生きる

ストロングチューハイ

ストロングチューハイ

冷たい雨が窓を叩く音が響く中、みるくはソファにうずくまり、手に持ったストロングチューハイの缶を見つめていた。その冷たく、深い琥珀色の液体が、どこか遠くの世界へと彼女を導いてくれるような気がした。

「飲んで―飲んで―飲まれて飲んで―」

ふと、歌詞が頭に浮かぶ。居酒屋のカラオケで、酔っ払った友達がいつも歌っていた古い曲だ。みるくは笑って、缶を一口含んだ。炭酸が口の中で弾ける音がしたが、それも一瞬で消えていった。すぐに心の中に広がる空虚感に圧倒される。

「また、これだ。」

みるくは苦笑いを浮かべ、手にした缶をふたたび唇に押し当てた。寒い冬の雨の中で、何もかもが無意味に感じられる。冷たい空気、冷たい缶、冷たい心。ストロングチューハイのアルコールが、どこかほっとさせるような気がしたが、心を温めることはない。

「本当は…もっと、違うことがしたいのに。」

彼女は小さな声で呟く。ゲームをしていても、フレンドとチャットをしていても、心は満たされない。孤独を埋めようとして飲んでいるのか、それともただ時間を潰しているだけなのか、分からなくなってきた。自分の手元にあるものすべてが、虚しさを増すだけのように感じられた。

ふと、窓の外を見ると、雨がしとしとと降り続いていた。時折、雷の音が響き渡り、そのたびにみるくの体が震える。心の中で響くような不安感と孤独感が、ますます彼女を締めつけていく。

「冷たい雨だな…」

みるくはつぶやきながら、再びストロングチューハイの缶を振った。残り少なくなったその缶を、あえて飲み干さずに置いておこうと思った。そんな無駄な抵抗が、どこか自分に対する苛立ちを感じさせた。

「こんな時、あの人はどうしてるんだろう。」

あの人、レオン・クロフォード。彼の名前を思い浮かべるだけで、みるくの心が少し温かくなる。しかし、現実はそんなに甘くはない。彼には家族がいて、他に大切な人がいる。そしてみるくは、ただの「知り合い」にすぎない。そんなことを頭では分かっているのに、心がそれを受け入れられない。

「飲んで―飲んで―飲まれて飲んで―」彼女は再び歌詞を口にした。その言葉がどこかに絡まって心を締め付けるようで、少しだけ笑いたくなった。しかし、そこに笑顔は浮かばなかった。

「どうして、こんなに寂しいんだろう。」

みるくは目を閉じて、心の中で自分に問いかけた。冷たい雨が頬を打ち、暗い部屋の中でひとりぼっちの自分が余計に浮き彫りになっていく。

雨音とともに、彼女の心にはどんどん冷たい風が吹き込んでいく。目の前にあるのは空っぽの缶と、満たされない気持ちだけだった。どんなに時間が経っても、誰かが来てくれるわけではない。フレンドたちと繋がっている気がしても、心の中では一人きりだという事実に押し潰されていく。

「これじゃあ、どうにもならない…」

みるくは缶をテーブルに置き、深いため息をついた。やり場のない寂しさが心に広がり、どうすることもできずにそのまま座り込んでしまう。

「また、明日もこんな日が続くんだろうな…。」

その予感が、みるくをさらに暗くさせた。冷たい雨が、時雨のように彼女の頬を打つ。どんなに雨の中で歩いても、何も変わらない気がする。だけど、雨が心を洗い流してくれると信じて、もう少しだけ、このままでいようと決める。

「明日も、また飲んで―飲んで―飲まれて飲んで―。」

そう呟きながら、みるくはまた手にした缶を持ち上げた。明日も、きっと変わらないだろうけど、今はただそれを飲んで、今の自分を忘れることにした。