生きる

便失禁してしまった老人の悲しみ

便失禁
「くそっ…！」

思わず声を漏らした。腹部に強烈な痛みを感じ、同時に温かい液体が太ももを伝っていく。まさか、まさか自分がこんなことになるとは。

私は山田一郎、78歳。妻と二人暮らしをしている。若い頃は会社でバリバリ働いて、家族を養ってきた。定年後は趣味のゴルフを楽しんだり、近所の老人会に参加したり、充実した日々を送っていた。

しかし、ここ数年は体のあちこちにガタが来始めていた。腰痛や膝痛は当たり前、最近では夜中に何度もトイレに起きなければならない頻尿にも悩まされていた。

今日もいつものように、夜中にトイレに起きた。しかし、便意がなかなか来ない。じっと我慢していると、突然強烈な腹痛が襲ってきた。慌てて便器に座ったが、間に合わなかった。

温かい液体が太ももを伝い、床に広がっていく。恥ずかしさと悔しさで、涙が溢れてきた。

「どうしたの？」

妻の声が聞こえた。慌てて立ち上がり、ズボンを脱いで洗濯機に向かう。

「ちょっと…お腹が痛くて…」

私は妻に嘘をついた。まさか自分が便失禁をしたなんて、とても言えるはずがない。

妻は何も言わず、私の背中をさすってくれた。

「大丈夫よ。ゆっくり休みなさい。」

妻の優しい言葉に、心が少し救われた。

次の日、私は病院に行った。診察の結果、前立腺肥大症と診断された。前立腺肥大症は、男性の加齢によって起こる病気で、排尿障害や尿失禁を引き起こすことがある。

先生からは、薬を飲むことと、定期的に検査を受けるようにと言われた。

家に帰ってからも、あの日のことが頭から離れなかった。自分がこんな情けない姿になるとは、今でも信じられない。

しかし、落ち込んでいても仕方がない。前向きに病気と向き合っていくしかない。

私は、妻に自分の気持ちを正直に話した。妻は驚いたようだったが、すぐに受け入れてくれた。

「あなただけじゃないわよ。同じような悩みを抱えている人はたくさんいるのよ。」

妻の言葉に、少し心が軽くなった。

それからというもの、私は積極的に病気について学んだ。同じ悩みを抱えている人たちのブログを読んだり、オンラインコミュニティに参加したりした。

そうすることで、自分が一人ではないことを知った。そして、前向きに病気と向き合っていく勇気をもらった。

病気は決して楽なものではない。しかし、前向きに捉えれば、自分自身を見つめ直す良い機会にもなる。

私はこれからも、病気と付き合いながら、充実した人生を送っていきたい。