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春秋花壇

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リサーチしてからネットショッピング・SNSで「タグる」「タブる」

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リサーチしてからネットショッピング・SNSで「タグる」「タブる」

東京のオフィス街、昼休みの時間帯にカフェでひと息ついている亜紀(あき)は、スマートフォンの画面に目を落としながら、カフェラテを一口飲み込んだ。彼女の指は、無意識に画面をスクロールし、SNSのタイムラインを眺め続けていた。その手のひらに感じる温かさが、今は少しだけ心地よく思えるが、実際には彼女の頭の中は、あることでいっぱいだった。

「どうしよう…これ、買っても大丈夫かな?」亜紀はつぶやいた。画面には、今気になっている最新のファッションアイテムが映っている。アイボリー色のトレンチコート。シンプルで洗練されたデザインが、彼女の目を引いた。しかし、亜紀はそれをすぐには買う気になれなかった。

「リサーチしないと。」そう、彼女はよく言っていた。「買う前に、しっかり調べてから。」ネットショッピングをする際には、必ず周到に準備をしてから購入するのが亜紀のポリシーだった。彼女は「リサーチしてから購入」というスタイルを貫いていたが、それだけでは満足しなかった。どこかしらで「タグる」「タブる」ことを忘れずに行いたいと思っていた。

亜紀が「タグる」「タブる」を意識し始めたのは、SNSが進化し、InstagramやTwitterなどで物があふれるようになった頃だ。彼女は、それらのアイテムに対して個人的な評価をすることが好きだった。「タグる」とは、SNSでアイテムを投稿する際に、関連するハッシュタグを付けること。そして、「タブる」とは、同じアイテムを複数のタブで調べて比較すること。ネットショッピングをするにあたり、どれも欠かせないプロセスだった。

亜紀はまず、トレンチコートの公式サイトで商品の詳細を読み込み、次にInstagramで「#アイボリー #トレンチコート」のタグを検索した。たくさんの人々が同じ商品を購入して着ている写真を投稿していた。彼女はその中で特に「このアイテム、実際に着たときにどう見えるか」が気になった。画面をスクロールしながら、他の購入者のレビューやコメントを確認するのが、彼女にとっての「リサーチ」だった。

「この人のコーディネート、いい感じ!」亜紀は画面を指でタップして、特定のインフルエンサーが投稿した画像を拡大した。そのインフルエンサーは、シンプルな白いシャツにアイボリーのトレンチコートを羽織り、洗練された雰囲気を醸し出している。「こんな風に着こなしたいな」と思いながらも、亜紀は冷静にさらに調べ続けた。

次に、亜紀は別のタブを開き、同じトレンチコートがどのサイトで安く売っているかを調べた。これが彼女の「タブる」だ。タブをいくつも開いて、同じ商品の価格を比較することで、少しでもお得に購入できる可能性を探す。彼女は、物を買うときに、必ず一番安くて信頼できるサイトで購入したいと思っていた。

「うーん、このサイトが一番安いけど、レビューが微妙だな…。こっちのサイト、値段は少し高いけど、配送の速さと評判がいい。」彼女は慎重に判断を下しながら、複数の選択肢を天秤にかける。その合間に、また別のSNSで、トレンチコートに関する話題を見つけて、彼女はついコメントを投稿した。

「最近、このトレンチコート気になってるんだけど、みんなの意見が聞きたい!」彼女は、フォロワーたちに自分の悩みを投げかけるのが習慣になっていた。SNSを通じて得られる他者の意見や反応が、彼女にとって何より大切だった。自分が思っていた以上に「リアルな」評価が集まり、時にはその結果に自分の購入の決断を左右されることがあった。

数分後、何人かのフォロワーがコメントを返してきた。「トレンチコート、あったかくていいけど、意外と重く感じるかもよ」「これ、かなりシルエットがきれいだから、体型を選ぶかも」「私も探してた!でも、他のブランドの方がもっと安くて、でも機能性がよかったよ」など、たくさんの意見が飛び交う。その情報を元に、亜紀は再びサイトを行き来し、慎重に最後の選択を下した。

「あ、やっぱり他のブランドの方が私には合ってるかも。」亜紀は、他のサイトに目を移しながら、最終的に違う商品に目を向けた。シンプルでありながら、自分に似合うものを見つけたとき、彼女はようやく満足して購入ボタンを押した。

「やっぱりリサーチしてから、タブることは重要だね。」亜紀は心の中でつぶやいた。そして、もう一度、SNSにそのアイテムを投稿して、ハッシュタグ「#新しいコート」をつけた。購入後の満足感を分かち合うことで、他の人たちの反応を楽しみにしている自分がいた。

その日、亜紀は自分のスタイルが完成した気がしていた。リサーチし、タブを開き、SNSで意見を交わしながら、最適な選択をする。それが彼女の生き方だった。ネットショッピングやSNSが、単なる買い物の手段ではなく、彼女の日常の一部として完全に定着していることを実感していた。そして、その中で自分を表現し、周囲の人々とつながることで、さらに新しい発見が生まれることを楽しんでいた。










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