生きる

立ち上がる者たち

「立ち上がる者たち」

玲奈は、小さなデザイン会社で働く28歳のグラフィックデザイナーだった。彼女は独自の感性を持ち、多くのクライアントからの信頼を集めていたが、最近は仕事で大きな壁に直面していた。新しいプロジェクトで、クライアントの要望が何度も変わり、そのたびにデザインを作り直すことを要求され、結果的に納期ギリギリまで追い詰められていた。

「今回も修正？もう何度目だろう…」玲奈は、デザイン案のフィードバックを見て、疲れ切った顔でため息をついた。数ヶ月にわたる苦しいプロジェクトで彼女の心は限界に近づいていた。周囲の同僚からも「諦めて、もっと楽な案件に変えてもらえば？」という声が聞こえるようになり、玲奈自身も自信を失いかけていた。

そんなある日、玲奈は高校時代の親友であり、同じ業界で働く絵里と再会した。絵里は独立し、自分の会社を立ち上げたばかりだったが、そこで大きな失敗を経験したという。新規のクライアントと契約した直後、予想外の追加要求が次々と舞い込み、利益どころか赤字になるほどに追い詰められていたのだ。

「もう何度も失敗したよ。でも、まだやり直せるって信じてる」と語る絵里の瞳は、不思議と輝いていた。

「どうしてそこまで頑張れるの？」玲奈が問いかけると、絵里は笑顔で答えた。「失敗は避けられないものだからね。自分がこの仕事を好きで、挑戦し続けたいって思える限り、立ち止まる理由はないんだ。諦めたら、そこで終わってしまうでしょ？」

絵里の言葉が、玲奈の心に深く響いた。失敗を恐れず、挑戦を続けるその姿勢に玲奈は勇気をもらい、改めて自分のプロジェクトに向き合う決意を固めた。

それから数日後、玲奈はクライアントに対して、自分のデザインの意図やビジョンをより明確に伝える場を設けた。単なる修正に応じるだけでなく、なぜそのデザインが最適なのか、どのようにクライアントの目標を反映しているのかを丁寧に説明したのだ。これまで「クライアントの言う通りにする」という姿勢から脱却し、彼女自身が提案者としてしっかり立ち位置を築こうとしたのだった。

初めは厳しい反応だったクライアントも、玲奈の真剣な姿勢に次第に心を開き、信頼を寄せるようになった。最終的には、玲奈の提案通りのデザインが採用され、プロジェクトは大成功を収めることとなった。クライアントからの感謝の言葉を受け取った玲奈は、改めて自分の仕事への情熱と信念を取り戻したのだった。

「挑戦し続けるって、簡単なことじゃないけど、だからこそ価値があるのかもしれないね」玲奈は、絵里との再会がもたらしてくれた気づきに感謝しながら、次のプロジェクトに向けて歩き出すのだった。