生きる

なぜ人は人を殺してはいけないのか

「なぜ人は人を殺してはいけないのか」という問いに対する回答は、道徳的、倫理的、法的な側面から考えることができます。以下にそれぞれの側面からの理由を挙げてみましょう。

道徳的な観点： 多くの宗教や哲学、道徳体系は、他人を傷つけたり殺したりすることは道徳的に誤っていると教えています。「他者への敬愛」や「他者への慈悲」が重要視され、他人を殺すことは悪徳と見なされることが一般的です。

倫理的な観点： 倫理的な立場からも、他者を殺すことは倫理的に問題があるとされます。倫理的な観点では、人間は平等であり、他者を尊重し、共感することが求められます。他者を殺すことは、これらの倫理的な原則に反すると考えられます。

法的な観点： 社会は法律で構築され、多くの国や地域では殺人は犯罪行為と見なされています。法的な制度は、他者を保護し、平和な社会を維持するために他人を殺すことを厳しく規制しています。殺人は罰せられる犯罪であり、法の下で処罰されます。

これらの観点から、他者を殺すことは道徳的、倫理的、法的に誤っているとされています。社会が安全で調和を保つためには、他者を尊重し、争いを回避するような価値観が大切です。

「どうして人は人を殺したらいけないんだよ」

と、吐き捨てるように言う息子にわたしは、

(何を言ってるんだろう。この子は)

(そんなこと言わなくてもわかるでしょう?)

(46にもなって、そんなこともわからないの?)

と、あまりにも突飛な質問にあっけにとられてしまった。

口喧嘩のようになり、このままいるとすぐに怒鳴ってしまうわたしはやかん人間のように沸騰するのがわかったので、物理的に距離を置くために散歩に出かけることにした。

「なぜ、人は人を殺したらいけないのか」

そんなことはとうの昔に教えてきたと思い込んできた。

でも、メレダイヤをちりばめたようなキラキラと輝くアスファルトを見ると、

(教えてこなかった)

無念である。

素直にそう思えた。

息子が子供の頃、蟻の穴に熱湯を注ぎこんだことがある。

「なんて残虐なことをするの」

理由も聞かず、怒り飛ばしてしまった。

その時に女性のリハビリ施設の施設長は、

「女の子に育てるつもりなのか?」

と、私を叱った。

男の子がよく、蛙のお尻に麦わらを差し込んで風船のように膨らませて殺していたのを思い出した。

男の子とは、小さい時から残虐なのだろうか?

「どうして人は人を殺したらいけないのか」

息子と一緒に考えていけたらと真剣に思った。

(大丈夫だよね?サイコパスじゃないよね)

わたしの反応に驚いた息子は、かかりつけの精神科の主治医である国立病院の院長に電話をして、報告、連絡、相談をしたという。

「前頭葉と側頭葉の発達が著しく悪い。アスペルガー、注意欠陥多動性障害、統合失調症も重なって、このような事態になっているのだろう」

との答えだったと聞いた。

来週の水曜日、そのことについて説明をしてくださるようだ。

彼を受け入れ、できる限り適切な対応ができますように。


心の中で不安が渦巻く中、水曜日が訪れました。国立病院の精神科での面談の日です。私は息子を連れて、医師の元へと向かいました。院長は優しく、丁寧に私たちの質問に答えながら、息子の状態について説明してくれた。

「息子さんの前頭葉と側頭葉の発達に問題があり、それが彼の行動に影響を与えています。これが、感情の制御や社会的な相互作用に難しさを抱える一因と考えられます。」

私は言葉に詰まりました。息子の行動や感情の乱れは、単なるわがままや反抗心だけではなく、脳の発達問題が影響していたのです。しかし、同時に、専門家のサポートを得ることで、改善の可能性もあることを知った。

「今後は、個別に合わせたサポートや療法が必要です。また、家庭でのサポートも重要です。ご家族で協力しながら、彼の健やかな成長を促していきましょう。」

帰りの道、私たちは沈黙の中を歩きながら、これからの道のりを考えました。医師の言葉は重かったけれど、同時に希望も感じられた。

そして、私は息子に向かって微笑んだ。これから一緒に歩んでいく中で、彼が成長していく姿を見守り、サポートしていくことが、私の課題であり、大切な旅路であることを心に刻んだ。