生きる

春秋花壇

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終わりなき夜

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“終わりなき夜”

志水友和は、暗い夜の街を一人歩いていた。懐中電灯の光が薄闇に差し込む中、彼の心はずっと静まることなく、過去の記憶に引き寄せられていた。父親、正春。あの男が引き起こした数々の傷が、今も彼の胸を締め付けている。

「俺が悪いんじゃない…」彼は小さくつぶやいた。目を閉じると、再びその光景が浮かんでくる。あの時のことが、何度も何度も頭をよぎる。

数ヶ月前、志水は熊本県八代市の家で父親を殺害した。夜の深さの中で起こったその事件は、家族にとっても、街にとっても、衝撃的なものだった。しかし、それ以上に衝撃だったのは、志水の心の奥底にひそむ怒りと悲しみが、一気に爆発したその瞬間だった。

あの日、父親は眠っていた。穏やかな寝顔に見えたが、志水にはそれが許せなかった。あの顔、あの寝顔が、自分をどれだけ苦しめてきたのか…。志水はその感情に従い、寝ている父親の顔に何度も斧を振り下ろした。その時の気持ちが、今でも脳裏に焼き付いて離れない。

父親の暴力的な支配から逃れられず、志水は幼少期からずっと家の中で閉じ込められていた。浴槽に入れられ、重いフタと石で押さえつけられ、2、3時間も動けなくされることが何度もあった。自分の命が危険だと感じることすらあったが、父親の手が止まることはなかった。加えて、進学や将来の夢を追うことさえも許されなかった。

「大学には行かせない」父の冷たい言葉が、今でも彼の胸に刺さっている。その時、志水は一人、真っ暗な部屋で涙を流した。しかし、父親は決してその涙を見ようとしなかった。

志水はその後、うつ病に悩まされ、日々の生活が辛かった。自分の未来が閉ざされ、希望が奪われたことに対する絶望が、少しずつ心を蝕んでいった。

「でも、あの時、あの父親が眠っているのを見て、どうしても我慢できなかった」志水は、心の中で言い訳をした。あの瞬間、何かが壊れたのだ。自分の中に、長い間抑え込んでいた感情が、一気に溢れ出した。

その後、家を出て、車中泊をしながら過ごした志水は、最後に警察に自首した。自分のしたことが、どれほど取り返しのつかないことか、重々承知していた。だが、それでも心の中で、父親への憎しみと怒りは消えなかった。

裁判では、弁護側が彼の過去を訴え、家庭内で受けた虐待が志水を追い詰めたと説明した。しかし、法廷で志水の目には、深い悔いと絶望が浮かんでいた。どんな言い訳も、どんな過去の出来事も、今の現実を変えることはできなかった。

「父親に復讐しても、心の中の空虚感は埋まらない」志水は、判決が下されるその時、すでに自分を許すことができないことを感じていた。懲役11年の判決が下り、彼は刑務所に送られることとなった。だが、その時でも、志水は一度も涙を見せなかった。心の中で、ただ静かに後悔し続けた。

夜が深くなるにつれ、志水はまたその記憶に引き寄せられる。あの日、斧を振り下ろした瞬間の感触、そしてその後の虚無感…。何も変わらなかった。父親を殺したことで、ただ一つの重荷を下ろした気がしたが、それでも彼の心には何も残らなかった。

この物語の終わりは、志水の心の中で決して終わらない戦いが続くことを意味していた。彼は今も、自分の罪と向き合いながら、静かに歩み続けるのだった。
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