生きる

乾いた季節の中で

乾いた季節の中で

冬の朝、冷たい空気が街に満ち、灰色の雲が低く垂れ込めていた。部屋の中も寒く、暖房をつけてもすぐには温まらない。目を覚ますと、肌がひどくかゆくて、無意識に手で掻いてしまう。指先で広がる乾燥した皮膚が、冬の厳しい季節を感じさせる。今までには感じなかったこの違和感に、私は少しだけ不安を覚えていた。

「またか…」私はベッドから出て、鏡の前に立つ。腕をまくり、肌を見つめる。赤くなっているわけでもないし、腫れているわけでもない。ただ、かゆいだけだ。何度も掻いているうちに、皮膚がヒリヒリと痛みを感じ始めた。冬の乾燥がもたらすものだろうか、それとも、もっと深刻な原因があるのだろうか。

私の頭に浮かんだのは、糖尿病という言葉だった。診断されてから数年が経ち、糖尿病の管理に気を使いながら日々を過ごしてきた。しかし、最近になって、体調に何かおかしい兆しを感じることが増えていた。乾燥した肌、頻繁に喉が渇くこと、夜間のトイレに起きること――これらは、すべて糖尿病の症状だと知っていた。

「糖尿病のせいなのかな…」

私はふと、診療所で聞いた医師の言葉を思い出した。乾燥した皮膚やかゆみは、血糖値のコントロールが悪化したときに起こることがあるという。しかし、それだけではない。糖尿病患者の皮膚は、乾燥しやすくなることがあり、その影響でかゆみを引き起こすこともあると、医師は警告していた。

心の中で少し不安が広がったものの、私は深呼吸をして、自分を落ち着かせるように努めた。今日もまた日常が始まる。私は何度もかゆみを我慢しながら、朝の準備を始めた。

寒い季節に閉じ込められた

冬の寒さと乾燥が一段と厳しくなった頃、私は再びそのかゆみと向き合っていた。指先や腕、足の裏、さらには背中にまで広がるかゆみ。それを感じるたびに、自分が持っている糖尿病が原因かもしれないという思いが頭をよぎる。しかし、それだけではない気がした。

家の中でも乾燥がひどく、空気清浄機をつけたり、加湿器を使ったりしているが、肌の乾燥は一向に治まらない。お風呂に入った後にボディローションを塗っても、すぐにまたかゆくなる。どこかに行きたい気持ちが膨らむが、この冬の冷たさが外に出ることをためらわせた。

私は日々の生活に追われる中で、疲れとストレスも感じていた。仕事の忙しさ、糖尿病の管理、そして家庭内でのちょっとした問題。それが重なり、どうしても心が休まらない。

一度、夜に眠ろうとしたとき、また肌がかゆくて眠れなくなった。無意識に手が動き、腕を掻いてしまう。そのたびに、皮膚が引き裂けそうな感覚を覚える。そして、その感覚がさらに不安をかき立てる。

「もしかして、病院に行かないといけないのかもしれない…」

私はそう思い、翌日、診療所に電話をかけて予約を取った。糖尿病の治療を受けていることを告げると、看護師はすぐに私に診察を受けるよう勧めた。

診察と新たな発見

診察の日、私は少し緊張しながら病院に向かった。診察室に入ると、担当医師がにっこりと笑って私を迎えてくれた。

「どうされましたか？」と、医師は優しく尋ねる。

「最近、肌のかゆみがひどくて…もしかして、糖尿病のせいかと思うんです。」私は自分の症状を伝える。

医師は私の話を聞きながら、皮膚を診察してくれた。「糖尿病が影響している可能性はありますが、それだけではなく、乾燥によるものが大きいかもしれませんね。冬の乾燥は特にひどく、糖尿病の方にはその影響が強く出ることもあります。」彼は優しく説明を続けた。「今後、血糖値の管理をさらに徹底し、乾燥対策を強化しましょう。」

医師からのアドバイスで、私は乾燥肌対策をさらに強化することを決意した。加湿器を部屋中に設置し、ボディローションをこまめに塗り、外出時には保湿効果の高いクリームを使うようにした。また、食事の見直しも行い、血糖値の管理に細心の注意を払った。

数週間後、肌のかゆみは少しずつ軽減されていった。完全に治ったわけではないが、以前よりもずっと楽になった。体調も少しずつ安定し、心も落ち着いてきた。

冬の乾燥の中で、私は自分の体と向き合い、少しずつ生活習慣を改善していった。糖尿病の影響を軽減するためには、日々の努力が必要だと実感した。そして、かゆみが完全に収まったとき、私は心から安堵した。

「まだまだ頑張らないとね。」自分にそう言い聞かせて、私はまた一歩、前に進んだ。