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春秋花壇

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診療報酬改定

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診療報酬改定

2024年6月1日、診療報酬改定が行われた日。私、田中美穂は、糖尿病と向き合いながら生活を送る50代の女性だ。数年前から糖尿病の治療を受けているが、この日を境に私の診療が少し変わることを知った。

「特定疾患療養管理料」――以前まではこれで毎月の診療費が算定されていた。糖尿病は生活習慣病の一つでありながら、長期的な管理が必要な「特定疾患」として扱われていたからだ。しかし、6月1日からは「生活習慣病管理料」として算定されることになったと、主治医の先生から説明を受けた。

「これによって、どう変わるんですか?」私は疑問に思い、診察室で尋ねた。

「基本的には、診療費が少し変わる程度です。糖尿病は長期的に管理が必要な病気なので、しっかりと定期的な診察を受けてくださいね。生活習慣病管理料としての対応になりますが、管理自体はこれまでと大きく変わりません」と先生は優しく答えてくれた。

私の頭の中には、いろいろな思いが巡った。生活習慣病――それは、糖尿病の原因が生活習慣にあることを改めて思い出させる言葉だ。確かに、若いころから暴飲暴食を繰り返し、運動もせず、ストレスを食事で解消しようとしていた自分の過去が、今の病気に繋がっているのは事実だった。

その帰り道、私は自分の生活を見直すべきだと強く感じた。この改定は、単なる制度の変更に過ぎないのかもしれないが、私にとっては自分の生活を改善するきっかけになるかもしれない。診療費のことばかり気にしていたが、病気自体の改善にはもっと真剣に取り組まなければならない。

自宅に帰り、私は食卓を見つめた。以前は、揚げ物や炭水化物が並ぶことが多かったが、最近は少しずつバランスの取れた食事を心がけるようにしていた。しかし、それでも時折誘惑に負け、甘いお菓子や夜食に手を伸ばしてしまうことがあった。

「生活習慣病か…」私は独り言のようにつぶやいた。この言葉には、自分の体に対する責任が含まれている。糖尿病の管理は、ただ薬を飲むだけではなく、食事や運動、日常生活全般に対する意識を持つことが大切だと感じた。

次の日、私は早朝にウォーキングを始めることにした。これまでも運動の必要性は感じていたが、なかなか続けられずにいた。しかし、今回の診療報酬改定が、私の中で一つの区切りとなり、生活を見直すための新しいスタートを切るきっかけになった。

朝の空気は清々しく、歩くたびに心も軽くなる気がした。体を動かすことがこんなにも気持ち良いとは思わなかった。今までは忙しさを言い訳にして、なかなか運動をする時間を作れなかったが、この日は少し時間を調整し、朝の散歩を楽しむことができた。

「これからは、自分の体とちゃんと向き合おう」と心に決めた。

その週末、私は食材を買いにスーパーに出かけた。これまでは気にせず手に取っていた揚げ物やお菓子は、意識的に避け、野菜や魚を中心にカゴに入れた。食事の改善も、私にとっては大きなチャレンジだったが、これからの健康のためには避けて通れない道だと理解していた。

家に帰って、早速料理を始めた。糖尿病のための食事は味気ないものだと勝手に思い込んでいたが、工夫次第で美味しく楽しめることに気づいた。特に、新鮮な野菜と魚を使ったサラダは、彩りも豊かで目にも楽しいものだった。

診療報酬改定から数ヶ月が経った頃、私は定期的な診察を受けるために病院に行った。先生に最近の食事や運動について話すと、「とても良いですね。血糖値も少し安定してきています。この調子で続けていきましょう」と褒められた。

私は嬉しくなり、さらにやる気が湧いてきた。病気との向き合い方は、ただ薬に頼るだけではなく、自分自身の生活習慣を見直すことが大切だということを、今回の改定を通じて改めて実感した。

2024年の診療報酬改定は、私にとって単なる制度の変更に留まらなかった。それは、私自身の生活を見直し、健康に対する意識を高めるためのきっかけとなったのだ。これからも、私は少しずつでも前向きに自分の健康を守り続けていくつもりだ。そして、この変化が、将来の自分にとって大きな財産になると信じている。

糖尿病は、長い戦いだ。しかし、戦うべき相手は病気だけではなく、私自身の習慣や考え方なのだ。それを乗り越えることで、私は新しい自分に生まれ変わろうとしていた。






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