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変わりゆく世界
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変わりゆく世界
病院に向かう車の中で、私は過去の出来事を思い出していた。数年前、精神病院の待合室で見た一組の家族の姿が忘れられなかった。親が娘に向かって「当分出さないでください。しばらく会いたくないです」と言った言葉。私はその時、親がなんてひどいことを言うのだろう、と思っていた。しかし今、その言葉が私の胸に重くのしかかっていた。
何度もこの子を殺して、私も死のうと思った。
少し落ち着いて、外に彼が出ていったので散歩を楽しんでいるのかなと
ほっとしていると、警察から電話がかかってきて
「息子さんが車とぶつかりました」
という。
「息子は無事なんですか?」
「はい、大丈夫です」
「相手の方はどうなんですか?」
「大丈夫ですよ」
何のことだか訳が分からない。
また何日か経って、少しは症状も収まったかなと思って安心し始めると、
「なんでだよー」
「生まれてくるんじゃなかった―」
と、大きな声で叫ぶ。
ああああああああああああああああ……。
ごめんなさい。私の育て方が悪かったから…。
と、また共依存の渦に飲み込まれていく。
上手に愛せない自分。
上手くいかない日常からどんどんはみ出していく。
必死に線引きをして、私は私で生きようとする。
デイケアを見学に行ったり。
小説を書いてみたり。
オンラインゲームにのめりこもうとしたり。
歩けないのに、散歩で気を紛らわしたり。
100点満点じゃなくても、50点でも、いや1点でも。
私は息子と自分を愛そうとしてる。
真っ暗な闇に思えても光を探して這いずって、
明るい方へごめんなさいと感謝をささげながら
しっかり前を向いて生きようとしてる。
それでいい。
アルファポリスがあるおかげで、私は自分の心の掃除ができるようになった。
いいことも悪いことも書きだして、必要なものは、
ちゃんと住所をつけてしまっていく。
リアルも心も整理整頓。
だって、あなたも私も神様が愛してくださっているのだから。
世界でたった一つのかけがえのない尊い命なのだから。
だいすきだよ♡
息子の病状が急激に悪化し、彼を精神病院に送る決断をしたとき、私はその気持ちを深く理解できるようになった。統合失調症の急性期は、まるでその人が全く別人になったかのように感じさせる。幻覚、幻聴、妄想の中で、現実との境界が曖昧になり、何が真実で何が虚構か分からなくなる。息子はその中で私たちに理解を求めるが、私たちの姿を本当のものと認識できない。彼がそのような状態でいることが、私にとってどれほど辛いことか、想像もできないだろう。
そして、家族が巻き込まれていく。病気の症状とその人自身の人格が一体となって見えることがあり、どこかでその人を責めてしまう自分がいる。しかし、心の中でそれが病気の影響だとわかっていても、気持ちはついていけない。
一番つらいのは息子なのに…。
そんなの100も承知なのに……。
私は今、かつて他の家族を非難していた自分を恥じている。彼らの苦しみを理解することができた。どんなに愛していても、時にはその愛が負担に感じられ、遠ざかりたくなることもある。病気はただの症状に過ぎないと頭では分かっていても、感情はついてこない。その葛藤が私の心を押しつぶす。
病院に向かう息子を見送る時、私は静かに祈った。どうか、彼が治療を受けることで少しでも楽になり、また元の彼に戻れるように。そう願うことしかできない自分が、また少し情けなく感じられた。
それでも、私は変わりゆくこの状況を受け入れ、少しずつ成長していくのだろう。人は、時には苦しみを通して深く優しくなれるのだと信じたい。木々の葉が秋になると色を変えるように、私もまた、変化を受け入れ、前を向いて歩いていく。
息子が幸せを感じる日が、必ず来ると信じて。
入院するかもなのに、ついてかないことを選択した自分を責めてしまっています。
病院に向かう車の中で、私は過去の出来事を思い出していた。数年前、精神病院の待合室で見た一組の家族の姿が忘れられなかった。親が娘に向かって「当分出さないでください。しばらく会いたくないです」と言った言葉。私はその時、親がなんてひどいことを言うのだろう、と思っていた。しかし今、その言葉が私の胸に重くのしかかっていた。
何度もこの子を殺して、私も死のうと思った。
少し落ち着いて、外に彼が出ていったので散歩を楽しんでいるのかなと
ほっとしていると、警察から電話がかかってきて
「息子さんが車とぶつかりました」
という。
「息子は無事なんですか?」
「はい、大丈夫です」
「相手の方はどうなんですか?」
「大丈夫ですよ」
何のことだか訳が分からない。
また何日か経って、少しは症状も収まったかなと思って安心し始めると、
「なんでだよー」
「生まれてくるんじゃなかった―」
と、大きな声で叫ぶ。
ああああああああああああああああ……。
ごめんなさい。私の育て方が悪かったから…。
と、また共依存の渦に飲み込まれていく。
上手に愛せない自分。
上手くいかない日常からどんどんはみ出していく。
必死に線引きをして、私は私で生きようとする。
デイケアを見学に行ったり。
小説を書いてみたり。
オンラインゲームにのめりこもうとしたり。
歩けないのに、散歩で気を紛らわしたり。
100点満点じゃなくても、50点でも、いや1点でも。
私は息子と自分を愛そうとしてる。
真っ暗な闇に思えても光を探して這いずって、
明るい方へごめんなさいと感謝をささげながら
しっかり前を向いて生きようとしてる。
それでいい。
アルファポリスがあるおかげで、私は自分の心の掃除ができるようになった。
いいことも悪いことも書きだして、必要なものは、
ちゃんと住所をつけてしまっていく。
リアルも心も整理整頓。
だって、あなたも私も神様が愛してくださっているのだから。
世界でたった一つのかけがえのない尊い命なのだから。
だいすきだよ♡
息子の病状が急激に悪化し、彼を精神病院に送る決断をしたとき、私はその気持ちを深く理解できるようになった。統合失調症の急性期は、まるでその人が全く別人になったかのように感じさせる。幻覚、幻聴、妄想の中で、現実との境界が曖昧になり、何が真実で何が虚構か分からなくなる。息子はその中で私たちに理解を求めるが、私たちの姿を本当のものと認識できない。彼がそのような状態でいることが、私にとってどれほど辛いことか、想像もできないだろう。
そして、家族が巻き込まれていく。病気の症状とその人自身の人格が一体となって見えることがあり、どこかでその人を責めてしまう自分がいる。しかし、心の中でそれが病気の影響だとわかっていても、気持ちはついていけない。
一番つらいのは息子なのに…。
そんなの100も承知なのに……。
私は今、かつて他の家族を非難していた自分を恥じている。彼らの苦しみを理解することができた。どんなに愛していても、時にはその愛が負担に感じられ、遠ざかりたくなることもある。病気はただの症状に過ぎないと頭では分かっていても、感情はついてこない。その葛藤が私の心を押しつぶす。
病院に向かう息子を見送る時、私は静かに祈った。どうか、彼が治療を受けることで少しでも楽になり、また元の彼に戻れるように。そう願うことしかできない自分が、また少し情けなく感じられた。
それでも、私は変わりゆくこの状況を受け入れ、少しずつ成長していくのだろう。人は、時には苦しみを通して深く優しくなれるのだと信じたい。木々の葉が秋になると色を変えるように、私もまた、変化を受け入れ、前を向いて歩いていく。
息子が幸せを感じる日が、必ず来ると信じて。
入院するかもなのに、ついてかないことを選択した自分を責めてしまっています。
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