知識人たちの教養や文化の様子を垣間見ることができます。

その他

この段は、丹波忠守の性格や教養に関する情報が少ないため、彼の行動を正確に理解することは難しい。
なぞなぞの内容は、当時の社会情勢や文化を反映している可能性がある。
この段は、ユーモラスな場面である一方で、異文化に対する偏見が存在していたことを示唆している側面もある。
参考資料

新訂徒然草(岩波文庫)
徒然草注釈(角川ソフィア文庫)
徒然草全釈(朝日新聞出版)
注意事項

上記はあくまでも一例であり、解釈は様々です。
徒然草は難解な部分も多く、専門的な知識が必要となる場合があります。
補足

この段の冒頭にある「殿どのにて」は、「法皇御所において」という意味です。
「近習」は、側近や従者という意味です。
「なぞなぞを作りて解とかれける」は、「なぞなぞを作って解き合っていた」という意味です。
「侍従大納言」は、公家官位のひとつで、二位から三位までの者を指します。
「唐医師」は、中国の医者という意味です。
「腹立たちて退り出いでにけり」は、「怒って立ち去ってしまった」という意味です。
この段は、ユーモアと皮肉が巧みに織り込まれた作品であり、当時の文化や社会風刺を読み解くヒントを与えてくれます。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

昨日まで彼女は

丸野丸
現代文学
高校2年生の2月冬、もうすぐ受験が始まる。 主人公の内田明(あかり)は明るくて優しくて、一言で言えばいい人。いつも通りに友人達と楽しげに話していた。 しかしどこかズレが出てくる。そんな中思い出話に思いを馳せていた明。友人達がそんな明にどこか違和感を感じるがそのまま解散。 次の日… これはいつか何処かで起こるかもしれない日常 もしかしたらもう起こっているかもしれない日常

駅前のひまわり

naomikoryo
現代文学
★★★5話で完結するショート・ストーリーです。軽く読んでいただけます(^^)★★★ 小さな町の駅前にある花屋「ひまわり」。 その店を営むのは、優しい笑顔が印象的な女性・杏奈(あんな)。 かつて都会で働いていたが、両親の遺したこの店を守るために地元へ戻り、花屋を引き継いでいる。 杏奈は日々、町の人々と花を通じて心温まる交流を続けているが、ある少年との出会いが彼女の人生に新たな色をもたらす。 常連客の慧(けい)は、小学生の少年で、父親が多忙のため、放課後に一人で駅前に通うことが多い。 寂しさを感じていた慧は、いつも笑顔で迎えてくれる杏奈に次第に心を開き、彼女の店に立ち寄ることが習慣になる。 杏奈もまた、慧の素直な笑顔や語る夢に心癒され、彼との日々のやり取りが日常の喜びになっていた。 やがて、慧が抱える寂しさや家族の問題が明らかになり、杏奈は自らの過去と向き合い、彼を支えたいと心から願うようになる。 彼女もまた、都会での激務と夢を諦めた過去を抱えていたが、慧との出会いによって新たな目標を見つける。

壊れそうで壊れない

有沢真尋
現代文学
高校生の澪は、母親が亡くなって以来、長らくシングルだった父から恋人とその娘を紹介される。 しかしその顔合わせの前に、「娘は昔から、お姉さんが欲しいと言っていて」と、あるお願い事をされていて……? 第5回ほっこりじんわり大賞「奨励賞」受賞

ほっこりできるで賞

春秋花壇
現代文学
第7回ほっこり・じんわり大賞 参加作品 ほっこり 陽だまりのような 温もり 小さな幸せ 積み重ねて 心 満ち足りる 猫の毛玉 ころころ転がる 無邪気な笑顔 ほっこりする 木漏れ日揺れる 葉っぱ一枚 静かな時間 心癒される 温かいお茶 香り広がる ほっと一息 疲れも溶ける 大切な人 側にいる 感謝の気持ち 溢れてくる 小さな奇跡 日々の中 ほっこりとした 心満たされる

春秋花壇

春秋花壇
現代文学
小さな頃、家族で短歌を作ってよく遊んだ。とても、楽しいひと時だった。 春秋花壇 春の風に吹かれて舞う花々 色とりどりの花が咲き誇る庭園 陽光が優しく差し込み 心を温かく包む 秋の日差しに照らされて 花々はしおれることなく咲き続ける 紅葉が風に舞い 季節の移ろいを告げる 春の息吹と秋の彩りが 花壇に織りなす詩のよう 時を超えて美しく輝き 永遠の庭園を彩る

タイトル『夜』 昨日のバイク事故ご報告2024年10月16日(水曜日)犯人逮捕

すずりはさくらの本棚
現代文学
 タイトル『夜』 作者「すずりはさくらの本棚」 ジャンル「随筆」  基本的に「随筆」は本当に起きたことしか書けません。嘘が苦手というか…。なんなんだろうね。  本日決定事項「2024年10月17日(木曜日)」入院(強制入院)か前の住所に戻るでした。  もう一点が「監視の目を増やして見届ける」。入院がだめな場合。三点目「施設に入居する」。  四点目「今の現状でがんばる!しかし、今よりも監視の目を増加する。」  まるで「監視、監視、監視……。」犯罪者ですか?とコパイロットに相談したくらいです。  私なにかしましたか?監視なので、娑婆に出てきたばかりの監視が必要な人ですか?  と相談したくらいです。それくらい昨日の事故を理解できていません。  生命の危機に瀕しているのに、本人が理解できていないから。警察への届けを出してくださった方々。  ありがとうございました。おかげさまで、住所不定がなくなりそうです。  ナイトタイムという言葉がある。  一見なんの意味もない言葉だが、深い意味がありそうだ。  職圧された人間社会にて、たたずむ君と私がいる。  色違いな場違いな色合いだが、社会に馴染んでいる。  ころあいを見計らって、社会という帳に身を委ねる。  パステルカラーの複雑な感性は充実しながら膨張する。  深夜になれば、君と私は早朝、昼間、深夜という具合に色褪せて行く。  夜は深々と降り積もるごとく…。夜という名前に満たされて行く。  もう一杯、ブラックコーヒーでも飲もうか……。

シニカルな話はいかが

小木田十(おぎたみつる)
現代文学
皮肉の効いた、ブラックな笑いのショートショート集を、お楽しみあれ。 /小木田十(おぎたみつる) フリーライター。映画ノベライズ『ALWAIS 続・三丁目の夕日 完全ノベライズ版』『小説 土竜の唄』『小説 土竜の唄 チャイニーズマフィア編』『闇金ウシジマくん』などを担当。2023年、掌編『限界集落の引きこもり』で第4回引きこもり文学大賞 三席入選。2024年、掌編『鳥もつ煮』で山梨日日新聞新春文芸 一席入選(元旦紙面に掲載)。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...