エデンの園を作ろう

春秋花壇

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優しさが織りなす日常:訪問介護

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優しさが織りなす日常:訪問介護

緑あふれる街、陽だまりが差し込む一軒家。玄関のチャイムが鳴り、訪問介護士の佐藤美咲が笑顔で訪れる。出迎えてくれたのは、80代の山田春江さん。優しく穏やかな笑顔で美咲を招き入れる。

春江さんは一人暮らし。娘夫婦は遠方に住んでおり、定期的に訪問してくれる美咲は、かけがえのない存在だ。

「今日は体調はどうですか?」

美咲は優しい声で尋ね、春江さんの血圧を測り、体調を確認する。

「元気よ。美咲さんが来てくれると、安心するんです。」

春江さんの言葉に、美咲は頬を緩める。

「今日はお掃除しましょうか。」

美咲は、春江さんと一緒にリビングの掃除を始める。雑巾がけをしながら、二人は世間話を楽しむ。

「最近、孫が生まれたんですよ。」

春江さんの自慢げな顔に、美咲も笑顔で相槌を打つ。

「それはおめでとうございます!ぜひ写真を見せてくださいね。」

掃除が終わると、美咲は昼食の準備に取り掛かる。春江さんの好きな野菜を使った煮物や、卵焼きなど、栄養バランスに配慮した献立だ。

「いただきます。」

二人で食卓を囲み、温かい食事を味わう。食事中に美咲は、春江さんの好きな演歌を流す。

「懐かしいわね。」

春江さんは目を閉じて、心地良さそうに歌声に耳を傾ける。

食事の後、美咲は春江さんと一緒に散歩に出かける。公園のベンチに座り、春江さんは昔話を語り始める。

「若い頃は、よく旅行に行ったのよ。」

春江さんの生き生きとした話に、美咲は聞き入る。

日が傾き始めると、二人は家路につく。

「今日はありがとうね。」

春江さんは美咲に感謝の言葉を述べる。

「こちらこそ、楽しい時間を過ごせました。」

美咲は笑顔で答え、玄関先で春江を見送る。

夕暮れが迫る中、美咲は次の利用者へ向かう。一人一人の生活に寄り添い、心と体の支えとなる。訪問介護士の仕事は、決して楽ではない。しかし、利用者との温かい交流は、何物にも代え難い喜びを与えてくれる。

美咲は、今日も明日も、優しさを織りなす訪問介護の道を歩んでいく。
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