魅了 憑依 徹底的な魔法の数々 心置きなくざまぁさせていただきます

人生の意志

人生の意志

「人生はチャンスだ。結婚もチャンスだ。恋愛もチャンスだ――」

パーティーの打ち上げも終盤に差し掛かり、酒の勢いで熱く語り始めたのは、戦士のアラン・ヴァルドだった。頼りがいのある彼の言葉に、僧侶のエリス・ヴェルテは穏やかに微笑み、旅芸人のフィオナ・グラディスは興味深そうに耳を傾けている。

「だが私は、それを意志だと思う」とユリシア・シャーロットが静かに口を開いた。

場の空気が変わった。アランは眉をひそめながら問いかける。「意志、だと？」

「そう。太宰治の言葉を借りれば、『少くとも恋愛は、チャンスでないと思う』ってね。恋愛や結婚は、偶然の産物じゃない。選ぶこと、進むこと、そのすべてが自分の意志次第なのよ」

ユリシアの言葉に、孤児院から預かった少年フィリップが興味を示した。「でも、運命の出会いとかってあるんじゃないの？」

「運命の出会いも含めて、それをどうするかは自分の意志だと思うの」とユリシアはフィリップに微笑んだ。

盗賊のリア・ノアールが笑いながら言う。「なるほどね。でも、恋愛に意志って言うとなんか堅苦しくない？ロマンがない気がするわ」

「そうかもしれない」とユリシアは頷く。「けどね、恋愛は人を成長させるものでもあるのよ。誰かを好きになると、その人のために自分を変えたいと思ったり、もっと強くなりたいと思ったりする。だからこそ、意志が必要だと思うの」

リアは少し考え込むように黙った。その間に、魔法使いのオスカー・ヴァルドが杖を弄りながら呟いた。「ユリシアの言うこともわかる。意志がなければ、何も始まらないからな」

「じゃあ、意志があれば何でもできるってこと？」とルカ・ダンヴァールが茶々を入れる。「武闘家としては身体が資本だけど、恋愛も筋トレみたいに努力でどうにかなるのか？」

「努力でどうにかなる部分もあるけど、すべてが計算通りにはいかないわ」とユリシアはルカに向けて答える。「それでも、自分が進みたいと思った道を選び続ける。それが意志であり、恋愛における本質じゃないかしら」

「じゃあ、私たちの恋愛訓練も意志の賜物ってわけ？」とフィオナが軽い口調で問いかけた。

「もちろん」とユリシアは即答した。「みんなが努力して学んだこと、互いにぶつかり合いながら成長したこと、そのすべてがあなたたちの意志の表れよ」

その言葉にパーティー全員が一瞬黙り込み、それぞれに考え込む表情を見せた。

「意志ね……」アランが酒杯を掲げながら言った。「悪くない考え方だ。チャンスがどうこう言うより、確かに納得がいく」

「じゃあ、ユリシア」とフィリップが再び口を開く。「ユリシアにとって恋愛ってどんな意志が必要なの？」

その問いにユリシアは一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに微笑んだ。「覚悟が必要だと思う。相手を受け入れる覚悟、そして自分自身も変わる覚悟。それが、恋愛における最も重要な意志だと私は思う」

打ち上げの席は静かになり、やがて誰かが軽く笑い声を漏らした。その笑い声を皮切りに、場が再び明るい雰囲気に包まれた。

ユリシアは酒杯を持ち上げて言った。「人生も恋愛も、最後は自分の意志で決まる。乾杯しましょう、私たちの意志に！」

全員が声を合わせて「乾杯！」と叫び、夜は更けていった。