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春秋花壇

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良心

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良心

その日は晴れ渡る青空が広がっていた。東京の喧騒から離れ、私は静かな町に足を踏み入れた。ここには、私の故郷がある。幼少期の思い出が詰まった場所だが、今は何もかもが変わってしまった。

古い家を訪れたのは、母の葬儀を終えた後だった。家に入ると、まだ彼女の香りが残っているようで、思わず目頭が熱くなった。家の中は、母の遺したものであふれていた。写真や手紙、思い出の品々が、彼女の存在を物語っていた。

しかし、その中に一通の手紙があった。それは私が幼い頃、母が私に宛てたもので、今まで見たことがなかった。私は手紙を手に取り、読み始めた。

「親愛なるあなたへ。良心とは、あなたの心の奥にある小さな声です。その声を聞くことができるかどうかが、あなたの人生を大きく変えるでしょう。」

言葉はまるで母の声のように感じられた。良心。私はその言葉にしばらく考え込んでしまった。良心とは何だろう。道徳的な判断、他者への思いやり、自己の内なる声。それらはすべて、私たちが生きる上で重要な要素だ。

私は母の教えを思い出し、彼女がどれほど正直で思いやりのある人だったかを感じた。しかし、私自身はその良心を裏切ってしまった。私は都市での生活に溺れ、他人を踏みにじるような仕事を選んでしまった。良心の声を無視し、金銭的な成功を追い求めていた。

その日、私は過去を振り返りながら、母がどのように私に良心を教えようとしていたのかを思い起こした。彼女はいつも、他人を思いやることの大切さを説いていた。だが、私はその教えを忘れてしまった。仕事に追われ、私利私欲のために生きてきた。

思い出の中の母は、いつも優しい笑顔を浮かべていた。私が小さな頃、困っている人を見かけると、必ず助けに行くように教えてくれた。それが「良心」の始まりだと。だが、今の私はその教えを忘れ、利益優先の世界で生きていた。

手紙を読み終えると、胸の奥が苦しくなった。私は自分の選択を悔いた。良心に背を向けていたことに気付かされた。今、私が生きるべき道はどこなのか。心の声に耳を傾け、何が正しいのかを見極めなければならなかった。

その日の夕方、私は町を歩いていた。懐かしい風景が広がる中、ふと目に入ったのは小さな子供たちが遊ぶ公園だった。彼らの笑顔は、まるで無邪気な天使のようだった。その瞬間、私は子供の頃の自分を思い出した。あの頃の私は、何もかもが素直で、良心に従って生きていた。

しかし、いつからかその心が失われてしまったのか。仕事のストレスや人間関係のもつれが、私の心を閉ざしていたのだろうか。

公園の隅には、一人の少年が座っていた。彼は周りの子供たちとは違い、誰とも遊んでいなかった。何か困った様子で、時折周囲を見回している。私はその子に近づいてみた。

「どうしたの?」声をかけると、彼は少し驚いたように振り向いた。

「友達ができないんだ。」彼は小さな声で答えた。何とも切ない表情をしていた。

その瞬間、私の中の良心が目覚めた。何かを助けたい、支えたいという思いが湧き上がった。私もかつて、こんな気持ちを抱えていた。母が教えてくれた良心の声が、私を導いている。

「じゃあ、一緒に遊ぼうよ。」私は笑顔を向けてみた。

彼の表情がぱっと明るくなった。その瞬間、私の心も軽くなり、何かが動き出した気がした。私が彼と遊ぶことで、彼の孤独が少しでも和らぐなら、これが良心に従うことだと感じた。

その後、私はその少年と何度も会うようになった。彼との交流を通じて、私は少しずつ自分を取り戻していった。良心に従い、他者を思いやることで、私の心は徐々に癒されていった。母の教えが、今ここで生き続けているのだと感じた。

ある日、彼がこう言った。「お兄さん、ありがとう。友達ができて嬉しい。」

その言葉が、私の心を打った。私は彼に出会えたことで、自分自身を見つめ直すことができた。良心の声が、私を新たな道へと導いてくれたのだ。

故郷に帰り、母が遺した手紙を読み返すたび、私は彼女の思いを感じる。良心は、ただの道徳ではなく、心の奥にある生きる力であることを学んだ。そして、その力が人を結びつけることを知った。

私の人生は変わり始めた。良心に従い、他者を思いやることで、私は新しい自分を見つけることができた。そして、母の教えが、私の心の中で生き続ける限り、私はずっと良心に従って生きていくのだろう。








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