生きる

春秋花壇

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糖尿病

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糖尿病

陽介は定期的な健康診断で医師から告げられた。「血糖値が高いですね。このまま放置してしまうと、糖尿病になってしまいますよ」何気ない診察室での会話だったが、その言葉は陽介の心に重くのしかかった。糖尿病と聞いてすぐに思い浮かぶのは、インスリン注射や食事制限、運動療法。だが、日常の忙しさにかまけて、彼はその後も食事の見直しや運動を怠りがちだった。

ある日のこと、陽介は仕事で取引先に訪れていた。昼食に出された料理を無意識にかき込むように食べ、気づけば炭酸飲料で流し込んでいた。ふと、視線の先にいた取引先の担当者が、カロリーの少ない飲み物を手にしながらサラダを丁寧に食べている姿が目に入った。彼は不思議に思い、思い切って質問してみた。

「○○さん、そんなに健康管理に気をつけてるんですね?」

担当者は少し微笑んでから答えた。「実は私も数年前に糖尿病と診断されて。それで今は食事にも運動にも気をつけるようにしています。管理が難しい病気ですけど、ちゃんと向き合えばコントロールできますよ」

その言葉を聞き、陽介の心に不安が広がった。糖尿病は一度発症すれば、一生涯の付き合いになる病気。生活習慣病であることは分かっていたが、自分も同じ道を歩むことになるかもしれない、という現実に気づかされたのだ。

自宅に戻ると、陽介はリビングで一人考え込んでしまった。ここで努力を始めなければ、将来の生活の質が落ちることは明らかだ。しかし、食生活を変えることも運動を始めることも、言うは易く行うは難しというのが現実であった。

その日から陽介は少しずつではあるが、食生活を見直し始めた。白米を雑穀米に変え、脂っこい食事を避け、間食を控えた。ランチはサラダを中心にし、夜も糖分を減らしたメニューを心がけるようになった。

そんな生活を始めて数週間が経った頃、陽介は再び病院に訪れ、健康状態の検査を行った。結果は少し良くなっていたが、医師からはまだ改善の余地があると指摘された。やはり完全に良くなるには時間がかかるのだと、陽介は思い知らされた。

それでも、彼は少しずつ確実に前進している自分を誇りに思った。糖尿病予備軍という状態にあった自分を振り返り、少しずつでも生活習慣を変えてきたことで、未来に対する漠然とした不安が和らいでいることに気づいた。

そして、陽介はまた一つ決意を固めた。単に病気を防ぐだけでなく、健康な自分を手に入れるために、これからもこの道を進み続けようと。糖尿病予備軍から抜け出すことは、彼の新しい人生のスタートとなった。









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