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罪の影

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「罪の影」

夜の静寂が町を包む頃、健二はフードを深く被り、闇に紛れながら歩いていた。道端の街灯がぽつぽつと点在し、その光の輪から逃れるように進む彼の心には、焦燥と恐怖が入り混じっていた。

健二はコンビニの明るい灯りが見えてくると、ポケットの中のナイフの冷たい感触を確かめた。指先に伝わるその冷たさが、彼の決意を揺るがし、同時に奮い立たせる。ドアを開けると、店内には数人の客と店員がいた。心臓が激しく打ち、手が震えた。

「ああ、神様、罪を犯させないでください」

彼は心の中で祈った。しかし、次の瞬間、店員に向かってナイフを突きつけた。

「金を出せ!」

店員は驚きの表情を浮かべ、一瞬動きを止めたが、すぐにレジを開ける。健二は焦りながらも、ポケットに詰め込む。その光景を見ていた他の客たちは、怯えたように後ずさりし、誰も抵抗しようとしなかった。

店を出ると、健二はそのまま全速力で走り出した。息を切らしながらも、心の中には後悔と罪悪感が渦巻いていた。

「わたしを清めてください」

その声が、彼の頭の中でこだまし続ける。次に彼が辿り着いたのは、薄暗い路地に面した一軒の家だった。窓ガラスを慎重に破り、静かに家の中に侵入する。足音を立てないように、注意深く進む彼の手には、まだナイフが握られていた。

「お金が欲しい」

家の中は静まり返っていた。棚や引き出しを漁り、金目の物を探す。しかし、ふとした瞬間、健二の耳に幼い子供の泣き声が届いた。部屋の隅で、眠りについていた赤ん坊が目を覚まし、彼の存在に気づいたのだ。

その光景に、健二の心は急に冷えた。自分が何をしているのか、何をしようとしているのかが、急激に現実感を持って彼を襲った。彼は赤ん坊の側に寄り、そっと抱き上げた。赤ん坊の温かさが彼の胸に伝わり、涙が頬を伝って流れた。

「たばこが欲しい」

赤ん坊を抱えたまま、健二はその家を出た。彼の中で、何かが変わった瞬間だった。家の外に出ると、警察のサイレンが近づいてくる音が聞こえた。健二は赤ん坊を安全な場所に置き、その場に膝をついた。

「ああ、神様、罪を犯させないでください」

警察が彼を取り囲む中、健二は両手を挙げた。彼の顔には、安堵と後悔の入り混じった表情が浮かんでいた。警察は彼を逮捕し、手錠をかける。健二は静かに警察車両に連行されていく中、心の中で再び祈った。

「わたしを清めてください」

その言葉が、彼の心に深く刻まれた。これから先、どんな罪を犯すことがあろうとも、彼はその祈りを忘れないだろう。彼の罪は消えない。しかし、彼の心に芽生えた一縷の希望が、彼を支え続けることを信じていた。

健二は警察車両の中で、ふとした安心感を覚えた。自分が捕まることで、もう罪を犯す必要がなくなるのだ。その考えが彼の心を少しだけ軽くした。そして、遠くに見える街の灯りが、彼にとっての新たな始まりを象徴しているかのように、淡い光を放っていた。

終わり


コンビニに強盗に入っても

どこかの家に空き巣に入っても

お金が欲しい

たばこが欲しい

「ああ、神様、罪を犯させないでください」

わたしを清めてください。
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