徒然草

春秋花壇

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徒然草 第七十四段

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徒然草 第七十四段

原文

世の中は夢の如く、人生は朝露のごとし。夢覚むれば何の残りもなく、露消えぬれば跡もなし。さればこそ、目に見え耳に聞こゆることも、心につかむべきものなく、ただよきやうに思ふことこそ、まことの楽しみなれ。


現代語訳

この世の中は夢のように儚く、人の一生は朝露のように一瞬のものです。夢が覚めれば何も残らず、朝露が消えれば跡形もありません。

だからこそ、目に見えたり、耳に聞こえたりするものは、心にとらわれるべきものではなく、ただ良いと思えることが、真の楽しみなのです。

解釈

この段では、ケンクウは人生の儚さを夢や朝露に例えています。夢が覚めれば何も残らず、朝露が消えれば跡形も残らないように、人の一生もあっという間に過ぎ去ってしまうものです。

ケンクウは、このような儚い人生だからこそ、目に見えるものや耳に聞こえるものにとらわれず、自分の心の中にある真の喜びを見つけることが大切であると説いています。

物質的な豊かさや名誉などは、いずれ失われてしまうものです。真の幸福は、自分の心の中にある価値観や信念に基づいた、自分らしい生き方をすることから生まれるのです。

この段が徒然草全体のテーマとどのように関連しているか

徒然草のテーマの一つは、無常観です。この段におけるケンクウの言葉は、この無常観を象徴するものです。

ケンクウは、この世の中におけるあらゆるものは永遠ではなく、常に変化しているという無常観に基づいて、人生の過ごし方について論じています。

彼は、私たちが真の幸福を見つけるためには、自分の固定観念や偏見を捨て去り、オープンな心で物事に向き合うことが必要であると主張しています。

その他

この段は、現代社会にも通じる教訓が含まれています。

私たちも、日々様々な情報に接していますが、その全てを鵜呑みに信じてしまうのではなく、常に批判的な思考を持つことが大切です。

また、人種や性別、宗教などの違いによって、異なる価値観や文化を持っていることを理解し、尊重することが重要です。

ケンクウの言葉に耳を傾け、真の幸福を見つけるために必要な知性と勇気を持つように心がけたいものです。
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